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日経BPさまより、今月上旬に発売されたばかりの『究極の顧客サービス「ザッポス体験」―顧客も社員も幸せにする5つの法則』を頂戴しました。ありがとうございます。というわけで、例によって簡単にご紹介と感想を。

究極の顧客サービス「ザッポス体験」  ―顧客も社員も幸せにする5つの法則 究極の顧客サービス「ザッポス体験」 ―顧客も社員も幸せにする5つの法則
ジョゼフ・ミケーリ トニー・シェイ 序文

日経BP社 2012-05-08
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ザッポス(Zappos)といえば、靴の販売から始まり、現在では幅広いファッションアイテムを扱うようになったオンラインショップ……という解説がいらないほど、日本でも「徹底した顧客サービスを提供する企業」として有名になりました。本書はそのザッポスがテーマなわけですが、既にいくつか「ザッポス本」が登場しており、CEOのトニー・シェイ自身が著した『顧客が熱狂するネット靴店 ザッポス伝説―アマゾンを震撼させたサービスはいかに生まれたか』も邦訳されています。では本書の特徴はというと、解説で本荘修二さんがこう書かれています:

『ザッポス伝説』は、原著の副題 A Path to Profits, Passion, and Purpose(利益、情熱、そして目的への道)が表すように、トニー・シェイ自らが個人の自伝とザッポスの波乱万丈の歩みについて、あたかも映画をみるように躍動感あふれる人間的な描写で伝え、さらにザッポスが到達したハピネスのビジネスモデルについて説明したものです。

(中略)

トニー・シェイをして、「『ザッポス伝説』はあなたがなぜこの事業をやるのか問い直す助けとなり、『ザッポス体験』はどのように事業をやるかに役立つ」と言わしめた本書は、ザッポスの"解体新書"とも言えます。

本荘さんの解説の通り、本書にはザッポスの代名詞とも言えるカスタマーセンターの内情から、社内文化、採用プロセス、オフィスの様子に至るまでありとあらゆる情報が詰め込まれています(一部はQRコードを通じてオンラインで入手可能)。実際の研修プログラムの中身やコアバリューの文章なども書かれていて、具体的な行動に移す上で大きな参考になるでしょう。もちろん表面的な行動をなぞっても第2、第3のザッポスになれるわけではなく、本書を通じて「なぜザッポスはこう行動するのか」を理解しなければ、決して長続きはしないと思いますが。

しかし本書を読んでいるうちに、ふとこんな思いにとらわれるかもしれません――「ここまで顧客に尽くすモデルを採用していて、ザッポスは長続きするのだろうか?」。消費者の視点から見れば、本書に書かれているサービス追及の姿勢はありがたいばかりです。しかし自分たちがザッポスの立場に立てと言われたら、期待よりも不安の方を感じてしまうのではないでしょうか。実際の話、いくら「ザッポスはどうやっているのか」という情報が明らかにさらたとしても、それをとことん真似できる企業はごく僅かでしょう。

ではなぜザッポスは顧客サービスを過剰なまでに追い求めることができるのか。その答えも、本書で明かされています:

ザッポスはまず靴と関係の深い分野に手を広げた。フットウェアとなじみやすいバッグ、アクセサリー、衣料に始まって、家庭用品、美容・スポーツ用品へと拡大していく。トニー・シェイはブランドの拡大についてこう語る。「サービスこそわが社のブランドで、販売する商品はサービスを運ぶための乗り物に過ぎないと気づいたんだ。遠くない将来には、ザッポスが靴の販売会社だったことをみんな忘れていると思う。ザッポスからサービスを受けたい分野は、顧客が教えてくれる。だからひょっとすると、ザッポス・エアラインなんてのも出現するかもしれない。本社のあるラスヴェガスのダウンタウンが、文化とイノベーションの最前線になるかもしれないね」

ザッポス・エアライン!この説明を読んだ後では、本書の見方は180度変わってしまうかもしれません。『ザッポス体験』は既存のビジネスの顧客サービスをどう改善させるかを語る本ではなく、顧客サービスという「製品」で商売する企業が、その製品をどう開発・製造・品管しているかを詳説した本と言うことができるのではないでしょうか。

もちろんザッポスのサービスを知ることで、自社のサービスを改善するヒントも得られるでしょう。しかしそれより大切なのは、本書が文字通り「体験」を売りにする企業を解体してくれているという点です。その意味で、本書はサービス部門だけでなく、企業全体の企画立案に携わる人々にとって有益な本ではないでほうか。顧客にユニークな体験(それは優れたアフターサービスだけでなく、笑いや優越感など様々な方向性が考えられるでしょう)を提供することが、これからの企業が成功する1つのカギであると言われているわけですしね。

顧客サービスという部分でザッポスを真似するのではなく、優れた体験を提供するという部分でザッポスを真似するーーそのヒントを与えてくれるのが『ザッポス体験』という本ではないかと感じた次第です。

【○年前の今日の記事】

なぜネットにグループウェアがないのか (2007年5月31日)
バーチャル店舗の未来 (2006年5月31日)

アキヒト

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小林啓倫

小林啓倫

株式会社日立コンサルティングの経営コンサルタント。WEBサービスの企画・運営、新規事業の立案などに携わる。個人でPOLAR BEAR BLOGも執筆中。

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