PDCA・OODA・AARはどう違う? 「正解のない時代」に成果を出す、第3のフレームワーク
ビジネスの現場では、長らく「PDCA(Plan-Do-Check-Action)」が基本とされてきました。
また近年では、変化の激しい環境で迅速に意思決定するための「OODA(Observe-Orient-Decide-Act)」ループも注目されています。
しかし、これからの時代、特に私たち個人のキャリアや深い学びにおいては、これら2つだけではカバーしきれない領域があります。
そこで今、世界の教育界や最先端の組織論で注目されているのが、OECD(経済協力開発機構)が提唱する「AARサイクル」です。
今回は、PDCA、OODAとの決定的な違いを比較しながら、なぜAARが「正解のない時代」の最強のOS(思考基盤)となるのかを解説します。
1.3つのフレームワーク、何が違う?
まずは、それぞれの特徴を一目で理解できる比較表をご覧ください。
| PDCA | OODA | AAR | |
|---|---|---|---|
| 正式名称 | Plan Do Check Act |
Observe Orient Decide Act |
Anticipation Action Reflection |
| 得意な状況 | 「正解」がある時 (工場・定型業務) |
「変化」が早い時 (競争・有事) |
「正解」を創る時 (探究・キャリア) |
| サイクルの 起点 |
計画 (Plan) 計画通りに進める |
観察 (Observe) 相手/状況を見る |
見通し (Anticipation) 「ありたい姿」を描く |
| 重視する 価値 |
効率・確実性 | 速度・勝利 | 意味・変容 (Agency) |
2.なぜ、今「AAR」が必要なのか?
(1) PDCAの限界:「計画」が立てられない
PDCAは「ゴール」が明確な登山のようなものです。しかし、変化の激しい現代では、そもそも地図がない(計画が立てられない)ことがほとんどです。無理にPlanを立てようとして動けなくなる「計画倒れ」に陥りがちです。
(2) OODAの限界:「勝つ」ことだけが目的ではない
OODAは元々、軍事戦略から生まれた「生き残るため」の理論です。競合より速く動くことには長けていますが、じっくりと腰を据えて「自分は何になりたいか」「どんな社会を作りたいか」という内面的な価値(Purpose)を育てるには不向きです。
(3) AARの可能性:「未来」を起点に行動する
AARの最大の特徴は、起点が「Anticipation(見通し)」であることです。
「現状がこうだから(Observe)」という反応的な行動ではなく、「未来はこうありたい(Anticipation)」という意思(Agency)を持って行動を起こします。
3.AARサイクルで「独学」と「転身」を加速させる
このAARサイクルは、40代からのキャリアチェンジやリスキリング(学び直し)において、驚くべき効果を発揮します。
- Anticipation(見通し):
「英語を勉強する」ではなく、「英語を使って海外のプロジェクトで活躍している自分」を見通す。 - Action(行動):
完璧を目指さず、まずは拙い英語でも発信してみる。 - Reflection(振り返り):
「何点取れたか(Check)」ではなく、「やってみて自分の景色はどう変わったか? 次はどうしたいか?」と内省する。
このReflection(深い省察)があるからこそ、経験が単なる「作業」で終わらず、あなたの血肉となる「実践知」へと変わるのです。
4.まとめ:あなただけのサイクルを回そう
効率よく進めるならPDCA。
ライバルに勝つならOODA。
そして、あなたらしい未来を創るならAAR。
場面に応じてこれらを使い分けることが、これからのビジネスパーソンの必須スキルと言えるでしょう。
まずは今日の仕事や学習で、「Anticipation(どうなったら最高か?)」を一つ描くことから始めてみませんか?
自分のキャリアにAARを生かす方法を本で、解説しています。ご興味を感じたら、是非 手に取ってみてください。 ;)
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皆さんの声が、次の社会を動かす風になります。
これからも一緒に、”転身の時代”を育てていきましょう。