日本のデータセンターの国際競争力(2) ~海外(主にシンガポール)政府のクラウド政策
第一回目では、クラウドコンピューティングの普及に伴い、アジアのハブはシンガポールになりつつあるという趣旨の内容を書かせていただきました。
では、何故、セールスフォースやアマゾン等の外資系のクラウドサービスを提供する事業者にとって、シンガポールが魅力に移っているのでしょうか。
シンガポールの政府のクラウドに関する政策の一部を少し取り上げてみたいと思います。以下の内容は、DIGITAL GOVERMENT 「シンガポール政府のクラウドコンピューティング利用促進に係る取組み」から一部引用しています。
- 国家グリッドインフラ整備・強化イニシアティブの推進
- 「Grid Market Hub」構想の展開
- オープンシーラスクラウドコンピューティングテストベッドへの国家としての参画
- クラウドイノベーションセンターによるプライベートクラウドの推進
ポイントとなると思われるのは、「国家グリッドインフラ整備・強化イニシアティブの推進」です。以下取り組み内容について引用します。
シンガポールをICT資源のアウトソーシング事業の世界的拠点とするため、「知的国家2015」が発表されて以降、シンガポール政府は国内を拠点としたグリッドサービスプロバイダ(ICT資源のアウトソーシング事業の提供者)の育成に取り組んできた。これが、「国家グリッドインフラ整備・強化イニシアティブ」である。この政策では、シンガポール政府が国内を拠点としたグリッドサービスプロバイダ(オンデマンドやPay-per-use(従量課金ベース)でのサービス提供者)を公募してその事業立ち上げを支援するとともに、事業開始後は約4割のICT資源をシンガポール政府・公的機関がアウトソーシングで利用して事業の育成を行っている。
これからの取り組みの中でサービスプロバイダが公募され、セールスフォース、マイクロソフト、オラクル、ヴィエムウエア等の事業者が名前を連ねています。
シンガポール政府は、ICTアウトソーシング事業の世界拠点を目指すという中長期戦略を掲げ、米国の大手クラウド事業者と積極的にアライアンスを構築し、支援策を展開しています。
一方、EUの動きも注目です。EUでは、1998年10月に「データ保護指令」を施行し、第三国へのデータ移行については、十分なレベルの保護がなされていない限り禁止しています。EUでは、マイクロソフトをはじめ、EU内でのデータセンターの開設が始まっています。情報の保護という観点から、政策を考えていく視点も必要かもしれません。
参考ですが、以前、米国と英国でのクラウド政策に関しても記事を書きました。各国の政府がクラウドに対してどのような政策を展開しているか整理していく必要があるでしょう(機会あれば情報をアップデートしたいと思います)。
- 米国における電子政府クラウドの取組みについて(1)(2009.9.7)
- 米国における電子政府クラウドの取組みについて(2)(2009.9.8)
- 英国における電子政府クラウド(G-Cloud構想)の取組みについて(2009.9.9)
明日は、日本政府が国際競争力の観点からどのような対応をとっているが、省庁別に整理してみたいと思います。
※関連記事
日本のデータセンターの国際競争力(1) ~外資系のアジア進出 (2009.11.16)
日本のデータセンターの国際競争力(2) ~海外(主にシンガポール)政府のクラウド政策 (2009.11.17)
日本のデータセンターの国際競争力(3)~日本の政策(総務省編) (2009.11.18)
日本のデータセンターの国際競争力(4)~日本の政策(経産省編) (2009.11.19)
日本のデータセンターの国際競争力(5)~データセンターの誘致活動について (2009.11.20)