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新型コロナウイルス感染症によるデジタル化への影響

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総務省は2021年6月4日、「AIネットワーク社会推進会議 AI経済検討会(第14回)データ専門分科会(第12回)合同会議」を開催しました。

この中から、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による社会・経済の変化とデジタル化への影響について、とりあげたいと思います。

新型コロナウイルス感染症(以下「新型コロナ」)の感染拡大による変化について、大きく「密度」、「移動」、「持続性」の3つの観点で整理しており、それぞれの変化に対応する形でデジタル化が進展したと考えられるとしています。

特に、注目しているのが、持続性です。新型コロナのようなパンデミックに直面しても経営資源が損なわれないように持続性への意識が高まっています。たとえばmSDGs、BCP対策の推進、バリューチェーンの見直し、事業の多角化等をあげています。

対応方法としては、BCP、災害対策、防犯、サイバーセキュリティ対策のソリューション等が拡大し、各サービスにおいてクラウド利用が拡大しています。

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出典:総務省 AIネットワーク社会推進会議 AI経済検討会(第14回)データ専門分科会(第12回)合同会議 2021.6

世界全体のAIへの投資では、2020年では2019年と比較して約40%増加し、679億米ドルとなっています。特にM&Aが拡大しており、2020年は新型コロナの影響によって業界統合、M&A活動が増えたことが背景にあるとしています。

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出典:総務省 AIネットワーク社会推進会議 AI経済検討会(第14回)データ専門分科会(第12回)合同会議 2021.6

世界全体のAIへの民間投資を領域別で比較すると、「医療、製薬」が大きく増加し、「教育、英語」や「ゲーム、スポーツ」も増加しています。

一方、「コンピューティング技術」や「半導体、データセンター」などの情報通信に関連する領域では減少となっています。

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出典:総務省 AIネットワーク社会推進会議 AI経済検討会(第14回)データ専門分科会(第12回)合同会議 2021.6

新型コロナ禍におけるデータ活用もみてみましょう。新型コロナ禍において、国内企業が業務プロセス維持のために活用したデータについては、「社内システムログ」が最も多くなっています。一方で「データを活用していない」という企業も3割を超えています。

データ活用の効果については、「期待した効果が得られたデータがない」という企業が5割近くになっており、急なデータ活用により直ちに効果を得るのは難しいことがうかがえる。

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出典:総務省 AIネットワーク社会推進会議 AI経済検討会(第14回)データ専門分科会(第12回)合同会議 2021.6

新型コロナの感染拡大前後における重視するIT部門の機能・能力も変化しています。

重視するIT部門の機能・能力を「新型コロナの感染拡大前」と「今後」で比較すると、「ITを用いたビジネスモデルの企画・推進」や「IT人材の採用・育成」が大きく増加しています。

「データマネジメント」もほぼ2倍になっており、今後IT組織に求められる機能・能力が変化しています。

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出典:総務省 AIネットワーク社会推進会議 AI経済検討会(第14回)データ専門分科会(第12回)合同会議 2021.6

新型コロナウイルス感染症の感染拡大によるデジタル化への影響を以下のようにまとめています。

• 新型コロナの影響により、ヒトの密度や移動の減少、情報流通量の増加、クラウド利用等の持続性向上に向けた取組が増加。全世界的にIT投資・AI投資が増加し、特に「医療・製薬」「教育・英語」「ゲーム・スポーツ」「自動車・組立」といった領域での増加が目立っている。

• 国内においても、通信トラヒックが大きく増加しており、また、企業の多くは業務プロセス維持のためのデータ活用を行っている。ただし、データ活用の十分な効果を得られていない企業が一定割合存在。このような状況において、今後IT人材については、「IT戦略担当」「データマネジメント担当」「データ分析担当」が求められており、データに基づく業務運営をより重視する傾向がみられる。

• 新型コロナの影響で約7割の企業が「売上」を減少させているが、IT投資については、ハード・ソフト・クラウド・データ活用関連いずれの項目についても増加した企業が減少した企業を上回っている。特に、「クラウドサービス支出」は支出を増加した企業が減少させた企業を大きく上回り、クラウド化を中心に国内企業のデジタル化が進んでいることが読み取れる。また、6~7割の企業はIT投資額に変更がなく、「売上」減少の影響を受けることなくデジタル化を進めていると見られる。

• ただし、デジタルリーダー的組織とそれ以外の組織では新興技術や新型コロナ対応におけるIT投資の投入量に大幅な開きがあるとともに、データ活用の効果(実感)にも明確な差があるなど、新型コロナ対応を契機に一層デジタル技術の活用における格差が拡大することが懸念される。

⇒ 今回の新型コロナの感染拡大は、多くの企業にとってはデジタル化を促進する契機になったと考えられる一方、デジタル技術の活用における格差の拡大を招く要因にもなり得る。ただし、ポストコロナ時代において中長期的にどのような影響・変化があるかについては、引き続き、注視が必要である。

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