オオクワガタとサービスサイエンス ー「オオクワガタブリードサービス」の誕生
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様々なコトづくりに関して連載しているこのコーナーで久しぶりに"オオクワガタとサービスサイエンス"に関する連載をスタートしたいと思います。
筆者は、ITベンダーに席を置きながらダイヤモンド社からサービスサイエンスに関連したビジネス書(「勝負は、お客様が買う前に決める!」)を出版したり、サービス学会の発起人も努めさせてさせていただきました。そのキッカケとなる活動が実はオオクワガタのブリーダー"パパクワッチ"という私のもう一つの顔に由来します。
過去に数回、ITmedia エグゼクティブ勉強会にて「オオクワガタとサービスサイエンス」をテーマに勉強会を開いたことがあります。大人向けの勉強会で話は極めてマジメでした。特典として私のブリードした血統書付きのオオクワガタペアをお配りしました。
好評につき本年7月にも夏休み前の緊急企画としてセミナーを開催予定でしたが、新型コロナウィルスの影響を考慮して泣く泣く延期となりましたが、本連載では、最近のセミナーの内容に最新のサービスサイエンスの研究内容も含めて連載したいと思います。
◼️オオクワガタとはどんな昆虫?
幻のクワガタ、黒いダイヤモンドなどと呼ばれるオオクワガタは野生個体では山梨県で捕獲された76ミリが最大であり、繁殖個体では90ミリが記録されています。
私が子供の頃には、学研の図鑑でも挿絵でしか見たことがありませんでした。
以前は80ミリを超えると高級外車が買えるほどの値段がついたことあります。その後、先人ブリーダー達の創意工夫により温度管理やエサなどの工夫により飼育革命を起こし、80ミリ前後の個体が初心者でも飼育できる時代になりました。
- ♂の成虫はWild(野生)では最大76.6mm、繁殖下では、90mm迫る個体が記録されています。全長では、対馬ヒラタに譲るものの横幅のある体躯はまさにクワガタの王様に相応しい種だと思います。50mmクラスの♀は、まさに巨大の一言に尽きます。光沢のある縦筋の入った上翔は漆細工のうようで素晴らしい工芸品のようです。
- ♀は、クヌギやコナラの立ち枯れに穿孔し自然界では1年以上幼虫をやっているらしい。東北以北などでは、ブナやミズナラの木で繁殖しているという。
- 成虫は、繁殖したものでも1~3年は生きる。Wildのものでは5年も生きたものもあるらしい。
- 潜洞性が強く、山梨県韮崎市や大阪府能勢町などのいわゆる"台場クヌギ"の大きな洞で過ごしているケースが多い。逆に、有名産地である佐賀などでは台場クヌギがないことからその生息環境は異なる。さらに東北各地ではブナの原生林で生息していると思われ、関東や関西とは更に生息環境が異なると思われる。
- 性格は温厚で人懐っこいが、はさむ力はかなり強い。大人でも指に穴が開くほどの力であり、注意が必要。
◼️オオクワガタは男のロマン
子供の頃の夢は、オオクワガタではなく実は大型のヒラタクワガタを採集することでした。そう、オオクワガタは、夢のまた夢の存在でちょっと大げさですが実物を見ることが"男の(子の)ロマン"と言っても過言ではありませんでした。
オオクワガタは、今でこそ飼育下においての繁殖法が確立されているものの、乱獲(特に材割り採集や生息木の洞の破壊)により多大な被害を受けており、その希少性から絶滅危惧種に指定され、野生個体の採集は非常に難しくなっています。
絶滅危惧種(Threatened Species、Endangered Species)とは、絶滅の危機にある生物種のことを指し、「絶滅のおそれのある種」と呼ばれ、レッドリストで「絶滅危惧I類」「絶滅危惧IA類」「絶滅危惧IB類」「絶滅危惧Ⅱ類」カテゴリーのいずれかに分類された生物種のことを指します。よく知られた生き物では、イリオモテヤマネコやヤンバルクイナ、イヌワシ、コウノトリなどは聞いたことがあると思います。
