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商店街視点によるソーシャルメディア活用と地域活性化

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地域の地盤沈下が指摘されていますが、中でも商店街を取り巻く環境は厳しい状況となっています。全国商店街振興組合連合会の参加店舗数は、2009年3月末時点で約11万店でしたが、1997年のピーク時から比べると店舗数は約3割減少しています。

その背景には、近年大型ショッピングセンターと競合し、品揃えや価格面において、商店街は不利な立場となっています。また、少子高齢化が進み商圏人口の減少、店舗の老朽化・陳腐化が進み、魅力のある店舗が少なくなっている点も指摘されています。さらには、商店街活動への商業者の参加意識が低く、経営者の高齢化の後継者不足も深刻な問題となっています。全国にシャッター商店街が増えている現状も見逃せません。

全国商店街振興組合連合会が平成18年に調査した「商店街実態調査報告書」によると、商店街が行っているソフト事業として、チラシなどの共同宣伝を実施している自治体が最も多く50%を超え、続いてサービス券・スタンプ・ポイントカード、共通商品券などが続いています。商店街では、ホームページやブログを開設し、商店街の情報を発信しているケースもあるものの、サイトの誘導することが難しく、運営費や運営稼動の負担や、サイトを運営できる人材不足にも頭を悩ましている商店街も多いことと思います。

各地域の商店街が地盤沈下に歯止めをかけ、元気なっていくためには、品揃えや価格面では優位にたてない大型ショッピングセンターとの差別化をはかる必要があります。地域特性や住民のニーズを汲み取り、地域コミュニティの中核となる創意工夫を凝らした地域活性化、そして固定客づくりが生き残り策の大きなテーマとなっていくでしょう。

だいぶ前になりますが、2007年の10月に「ソーシャル・コマースの未来は商店街の八百屋さん」というブログを書かせていただきました。ここで書いた内容を一部ご紹介しましょう。

私が小さいころは近くに八百屋さんがあり、母親といっしょに出かけて、八百屋さんの店員さんから「今日はキャベツが新鮮で安いよ!!」という感じで、会話をしながら野菜を買うという営みが良くありました。しかし今は、スーパーが大型化し、その光景を見るのも少なくなりました。消費者は商品を購入するときに、例えば、SNS等を通じて提供者側と会話をしながら購買をするというソーシャル・コマースの世界が日本の中でも一般化していくのかもしれません。

この役割を担うのが、これからの商店街だと考えています。

ここでは割愛しますが、現在、ツイッターを活用している商店街をリストアップしています。商店街は自治体よりも積極的に活用している事例を目にします。商店街の場合、各店舗がアカウントを持つことができ、商店街全体として盛り上げていくことができ、オンライン上で例えばハッシュタグなどを使い、連携することができれば、オンライン上での商店街の連帯感も生まれることでしょう。

商店街がソーシャルコマースを形成していく上で、重要な視点を少しここでまとめてみたいと思います。

地域版ソーシャルコマース経済圏を創る

最近話題となっているのが、ソーシャルコマースです。ソーシャルコマースの概要は省略しますが、オンライン上で商品の案内から決済まで完結する場合が大半かと思います。一方、商店街などが関与する地域版ソーシャルコマースの場合は、ツイッターなどのソーシャルメディア上でやりとりをし、実際の購入は商店街に足を運び購入するというモデルがあるのではと考えています。実際に、飲食店では予約受付や本日のおすすめの案内など、顧客とやりとりを通じて、クチコミを広げ、来店客を増やし、収益を増やした事例も出てきています。

商店街が、店舗まで顧客に足を運ばせるためには、様々な工夫が必要ですが、例えば「このつぶやきを見たら○○%割引します」とか「焼き立てのパンが30分後にできます」とか「めったに入らない○○が入荷しました」など、リアルタイム性が高く顧客が優越感を味わえる情報のやりとりができると、固定客を増やしていけるのかもしれません。商店街の場合は、各々の店舗が全体でおもてなしの心をもちソーシャルメディアでも活用し接していけることができれば、商店街全体の底上げにつなげることができるのではないかと感じています。

