AI導入を急ぐ企業が見落とす「3つの落とし穴」
AI活用の波が、一気に企業システムの奥深くまで押し寄せています。
最近では、生成AIの実証実験(PoC)を飛び越えて、営業・人事・インフラ運用などコア領域で「本番投入」を急ぐ企業が増えています。
しかし、この流れを見ていると、どうしても気になる点があります。
"アクセル全開なのに、ブレーキとメーター類が未整備" という危うい状態の組織があまりに多いのです。
キンドリルが発表した「2025 Kyndryl Readiness Report」でも、
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68% の企業が AI に多額投資
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61% が ROI を示すプレッシャーの増加を実感
という数字が示されていました。
ROIのプレッシャーは、企業を"見切り発車"へと追い込みます。
そしてその裏側で、もっと重大な「3つの落とし穴」が静かに広がっています。
1. 「AI投資」と「ガバナンス整備」のギャップは想像以上に深刻
ここ数年の現場を見ていて強く感じるのは、
AI導入のスピードが、セキュリティ・ガバナンス体制の整備を完全に置き去りにしている
という現実です。
多くのサイバー障害は、実は高度な攻撃ではなく、
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人為的ミス
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システム間の接続の歪み
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設定の不整合
といった "地味な隙" に起因します。
そこへガバナンス不十分なAIが入るとどうなるか。
人間の1ミスが、AIによって"機械の速度"で拡大する のです。
「軽微な設定ミスが、一晩で全クラスタの設定を上書きして壊滅」
「誤った権限設定のまま、AIが大量の機密データに自動アクセス」
こんな事故シナリオは、誇張でもSFでもありません。
まさに アクセル全開で高速道路に乗り、ブレーキは整備中のまま という状態です。
そしてこの問題をさらに深刻化させる存在が、次に述べる「エージェントAI」です。
2. エージェントAIは"強力すぎる自動化"であり、同時に"予測不能というリスク"
近年のAIトレンドの中心は、単なるチャットボットではなく、
自律的に意思決定し、タスクを実行する「エージェントAI」 です。
もはやデータ分析ツールではなく、
営業・人事・インフラ運用に混ざる "デジタル従業員"。
しかし、自律性が高いということは――
不適切に統制されれば、これまで存在しなかった新種のセキュリティリスクを生む
ということでもあります。
キンドリルのグローバルリーダー、クリス・ラブジョイ氏も次のように警告しています。
「エージェントAIは強力だが、統制がなければ新しいセキュリティ課題を生む。
私たちは企業が"信頼性"と"レジリエンス"を組み込んだ形でエージェントを導入できるよう支援している。」
要するに、
「機械が"勝手に判断する世界"に入ったのに、統制が追いついていない」
という非常に危険な状態が生まれつつあるわけです。
3. 必要なのはツールではなく「AIの信頼を可視化・統制するコントロールセンター」
こうした状況に対して、キンドリルが打ち出したのが
「Kyndryl Agentic AI Digital Trust」 という新サービスです。
ポイントは、単なるAIセキュリティ製品ではないということ。
これは "エージェントAIの統合コントロールセンター" を作るための仕組みです。
● 何ができるのか?
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エージェントの発見・登録
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動作テストと認証
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ポリシー強制と継続監視
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監査ログ・コンプライアンス
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AI版のMDR(マネージド検知・対応)
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プロアクティブなリスク管理
つまり、
"デジタル従業員の人事・セキュリティ・監査を丸ごと行う"
という世界観に近い。
しかも特徴的なのは、
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既存のセキュリティインフラ
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ハイブリッド/マルチクラウド
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ハイパースケーラー
と自然に統合できる点です。
これらは特にMicrosoftとの協業が重要で、
Fabric IQ、Digital Twin Builder、Real-Time Intelligence と連携し、
AIガバナンスの実装範囲を一気に広げています。
単なるコンセプトではなく、
"すぐ使えるエンタープライズ基盤として動いている" のが強みと言えるでしょう。
まとめ:AIエージェント時代の"信頼のコントロールセンター"を持てるかが重要です
エージェントAIによって、企業はこれまでにない生産性や自動化を手に入れようとしています。
しかし、その"すごさ"と同じくらい、
「どう統制するか」 が未来の競争力を左右します。
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AIを導入するか
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どのモデルを使うか
よりも、
「どう信頼し、どう管理するか」 が重要な時代に入ったのです。
あなたの組織は、
"自律して動くAIを安心して任せられる準備"
できているでしょうか?