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決して最先端ではない、けれど日常生活で人びとの役に立っているIT技術を探していきます。

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New York Times 紙のサイトに興味深い記事が。最近あまり聞かなくなった「デジタルデバイド」という言葉ですが、決して情報格差が解消されたわけではなく、形を変えて問題が残っているのだそうです:

Wasting Time Is New Divide in Digital Era (New York Times)

ちょっと気になって、Googleで「デジタルデバイド」もしくは「デジタルディバイド」という言葉がどのくらい検索されているのかを確認してみました:

ご覧の通り、ここ6年ほどずっと下降傾向にあります。"Digital Divide"という英単語で見た場合も同様で、やはり世間の関心は薄れてきているのでしょう。確かに最近は老若男女、誰がPCやスマートフォン、タブレットを操っていても驚かない時代です。完全に解消したのではなくても、いまさらデジタルディバイド?というのが正直な反応ではないでしょうか。

しかし米国の研究者らの調査によって、問題が別の方向に変化してきていることが指摘されています:

As access to devices has spread, children in poorer families are spending considerably more time than children from more well-off families using their television and gadgets to watch shows and videos, play games and connect on social networking sites, studies show.

This growing time-wasting gap, policy makers and researchers say, is more a reflection of the ability of parents to monitor and limit how children use technology than of access to it.

“I’m not antitechnology at home, but it’s not a savior,” said Laura Robell, the principal at Elmhurst Community Prep, a public middle school in East Oakland, Calif., who has long doubted the value of putting a computer in every home without proper oversight.

誰もが端末を持つようになった現在、貧困家庭の子供は裕福な家庭の子供に比べ、テレビやガジェットを通じて番組やビデオを観たり、ゲームしたり、ソーシャルネットワークサイトにアクセスしたりといった時間がずっと長くなっていることを研究が明らかにしている。

政策決定者や研究者らはこの「無駄に費やされる時間のギャップ」の原因について、親が子供の端末使用を制限していないからというよりも、子供を監督してテクノロジーの使い方に制限をかけるという行動をしていないからだと指摘する。

「私はテクノロジー反対派というわけではないのですが、技術は決して救世主ではないのです」とLaura Robellは語る。彼女はカリフォルニア州イーストオークランドにある公立中学校、Elmhurst Community Prepの校長を務める人物で、適切な管理もなしにすべての過程にコンピュータを導入しようとする行為について、長年にわたって疑問を抱いていた。

1つの研究から早急に結論に飛びつくわけにはいきませんが、デジタル端末の用途は決して勉強に限定されているわけではなく、単に端末を与えるだけではゲーム専用機に早変わりしてしまうというのはある意味で当然の話かもしれません。また最近、ペルーで行われていたOLPC(One Laptop per Child、主に途上国の子供たちに安価なラップトップPCを提供して教育に役立てようという活動)について、学力向上には効果が無かったという調査結果が明らかになっています(参考記事)。端末が普及することが決して無意味だというわけではなく、普及したいまだからこそ、その次にある「使われ方」という点に関心が移りつつあるのでしょう。

この点について、ソーシャルメディアの研究者として有名なdanah boydさん(全て小文字で表記する方が正解)がこんなコメントを寄せています:

But “access is not a panacea,” said Danah Boyd, a senior researcher at Microsoft. “Not only does it not solve problems, it mirrors and magnifies existing problems we’ve been ignoring.”

しかし「デジタル端末へのアクセスを与えることは万能薬ではありません」とマイクロソフトのシニアリサーチャー、Danah Boydは言う。「それによって問題が解決されるわけではないどころか、私たちが無視してきた問題が反映され、拡大してしまうのです。」

テクノロジーは良くも悪くも、私たち自身を映し出す鏡であり、それを手に入れて「これで問題は解決だ!」と喜ぶのは、スポーツカーを買ってドライビングテクニックが上手くなっと勘違いするようなものなのかもしれません。

いま日本でも、多くのデジタルテクノロジーが教育の現場や子供たちの生活に流れ込もうとしています。先ほど述べたように、それ自体は悪いことではありません。しかし最新鋭の端末が生徒や教職員の手に渡っただけで喜んでいては、米国やペルーの事例と同じ道を歩んでしまうのではないでしょうか。さらにそれを見て「やはり子供にデジタル機器は渡すべきではない」という風潮が高まり、使い方の教育をほどこすという方向ではなく、アクセスを遮断するという方向に進んでしまう――特に日本の場合はその恐れが強いのではないかと心配になってしまった次第です。

ただ使い方の教育については、一部「情報リテラシー」という形で取り組みが始まっています。それをさらに拡大して、情報だけでなくデジタル技術全体とどう付き合ってゆくべきか、子供だけでなく大人たちも考えて学んでゆくべきテーマかもしれません。

【○年前の今日の記事】

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小林啓倫

小林啓倫

株式会社日立コンサルティングの経営コンサルタント。WEBサービスの企画・運営、新規事業の立案などに携わる。個人でPOLAR BEAR BLOGも執筆中。

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