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サービス化時代の潮流、ビジネスモデルを探る。週末はクワッチ三昧!

サービス化の進展 ~製造業とサービス業の進化~

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 このブログを書き始めてお陰様で半年が過ぎました。不定期の掲載ではありましたが、沢山のいいね!に加えて個別にご意見も頂き、ありがとうございました。改めて感謝いたします。

さて、テーマである「モノづくり」と「コトづくり」については、現在進行形で議論が続いていますが、このブログではサービス化の進展の歴史を「製造業のサービス化」と「サービス業の進化」を辿ることで考察してきました。

「モノづくり」と「コトづくり」の関係の考察を進める上で改めてサービス化進展のポイントについて振り返って見たいと思います。

  • 製造業のサービス化

 まず、製造業のサービス化の進展を大きく捉えると、基本的には、バンドリングからアンバンバトリングへの流れであることをお話しました。この流れは、付帯サービス(プロダクト・リレーテッド・サービス)の考え方が基本になり、付帯サービスをアンバンドリングすることによって、サービス化が進展してきたと考えています。

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 サービスによるプロダクトの価値向上では、プロダクトと付帯サービスの関係は密接な関係にあり、一方向ではないことを指摘しました。製造業のサービス化の進化過程は、付帯サービスのビジネス化ということになりますが、付帯サービスが独立してサービスビジネスになると、製品と付帯サービスの関係が双方向のコラボレーションに進化します。そしてモノづくりとしての「プロダクトビジネス」と「サービスビジネス」の新たな関係がこれからの「コトづくり」のベースとなっていくと考えています。

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 サービスプラットフォームを軸としたビジネス拡大では、ビジネスを拡大し、利益を生み出すには、ハードウエアを核として「プラットフォーム‐場」を如何に広げるかが重要であることをお話しました。ICT業界で言えば、このように”場”を拡げることで、サービスの成長を遂げてきており、これは、ある意味お客様への問題解決(ソリューション)であると考えています。
 そして、「プラットフォーム‐場」を如何に広げるか?という考え方を突き詰めていくことでビジネスを拡大していくことができると感じています。

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 人とプロセスとICTの継続的改善では、サービスプラットフォームを軸にさらに一歩進めたお客様の現場に密接に関わる新たな取り組みについてご紹介しました。フィールドイノベーター(FIer)は、お客様の業務運用の現場課題を改善することで人とプロセスとICTの継続的改善を目指す新しい試みです。

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  • サービス業の進化

 GDPの7割を占めるというサービス業においてもサービス化の進展が進んでいます。

 引越業に見るサービス化では、単なる運送業からサービスの見える化を進めて引越サービス業に進化して来た歴史を紹介しました。今や引越というEventをキッカケにそれにまつわる様々な生活者の困ったに応えるサービス業に進化しています。引越サービス業のサービスは、確立された感が強いですが、まだまだ新規参入も多くどのようなサービス業に進化していくか注目していきたいと思います。

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 タクシー業におけるサービスの見える化では、妊婦や子供の送迎など、タクシーの利用目的に応じたサービスの見える化をICTを活用しながら取組む日本交通の事例について紹介しました。従来の電話による受付に加え、スマートフォンの配車アプリによるスマートな配車も実現しています。

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 ヘアカット専門店に見るサービスの細分化では、忙しいビジネスマンやOLの為に本当に必要なサービスに細分化することでそのニーズに応えているQBハウスの事例を紹介しました。このようなサービスの利用者は、男性が中心と考えがちですが、女性にもニーズがあることもわかり、他の企業の参入も加速するかもしれません。

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 クリーニング店からシティークローゼットへ進化した喜久屋の事例では、衣類に関して街のクローゼットをコンセプトに喜久屋で良かったと言われるサービスを提供している事例について紹介しました。自分たちの提供するサービスを押し付けるのではなく、地域住民のみなさまに感謝されるサービスは何かを常に自問し、サービスを創造する姿勢は、他の企業も学ぶべき経営スタイルです。

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 女性を家事から解放では、創設者自らの体験から家事代行サービスの見える化を進めているベアーズの事例を紹介しました。主婦の目線から次々と提供されるサービスは、時代のニーズにも合致してビジネスを拡大。贈り物としての家事代行チケットやオフィスでの活用など新たな市場も開拓しています。

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 生花販売ビジネスの困ったに応えるでは、生花業界のステークホルダーの悩みを解決することで急成長を続けるアートグリーンについて紹介しました。生花の生産者は苗から開花まで一貫して育てるという既存の常識を打ち破るビジネスモデルで最終受益者だけでなく、さまざまなステークホルダーの悩みに応える関係づくりでビジネスを拡大しています。

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  • サービス化の進展の弊害

 サービスの見える化が進み、サービスが細分化することでサービスを購入する生活者や企業は、自分たちのニーズで好きな時に好きなサービスを購入できるようになります。
 しかし、この細分化や見える化(見せる化とも言える)は、一見利用者のニーズに応えているようですが、余りに細分化し過ぎると全体が見えなくなるという欠点もあることを指摘しておきたいと思います。モノやサービスを売る機能的価値の追求だけではなく、体験や経験を売る意味的価値を追求する視点が重要だと考えています。

 そこで留意したい考え方が「コトづくり」なのです。

  • サービスプラットフォームとコトづくり

 サービスを提供するプラットフォームには、システムだけでなく建物や地域、人など様々なモノがあることを紹介しました(様々なサービスプラットフォームー場)

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 いずれも単なるモノの提供ではなく、コトづくりの基盤として機能していることを紹介しました。つまり、プラットフォームの上でサービスを考えることで分断されがちなサービスをコトづくりの観点で捉え直すことができると考えています。

  • モノづくりをコトづくりから考える

 そもそも日本の製造業によくある「ウチは、技術はあるのだけど...」という発想は、モノづくりに偏った考え方が根底にあるからかも知れません。これからは、お客様にとって価値のある「コト」を考えることがまず第一優先であり、「コト」の中に技術やモノを埋め込む事が重要な時代になると考えています。「モノ」から「コト」へではなく、これからは「コト」から「モノ」の時代です。そして、ユニークな「コト」を提供するには「モノ」と「サービス」の融合も欠かせません。

 「コト」は、生活者のストーリーやライフサイクルで考える必要があり、状況変化を捉えて、出来事を文脈の中で結びつけることが重要です。そして、お客様が感じるのは「コト」づくりで実現する総合的な価値であることを忘れないことが大切だと考えています。

そして「コト」を提供するには、相互関係性を読み取るプロデューサ的人材の存在が重要になると考えています。

(つづく)

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