そのオオクワガタに初めて出会ったのは、成人して子供が小学生になってから。確か息子が小学校4年の時でした。ご多分に漏れず都会っ子でしたのでカブトムシやコクワガタぐらい一緒に飼育してみようということで那須高原で採集した個体を飼育し始めた頃にインターネットで初めて実際のオオクワガタの写真を目にしたのでした。
そして、初めて我が家に来たオオクワガタの幼虫が羽化した時の写真が下記になります。自慢げに持つ息子ですが、現在では全く興味がありません(笑)
このように元は、子供の情操教育の一環で始めたカブトムシやクワガタの飼育が幻のオオクワガタとの出会いでその後20年近くに及ぶ趣味に一変してしまいました。
◼️クワ馬鹿の道、まっしぐら
残念ながら息子はひと夏の飼育で興味が失せてしまいましたが、パパクワッチことお父さんは、専用のブリード室で24時間365日の温度管理を行いながら深くこの世界にハマって行きました。
ゲームで有名なムシキングを監修したむし社が主催するコンテストにも度々参加するようになりました。
オオクワガタの飼育では、大量の菌糸瓶を使用します。菌糸とは、クヌギやコナラ、ブナなどの広葉樹にオオヒラタケなどのキノコの菌を植菌して擬似的な朽木を人為的に作ったものです。この菌糸は、そのまま燃えるゴミとして廃棄をしてしまうところなのですが、エコシステムの発想で庭土に返すために食べ残しをカブトムシに食べさせるようになりました。
大変栄養価の高い餌を食べたカブトムシが未だに自宅の庭から毎年数百匹羽化して来るのですが、ある時とてつもなく大きな個体が羽化してきました。それが、カブトギネスをとった通称"鎧の騎士"です。
カブトギネスは、やがて皆さんよくご存知の哀川翔さんが記録を塗り替えます(哀川翔のカブトムシ世界最大88ミリ ギネス申請へ)。それまで数年間日本一のホルダーだったことはちょっとした自慢となりました。
◼️「オオクワガタブリードサービス」の誕生
やがてこれらのオオクワガタの血統を譲って欲しい、飼育について教えて欲しいという全国のブリーダーの方々のリクエストに応えるために、いつしかWebサイトやソーシャルメディアを活用して交流するようになりました。
ITの世界で言えば、ちょっとしたマルチチャネルのコンタクトセンター。今風にいうとオムニチャネル?か(笑)当時、CRMのコンサルをしていた関係で通販ビジネスの世界を縮小したようなこの仕組みを検証してみたくなりました。
◼️そしてサービスサイエンスとの出会い
当時のCRMの世界、特にフィールドサポートの分野ではオムロンフィールドエンジニアリングの取り組みが脚光を浴びていました。自社のサポートだけでなく某外資系PCのサポートを一手に引き受け顧客満足度をナンバーワンを長年獲得していました。その仕組みを立ち上げたオムロンフィールドエンジニアリングの諏訪さんにアポなしで突撃し、弟子入りしたのがサービスサイエンスとの出会いとなりました。
諏訪さんの提唱するサービスサイエンスは、欧米の概念の受け売りではありません。独自性があり、何よりもビジネスの実務から得た経験や洞察が魅力的でした。そこで私は、自ら運営する"オオクワガタブリードサービス"で諏訪式サービスサイエンスの検証を開始したのでした。
やがて師匠である諏訪さんからこんなオファーをいただきました。
"柴崎君、面白いから情報処理学会の論文に書いてみたら?"
恐らく情報処理学会の論文集でクワガタについて書いたのは後にも先にも私だけだと思います(笑)
これから数回にわたり、オオクワガタブリードサービスを題材にサービスサイエンスをわかりやすく解説して行きたいと思います。
(つづく)
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