ベンチマーク:旧来顧客に新顧客候補へのトラブルを説明してもらうということ
★続きものです。昨日の『カスタマイズ無しでお客様要望に応えられる製品ができた背景』に続けます。
★全員体制で製品をひたすら創り込みます。品質を上げた分だけお客様が増える。そのような効果が実感として上がってきた頃のことを記載します。
■戻ってくるお客様
あるお客様でのことです。そこでは2003年に、出来立ての我々の製品を半年ほどかけて検討評価してくれていました。半年もかかっていたのは、なかなかお客様のシステムと連携して動かすことができなかったことが大きな要因です。検討が終了すると「社内に携帯電話でメールを読むニーズがあることはわかりました。ありがとうございました。」とのことでした。採用をお願いしますが、そのままフェードアウトしていってたのです。
3年後の2006年末のことです。そのお客様の懐かしい担当者さんから「CACHATTOのプレゼンテーションをしてほしい」と急きょ呼び出されたのです。出向くとびっくり、システム関連の、30名近い人々の前でプレゼンテーションをすることになっています。どうやらそこではその後、我々の製品ではなく、初期費用の安い携帯キャリアの提供するサービスを採用していたようです。
30名の方々は、プレゼンテーションとデモンストレーションを一通り聞いてくれます。CACHATTOのスピードの速さにどよめきが出たりすると得意な気持ちになります。そして、システム部長が「セキュリティ的にこれが最適」と即決してくれます。どうやら、使っていたキャリアのサービスでセキュリティトラブルを発生させてしまったようでした。何はともあれ嬉しいことです。その2週間後には本社で大規模試行開始です。
短期間での導入に、さすがに「カチャっ」とつないだだけで使えると謳っている自分たちにも緊張が走ります。実際に接続すると、幸運にも殆どトラブル無しでスタートできます。自分たちの製品が、3年前から明らかに大幅に進化していたことを実感します。担当者さんも感心してくれます。そう、お客様は戻ってくるのです。その場の受注・失注に一喜一憂したり、態度を変えてはいけないのだと、心に刻みました。
■ベンチマークという言葉
「いよいよベンチマークの段階に入りました。ご協力お願いできますか?
あとはお宅の会社規模だけが問題点です。」
2007年夏、大手コピーメーカーでの採用が目前だったときです。そこの責任者から聞かれます。ベンチマークという言葉は、そのとき初めて認識しました。どうやら話の筋からすると、「先駆者の実績をヒアリングする」という意味でつかわれているようです。
CACHATTOが機能的・価格的には利用に最適と判断されていました。比較されていたNTT系サービスからの弱点は、唯一我々の会社規模だと言われました。ベンチャー企業が提供するサービスです。平常時はいいとして、異常時には、どのような対応になるのかを知ることも重要だったようです。採用側にもリスクがあります。
兎にも角にも、正直なところをさらけ出すしかありません。自分たちは精いっぱいの誠意をもってやってきました。そこで何と言われようとも、とりつくろうのは無理です。採用規模や導入期間などから、前述のシチズンさんと東レさんとにヒアリングしてもらう場を設けます。
ベンチマークと称した会議のために、シチズンと東レにそれぞれ出向きます。ヒアリング対象になった担当者たち、意外にもメーカーを前に、悪い意見を含めて冷静に話してくれました。「その場に自分がいてもいいのだろうか」と思うほどです。事前煮詰めの不足から来る、我々のケアレスミス的なトラブルなどについても赤裸々でした。
ただ、共通していたのは、トラブル時のリカバリー、そこへの我々の責任感やスピーディーな対応については、良く言ってくれました。「小規模だからがゆえ全力を挙げて対処してくれる」と。ありがたいことです。
ついに、業界では難攻不落といわれる同社での自社導入が決まりました。ちなみに、自分たちが起こしたトラブルを話題にした、お客様同士での打ち合わせなどというのは、今のところその時が最初で最後です。世の中には知らないことが多いですね!
そしてこの採用が大手代理店への刺激材料となるのでした。
以下次号・・・『ソフトウェア販売において大手流通とお付き合いするということ』
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※20100322 16:23 以下次号のリンク追加しました。