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AI検索は本当に信頼できるのか?

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Gartnerは2025年9月3日、「AI検索と消費者信頼」に関する調査結果を公表しました。

Marketers Must Build Topical Authority by Consistently Publishing In-Depth, Accurate, Well-Researched Content

対象は米国の消費者377人で、AIによる検索結果や要約に対する信頼度、利便性の評価が焦点となっています。その結果、53%の消費者がAI検索結果に不信感を抱き、41%が生成AIの要約によって検索体験がむしろ煩雑になったと回答しました。

背景には、検索体験が従来の検索エンジン主導からAI要約やチャットボットによる自動提示型へと移行している状況があります。検索行動が購買判断やブランド認知に直結する今、企業にとっては「信頼される情報源」としての存在感を築くことが一層重要となっています。

今回の記事では、AI検索に対する消費者の評価の実態、ブランド戦略への影響、ユーザーコントロールへのニーズ、そして今後の展望について整理します。

AI検索に対する信頼不足

Gartnerの調査では、AIによる検索や要約に「信頼できない」「偏りがある」と感じる人が過半数を占めました。特に購買行動に直結する局面でその不安は顕著です。AIによる要約は、幅広い情報を迅速に提示する利点がある一方で、情報の出所や正確性が不透明であることが消費者の不信感を招いています。

消費者が最も求めているのは、検索の利便性と正確性の両立です。従来型の検索エンジンは依然として強い支持を集めており、製品・サービスの比較や価格調査など実用的な場面でAI検索の活用度は限定的にとどまっています。

ユーザーコントロールの要望

Gartnerの調査では、61%の消費者が「AI要約のオン・オフを切り替えられる機能」を求めていることも明らかになりました。この結果は、消費者が情報取得プロセスにおける自主性を重視していることを示しています。

企業が検索最適化を行う際には、AIによる自動提示だけでなく、従来の検索体験を尊重した選択肢を用意することが求められるでしょう。透明性やユーザー選択権を確保することは、AI活用に対する抵抗感を和らげ、ブランドへの信頼につなげる要素となります。

マーケティング戦略への影響

Gartnerのアナリスト、ノアム・ドロス氏は「デジタルマーケティングはAI検索への最適化と、信頼性あるブランド情報発信の両立が不可欠になる」と指摘しています。消費者がAI結果を完全に受け入れていない現状では、企業が一方的にAI最適化に注力するのはリスクがあります。

むしろ、自社の専門性や信頼性を裏付ける詳細な調査、正確なデータ、深みのあるコンテンツを継続的に発信することが、ブランド信頼の基盤を築きます。さらに、マルチチャネル戦略を通じて、AI要約だけでなく従来型検索やSNSなど多様な接点での発見可能性を高めることが重要です。

検索利用シーン別の特徴

Gartnerによると、AI要約やチャットボットが有用とされるのは「初期的な製品探索」に限定される傾向が見られます。製品・サービスを幅広く知る段階ではAI要約が37%の支持を得ていますが、価格比較や購入の最終決定では10%前後まで低下します。

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出典:Gartner 2025.9

これは、AIが示す情報が「参考」にはなるものの、消費者が最終的に求める信頼性や具体性に欠けることを示しています。結果として、購入直前の意思決定においては従来型検索エンジンの優位性が維持されています。

今後の展望

AIが検索体験を刷新していく流れは不可避ですが、その定着には試行錯誤が続くとみられます。短期的には、消費者の不信感やユーザーコントロールの要望に対応する機能改善が進むでしょう。検索プラットフォームは、AIの利便性と従来検索の透明性を組み合わせる「ハイブリッド型体験」へと進化する可能性があります。

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