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オオクワガタとサービスサイエンス ー巣ごもり需要の到来

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 様々なコトづくりに関して連載しているこのコーナーで久しぶりに"オオクワガタとサービスサイエンス"に関する連載をスタートしました。

 過去に数回、ITmedia エグゼクティブ勉強会にて「オオクワガタとサービスサイエンス」をテーマに勉強会を開いたことがあります。好評につき本年7月にも夏休み前の緊急企画としてセミナーを開催予定でしたが、新型コロナウィルスの影響を考慮して泣く泣く延期となりました。

本連載では、最近のセミナーの内容に最新のサービスサイエンスの研究内容も含めて連載したいと思います。

◼️新型コロナ感染防止の外出自粛による影響

 感染拡大防止の為、ステイホームを余儀なくされた結果、例年にはない消費者ニーズの変化があるようです。広告代理店のエヌケービーは4月23日、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため外出自粛する人が急増していることを背景に、「自宅での消費活動や過ごし方」についてアンケート調査した結果を発表しました。

 この調査では、生活者のニーズ・意識について、自宅での時間を充実したり、エクササイズでのストレス発散、趣味への没頭、自己研鑽に励む、癒し・リラックスを求めるなど7つタイプの傾向に分けることができたという。また、生活者は1つだけにタイプを決められるのではなく、さまざまなタイプを組み合わせた形で「巣ごもり消費」を実践していると分析しています。

「巣ごもり消費」意識調査(2020年4月).png

<調査概要>
「自宅での消費活動や過ごし方」に関するアンケート調査
調査方法     :インターネット調査
調査日      :2020年4月2日(木)
調査対象     :ミルトーク登録者20代~70代・全国
サンプル数    :101名(男性38名、女性63名)
調査方法     :2つの質問に対し、フリーアンサーで回答
取材協力     :ミルトーク *ミルトーク・・・株式会社マクロミルが運営するオンライン掲示板

この中で注目したいのは、①③に加えて⑦癒し・リラックス型の消費です。今夏のオオクワガタブリードサービスで起きた状況を予測するような調査内容でした。

 社会が不安な空気に包まれる中、癒しやリラックスを求める意識が高まっています。ペットを飼い始める、家庭菜園を始めるなど新しく生活に癒しを取り入れている様子です。そのほかにもアロマテラピーやハーブティーなど癒し・リラックス効果を見込める商品の消費が増加しています。新型コロナウイルスによる外出自粛や社会情勢への不安が長期化するにつれ、需要が今後さらに増加すると予想されます。
○関連キーワード:ペット・癒し・リラックス
○需要のある品目例:ペット関連用品・癒し系グッズ・アロマテラピー・マッサージ機器

回答者のコメントが巣ごもり消費の実態を明らかにします。

<回答の一例>
・外出自粛だからというわけではありませんが、ペットを飼い始めました。(40代/男性)
買ってよかったものはハーブティーです。家でゆっくりリラックスできるのでいいです。(40代/女性)
・在宅になったので、ベランダで家庭菜園を始めました。今まで何も育てたことがないので、いちからネットを見ながら勉強しています。楽しいです。(70代/女性)
・癒し系ペットのブログを毎日読むようになりました。(40代/女性)

◼️オオクワガタブリードサービスとは

 改めてオオクワガタブリードサービスについて簡単に説明しておこうと思います。オオクワガタの個体(モノ)の提供だけではなく、クワガタに関する様々な情報(血統や産地)や日々のクワガタに関する取り組み(飼育や採集)をホームページやブログ、各種ソーシャルメディアで提供しています。サービスの提供にあたり、どのようなお客様がこのサービスを利用しているのか?簡単なペルソナを設定してサービスを提供するようにしました(下図)。

 やがて、お客様のこのサービスに対する事前期待でセグメンテーションしてお客様を様々なタイプに分けて対応することになりますが、詳細については後ほど紹介したいと思います。

オオクワガタブリードサービスの全貌.png

Dorcus NAVIホームページ(http://www.dorcusnavi.com

 いわゆるコンテンツを集積したWebサイトになります。「飼育・繁殖」「クワガタを知る(産地・クワガタの種類)」「ライブラリー(クワガタ飼育の入門書から専門書)」「ストーリー(クワガタをテーマにしたショートストーリやフォトエッセイ)」「ギャラリー(個体の写真や産地の風景)」など、これまでの飼育や採集活動で得た知見や初心者にもわかりやすいように豊富な写真で紹介しています。

Dorcus NAVIショップ(https://dorcusnavi.thebase.in

 BASEは、香取慎吾くんのTVコマーシャルで注目を集めたネットショップのプラットフォームです。3年連続開設No. 1120万ショップが運営されています。以前は、DeNAが運営していたビッダースのオークションも活用していましたが現在は利用していません(Yahoo!オークションも活用していません)。

