クラウド時代の人材像(3)ユーザ企業とIT企業のギャップ
クラウドの普及に伴い、ユーザ企業はクラウドなどのサービス化へのシフトの関心が高まっています。一方、IT企業の主要事業は受託開発が多くを占めており、このギャップを埋めるための事業転換とクラウド時代の人材育成が求められています。
情報処理推進機構(IPA)が2012年5月24日に公表したIT人材に関する調査報告書「IT人材白書2012~行動こそが未来を拓く 進むクラウド、動かぬ人材~」によると、ユーザ企業のニーズとIT企業の主要事業とのギャップが顕在化しています。
「ユーザー企業が利用の拡大を考えているITサービス」は、約4割のユーザー企業が「IDCサービス(ハウジング、ホスティング、HaaS・IaaS等を含む)」、「ASPサービス(SaaS・PaaS等を含む)」の利用拡大を目指すなどサービス化へのシフトが進む一方で、システム開発受託においては3割前後にとどまっています。
出所:「IT人材白書2012」2012.5
ユーザー企業が利用の拡大を考えているITサービス
「IT企業の現在の主要事業」は、受託開発が64.8%となっており、「IDCサービス(ハウジング、ホスティング、HaaS・IaaS等を含む)」、「ASPサービス(SaaS・PaaS等を含む)」は2割前後にとどまっています。
出所:「IT人材白書2012」2012.5
IT企業の現在の主要事業
つまり、これらのギャップが、「クラウド時代の人材像(1)SIとクラウドとのギャップ」でもご紹介したように、受託開発を中心としたSIビジネスの人員削減と、クラウド人材の獲得競争につながっているといえるでしょう。本調査資料では、従業員規模の小さい企業ほど、システム受託開発など労働集約的な事業を主力とする割合が高く、現在も将来の拡大予定事業でも変化はありません。クラウドが普及することになれば中堅中小のIT企業は、受託開発に変わる新たな収益モデルを生み出していく必要があるでしょう。
「キャリアに対するIT人材の意識」では、7割を超えるIT人材が「自分の将来のキャリアに対して強い不安を感じている」にあてはまると答えており、将来のキャリアパスやキャリア目標が明確になっていないIT人材も多いのが実態です。
キャリアの不安で多いのが、「今後も新しい技術やスキルをずっと吸収していけるのかという不安」、「自分が現在持っている技術やスキルが将来通用しなくなるのではないかという不安」が上位を占めています。
これらの解決をするためには、クラウド時代に対応した人材育成が急務ですが、IPAの調査では、研修や勉強会への参加は4分の1、クラウドにおいてはエコシステムを形成する上でも重要となる社内外のコミュニティにいたっては1割未満となっています。クラウド分野の技術やサービスが急速に進化しているのにもかかわらず、知識が追い付くための環境や個々の社員のモチベーションがおいついていないという実態も浮き彫りとなっています。
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担当キュレーター「わんとぴ」
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