もう少し、地域版ソーシャルコマースについて、整理していきたい思います。

顧客と対話し固定客を増やす

商店街にとって最も脅威なのは、先ほどあげたように大型ショッピングセンターです。大型ショッピングモールではなかなか難しいのは、個人と個人の対話です。商店街では顔見知りの顧客も多く、会話の中で顧客が何を買いたいのかわかる場合も多いと思います。これらのやりとりをオフラインの場だけでなく、ツイッターなどのソーシャルメディア上でもやり続けることによって、より密度の高いコミュニケーションが生まれ、顧客のニーズにあった商品をおすすめできるようになるでしょう。ソーシャルメディアで顧客との対話を増やすことによって、固定客を増やしていくことができるのではないかと感じています。

ソーシャルメディアの普及によって人々はつながりを求めるようになっているため、大規模小売店から個人(店主)が看板となる時代へ回帰する流れも出てきています。つまり、ソーシャルコマースでは、店主の人間性も重要となるのです。店主の重要な役割は、店舗においてある商品を宣伝するというよりも、公式でないゆるさで、タイムラインに流れても違和感がないつぶやきをすることが、固定客やファンを増やすための重要なポイントとなっていくでしょう。

商店街に毎日足を運ぶことは難しいものの、ソーシャルメディア上では、毎日やりとりをすることも不可能ではありません。毎日のやりとりの中で、顧客との保温関係をつくり、持続的な関係をつくっていくことが、重要なポイントとなります。さらには、顧客から新しい顧客へクチコミで広がりを見せれば、商店街、そして店舗に足を運んでいく人も自然と増えていくのかもしれません。話題になりやすいテーマを増やし、顧客とのつながりやリアクションを楽しむことが重要となります。そうなれば、個々の顧客が商店街が好きになり、ソーシャルメディアを活用し自然と商店街や店舗の広報・宣伝担当のような役割を担うようになれば、商店街にはもっと活気が出てくるのかもしれません。

ソーシャルメディア上にも商店街を創る

商店街全体を盛り上げていくためには、個々の店舗がツイッターなどのアカウントを取得し、できるだけ多くの情報を発信することが重要でしょう。個々の店舗がアカウントをとれば、店舗のポリシーに応じてつぶやくことができ、独自色を出すことが可能となります。商店街の一体感を出すためには、ハッシュタグ(例#daimyo)や商店街リスト(例 @mtown_info/owner)を用意することが効果的です。

各店舗がアカウントを取得すれば、バーチャル商店街のようになり、イベント情報やツイッター割引など様々な情報提供や仕掛けができ、顧客も参加している気持ちが生まれます。こういった近所の八百屋感覚のネット上でのバーチャルな商店街、つまり地域版ソーシャルコマースを形成するコミュニティ空間を創ることが重要となってくるでしょう。

若年層を取り込む

そして、ソーシャルメディアは若い世代の多くが利用しているという点です。商店街は顧客層の高齢化が進み、高齢者層のみを固定客をしていれば、地盤沈下に歯止めはかけられません。そのため、ソーシャルメディアを利用し、商店街が比較的不得意とする若い世代との接点をつくり取り込んでいくことも重要です。ニュースでもよくとりあげられていますが、学生などが商店街の空き店舗を利用して商売をしているケースもみられます。商店街が将来発展していくためには、若年層を取り込む仕掛けが必要となるでしょう。

気軽さをうまく活用する

ツイッターはでつぶやける文字数は1回140文字以内。スマートフォンなどのモバイル端末からでも気軽にツイートできる文字数です。また、一度使い方を覚えれば気軽にツイートすることができます。ITリテラシーというよりも、コミュニケーション能力が要求されるでしょう。また、トライアル的に利用でき、投資が不要で、感触を見て、まわりに広げていくことができます。そのため、商店街の会員店舗のコンセンサス獲得が比較的ハードルが低いのかもしれません。さらに、ツイッターの講習会などを開けば、利用者を増やしていくこともできるでしょう。

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