Dorcus NAVI BLOGhttp://dorcusnavi.blog103.fc2.com

 日々の活動を記録するブログです。ホームページは蓄積型メディアだとするとブログは日々の活動を記録し、ファンと交流するメディア。開設年度は忘れましたがすでに16万を超えるアクセスを獲得しています。特に今年の5月以降は毎日更新(結構大変。。。笑)しているお陰かFCブログの昆虫サイトでほぼ毎日1〜3位のアクセスです。

④ソーシャルメディア(TwitterFacebookグループInstagram

 著書勝負は、お客様が買う前に決める!」でソーシャルメディアと事前期待の関係を書いてから早くも8年が過ぎようとしていますが、日々のブログの更新やショップへの出品、とっておきの動画など目的に応じてソーシャルメディアを使い分けています。今後は、動画の投稿を強化して行きたいと思います。

◼️オオクワガタブリードサービスでの変化

 まず結論から言うと新型コロナは、オオクワガタの世界にも多大な影響を及ぼしたと言うことです。

 オオクワガタに限らず、クワガタを趣味とする世界には大きく分けて3つのカテゴリーが存在します。1つは、採集を趣味とする人で幻のクワガタであるオオクワガタは最も難易度の高いターゲットです。2つ目は、飼育(ブリード)を趣味とする人でこの分野でもオオクワガタのブリードはレベルの高い争いをしています。最後は、これら二つを趣味とする人で普通の人間ではこのカテゴリーはなかなか勤まりません(笑)

 新型コロナの影響は、採集とブリード(飼育)で二分します。クワ友の採集家の話によると県外への遠征が緊急事態宣言やその後の政府や各自治体の施策により、ままならなかったということです。例年、真夏は樹液採集や灯火採集(ハロゲンライトを山に向けてあてて飛来する虫を採集する)が佳境を迎えるのですが今年は同一県内の活動に制限されてしまったようです。

 一方でブリードの世界では、日頃からお世話になっている昆虫ショップの経営者の方々が皆さん口を揃えて、"今夏は需要に供給が追いつかなかった"と仰ってました。例年にも増してオオクワガタを飼育する方が増えて飼育用品や個体の流通量も増えたようです。

 しかし、シーズンのはじめは、営業活動を自粛せざるを得ない店舗も多数見受けられました。

 老舗のむし社(東京・中野)では、新型コロナウィルスの感染リスクを避けて緊急事態宣言発令に伴い店舗を4月11日から5月31日まで臨時休業されていました。

 下記の写真は、6月1日営業再開初日のむし社の様子。この頃は、まだ閑散としていましたが...

6月1日むし社.jpg

 そんな状況にありながらも初夏から晩夏に向けてステイホームで家庭菜園を楽しむ人が劇的に増えたように一気に昆虫業界にも特需がやって来たのです。オオクワガタ飼育の必需品である菌糸瓶(クヌギやコナラ、ブナなどの広葉樹のチップにオオヒラタケなどの菌を植菌したボトル)も長い間欠品状態が続きました。

 では、オオクワガタブリードサービスではどうだったのか少しお話をしたいと思います。

連休明けごろからお問い合わせが増え始め、

"10年ほど前に個体をお譲りいただいた者ですが、また飼育を再開しようと思いまして..."

というように過去にブリード経験ありながら、なんらかの理由で飼育を中断していた方が新型コロナウィルスの影響からステイホームを余儀無くされ、再びブリードに帰って来たと言う方が急増しました。

その一方で、

"小学生の息子と一緒に初めてオオクワガタの飼育をしてみようと思いまして..."

という、いわゆるビギナーの方からも問い合わせも増えました。

 Dorcus NAVI BLOGでは、例年にない"特需"を予測し、5月の中旬から毎日コンテンツを更新するように心がけました。その結果、最盛期には常に昆虫カテゴリーでアクセスランキングで1位を獲得するまでになりました(現在も1位もしくは3位以内をキープ)。

 もっとも劇的な変化があったのは、血統個体をやりとりをするDorcus NAVIショップでなんと今年は、残り3ヶ月を残して既に前年比400%の伸びを記録しています。個体在庫が激減し、例年なら秋以降に出品する新成虫(その年に羽化した成虫)を前倒しして"特需"に対応しました。

DorcusNAVI SHOP.jpg

 秋以降、この"特需"が収まるのか継続するのかはまだ分かりませんが、初めて関係を持ったお客様、過去にお付き合いのあったお客様、いずれのお客様にもそれぞれの事前期待(サービスサイエンスにおける1つの考え方、詳しくは次回以降解説していきます)に沿った対応を取っていきたいと考えています。

(つづく)

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