日本のデータセンターの国際競争力(4)~日本の政策(経産省編)
第一回で外資のシンガポール集約の動き、第二回で海外政府の動き、そして第三回では総務省の動きを整理してきました。今回は経済産業省の取り組みについて少し整理をしていきたいと考えています。
日本データセンター協会
経済産業省は昨年12月4日、日本データセンター協会設立の発表をしました。協会のページはこちらです。今年の4月にはNPO法人化しています。本協会設立の目的は、コスト面、性能面、安全面、信頼面で国際競争力を備えたものへと進化することが急務の課題とし、事業者が水平的垂直的に協力して上記の課題解決に取り組み、IT立国の基盤を支えるデータセンターのあるべき姿を追求していく必要がるとし、技術部会や政策部会を設置し、対応を進めています。
クラウドと日本の競争力
経済産業省は、11月6日、10月30日に開催された「クラウド・コンピューティングと日本の競争力に関する研究会(第2回)」に関する資料を公表しました。また、同時に議事録(PDF)も公開しています。
本研究会では国内データセンターの観点からも触れられており、課題と方策について以下をあげています
(1)国内データセンター立地の普及・促進の課題
【技術】
- (課題)データセンターにおけるネットワーク関連技術の不足
- (方策)プロビジョニング技術の開発支援。距離に応じたNWの使い分け技術の開発支援等
【制度】
- (課題)クラウド・サービスに必要なNW帯域が確保できない地域の存在
- (課題)国内データセンターにとって利便性の高い支援制度
- (方策)電気料金に対する支援制度の見える化等
(2)国内データセンター及び運用保守技術の競争力強化
【技術】
- (課題)地理的制約や人件費を考慮すると、国内データセンタの運用費用が海外より高額
- (課題)日本の強みとなる技術を生かしきれていないため、価格競争となり競争優位が築けていない(高信頼化、環境負荷低減技術等)
- (方策)高信頼化や環境負荷低減、運用保守、電力事情を考慮した技術開発や標準化支援
(3)スケールメリットの追求
- (課題)立地的制約より米国等よりもデータセンターの規模が小さく、スケールが効かない。個々のデータセンター強化のみでは国際競争力の強化の確保が困難。
- (方策)データセンター間の総合連携技術、IPアドレス枯渇に対応したIPアドレス利用技術の開発
少し議事趣旨を見てみましょう。
データセンターについては、電力面を中心に議論がされています。日本においては、日本の高品質な電力の安定供給が優れていますが、電力価格においては米国においておおよそ3倍の開きがあると指摘しており、産業全体の課題として考えていく必要があるとしています。
また、スマートグリッドによる電力コスト低減に向けて、業界の壁を越えた強力体制を築くことが必要であるとしています。
電力コスト削減に向けた支援制度については、発電所に近い場所にデータセンターを設置すれば送電コストが下がることもあり、優遇政策を検討してほしいという要望もあります。また、電力支援制度に対するさらなる見える化も必要であるとしています。
最後に
日本の電力の安定供給は優れており、スマートグリッドは必要ないのではないか、という意見もあります。一方で、日本の電力料金は国際的に見ても非常に割高となっており、外資系企業が国内にデータセンターをする際においての大きなハードルとなっているのは、否めません。
日本の産業の成長戦略を描いていくためには、情報の空洞化に向けた対策を最優先課題として対応していく必要があります。クラウドサービスやデータセンターの技術に関して議論をしつつ、データセンター立地や誘致のあり方を真剣に議論し、税制優遇等、制度面に反映させていく時期にきていると言えるのかもしれません。
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