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幸福度は「47.2歳」で底を打つ。世界132カ国のデータが教える、絶望からのV字回復ルート

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仕事はある。家族もいる。大きな病気をしているわけでもない。
それなのに、ふとした瞬間に鉛のような重たいものが胸に広がることはありませんか?

「自分の人生のピークは、もう過ぎてしまったのではないか」
「この先、下り坂をただ降りていくだけなのか」

暗い谷底から頭上の光を見上げる様子
“The darkest hour is just before the dawn.”
「夜明け前が一番暗い。40代の憂鬱は、人生が再び輝きだすための準備期間だ。」

もしあなたが今、言葉にできない焦燥感に駆られ、ふとした瞬間に胸が苦しくなるような感覚を覚えているとしたら、まず一番にお伝えしたいことがあります。

どうか、自分を責めないでください。

今のその苦しみは、決してあなたの性格が弱いからでも、これまでの努力が足りなかったからでもありません。

実は、世界中の膨大なデータが証明している通り、あなたは今、人生の折り返し地点で誰もが陥る「40代特有の構造的な罠」にはまっているだけなのです。

1.世界132カ国で証明された「幸福度のU字カーブ」

「中年の危機(ミッドライフ・クライシス)」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。これは単なる迷信ではなく、経済学的に証明された事実です。

米ダートマス大学のデビッド・ブランチフラワー教授らが、世界132カ国(先進国・途上国含む)のデータを分析した結果、人生の幸福度は年齢とともに「U字カーブ」を描くことが明らかになりました。

幸福度のU字カーブグラフ
【データのポイント】
  • 幸福度は20代から下がり続け、47.2歳(先進国平均)で底を打つ
  • 環境や年収に関わらず、50代以降はV字回復していく。
  • この傾向は、日本を含む世界中で共通している。
出典:David Blanchflower, “Is Happiness U-shaped Everywhere?” (NBER Working Paper No. 26641, 2020)

つまり、今あなたが感じている閉塞感は、人生の折り返し地点で誰もが通過する「統計的な必然」なのです。

2.なぜ「47.2歳」で最低になるのか? 3つの理由

では、なぜ働き盛りで、分別もあるはずの40代後半に、幸福度は最低になるのでしょうか?
そこには、私たちが思わず「あぁ、わかる……」と唸ってしまう3つの背景があります。

(1) 「期待」と「現実」の残酷なギャップ
20代の頃、「自分は何者かになれる」という楽観的な期待を持っていませんでしたか? しかし40代半ばになると、自身の能力の限界や、組織内での最終的な到達点(出世の天井)が見えてきます。「若き日の夢(期待)」と「現実の自分」とのギャップを直視せざるを得なくなり、諦めがピークに達するのがこの時期です。

(2) 逃げ場のない「サンドイッチ世代」の重圧
40代は、人生で最も責任が重なる時期でもあります。親の介護、子どもの教育費、そして職場での管理職としての責任……。これらが同時に押し寄せるため、自分の幸福を考える余裕が物理的・精神的になくなってしまうのです。

(3) 実は「チンパンジー」も悩んでいる?(生物学的理由)
驚くべきことに、人間以外の類人猿(チンパンジーやオランウータン)でも、中年期に幸福度(飼育員による観察評価)が下がる「U字カーブ」が見られるという研究があります。(出典:Weiss et al., PNAS 2012)
つまり、このモヤモヤは社会環境だけでなく、生物としての脳の仕組みに組み込まれた現象である可能性が高いのです。

3.「底」にいるからこそ、蹴って上がれる

どうでしょうか。「なんだ、自分のせいじゃなかったのか」と、少し肩の荷が下りたのではないでしょうか?

そして、このデータには最大の「希望」があります。
U字カーブが示しているのは、「底を打てば、あとは上がるだけ」という事実です。

40代の憂鬱は、決して「終わりの始まり」ではありません。
これまでの「他者評価」や「出世競争」というゲームのルールが通用しなくなり、「自分の内面的な充実」へと人生の舵を切るための、OSアップデート期間なのです。

サナギが蝶になるために一度ドロドロに溶けるように、私たちも一度、過去の自分をリセットする痛みを感じる必要があります。その痛みが「47.2歳のモヤモヤ」の正体なのです。

4.V字回復の鍵は「転職」ではなく「転身」

では、どうすればこの「底」をいち早く抜け出し、幸福度の上昇気流に乗れるのでしょうか。
データと私の経験から導き出した答えは、「比較」から「探究」へのシフトです。

  • × 比較(For Status): 同期より出世しているか、年収はどうか。
  • ○ 探究(For Purpose): 自分の経験は誰の役に立つか、何をしている時が楽しいか。

「ないもの」を数えて嘆くのではなく、「あるもの(培ってきた経験やスキル)」をどう社会に還元するか。
この「転身(サードキャリア)」の視点を持った瞬間、U字カーブは上昇を始めます。

40代の苦しみは、あなたが真剣に人生と向き合っている証拠です。
その苦しみの先には、若い頃よりずっと深く、穏やかな幸福が待っています。

さあ、底を蹴って、水面へと浮上しましょう。
そのための具体的な泳ぎ方は、私の著書に書いてみました。


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共に学ぶ仲間のみなさんへ、多くの共感とメッセージをありがとうございます。
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