「デジタル連結世界」の実現に向けた基本理念や行動指針とAIの開発原則
平成28年4月29日及び30日の2日間、「G7香川・高松情報通信大臣会合」が開催されました。
本会合では、IoTやAIなどの新たなICTの普及する社会における経済成長の推進やセキュリティの確保等について活発な議論が行われました。
その成果として、あらゆる人やモノがグローバルにつながる「デジタル連結世界」の実現に向けた基本理念や行動指針をとりまとめた「憲章」、「共同宣言」および「協調行動集」(共同宣言の附属書)という3つの成果文書を採択し、自由や民主主義等の基本的価値を共有するG7として、世界に対する統一のメッセージを発出しています。
本会合においては、(1)「新たなICTがもたらすイノベーションや経済成長」、(2)「情報の自由な流通とサイバーセキュリティ」、(3)「ICTによる地球規模課題の解決」、(4)「国際連携と国際協力」の4つのセッションで議論を実施し、各セッションのポイントは以下のとおりとなっています。
(1) 新たなICTがもたらすイノベーションや経済成長
- IoTなどの新たなICTを通じたイノベーションを創出するため、IoT推進の官民イニシアティブの国際連携を推進することで一致。
- 我が国より、AIネットワーク化が社会経済に与える影響の分析を国際機関も含めた連携を通じて実施し、AIの開発原則の議論へとつなげていくことを提案。
(2) 情報の自由な流通とサイバーセキュリティ
- 正当な公共政策目的がある場合を除き、情報の自由な流通を阻害するようなデータローカライゼーション(ICTサービスの提供に用いられるサーバー設備等の国内設置)の要求への反対につき一致。
- ICTのテロや犯罪への悪用に対し、G7として強く反対することにつき一致。
- 安全・安心なサイバー空間の確保のため、サイバー攻撃傾向の分析技術に関する研究や、サイバーリスクを客観的に把握するための指標の活用などの取組を推進していくことにつき一致。
(3) ICTによる地球規模課題の解決
- マルチステークホルダーによる取組を通じ、2020年までに世界中で新たに15億人をインターネットに接続可能とすることを目指すことで一致。
- 我が国より、「質の高いインフラパートナーシップ」も踏まえ、質の高いICTインフラの構築を推進することにつき、G7における連携の可能性を提案。
- 高齢化社会や防災など、G7が先進的な知見を有する分野におけるICTの活用を推進し、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の実現への寄与を確認。
(4) 国際連携と国際協力
特に、
AIネットワーク化が社会経済に与える影響の分析を国際機関も含めた連携を通じて実施し、AIの開発原則の議論へとつなげていくことを提案。
の部分は、AIネットワーク化検討会議について報告された「中間報告書「AIネットワーク化が拓く智連社会(WINS)ー第四次産業革命を超えた社会に向け」がベースになっていると考えられ、「G7香川・高松情報通信大臣会合」高市大臣記者会見の概要」においては
AIについては、私から、人間がAIを安心して安全に使いこなすことができるよう、AIの開発に当たり留意すべき事項をまとめた「AI開発原則」の考え方を示し、国際的議論を加速すべき事を提唱しました。幾つかの国から、日本の提案を歓迎するとともに、検討したいというコメントがございました。
と書かれています。
検討会議の中間報告書では、研究開発の原則策定では、以下の内容を盛り込むべきとしています。
① 透明性の原則 AIネットワークシステムの動作の説明可能性及び検証可能性を確保
② 利用者支援の原則 AIネットワークシステムが利用者を支援、利用者に選択の機会を適切に提供するよう配慮
③ 制御可能性の原則 人間によるAIネットワークシステムの制御可能性を確保
④ セキュリティ確保の原則 AIネットワークシステムの頑健性及び信頼性を確保
⑤ 安全保護の原則 AIネットワークシステムが利用者及び第三者の生命・身体の安全に危害を及ぼさないよう配慮
⑥ プライバシー保護の原則 AIネットワークシステムが利用者・第三者のプライバシーを侵害しないよう配慮
⑦ 倫理の原則 AIネットワークシステムの研究開発において、人間の尊厳と個人の自律を尊重
⑧ アカウンタビリティの原則 AIネットワークシステムの研究開発者が利用者に対するアカウ ンタビリ ティを遂行
出所:総務省 中間報告書「AIネットワーク化が拓く智連社会(WINS)ー第四次産業革命を超えた社会に向けてー」2016.4.26