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カーボンニュートラルに必要不可⽋な水素 ~水素サプライチェーンに向けて

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カーボンニュートラルの実現に必要不可⽋な水素へのニーズが高まっています。

経済産業省は2022年8月5日、「第1回 水素保安戦略の策定に係る検討会」を開催しました。

この中からカーボンニュートラルに必要不可⽋な水素と、水素サプライチェーンに向けてとりあげたいと思います。

⽔素は、輸送・発電・産業といった多様な分野の脱炭素化に寄与する、カーボンニュートラル(CN)に必要不可⽋なエネルギーと位置づけられています。

今般のエネルギー基本計画でも、2030年の電源構成に初めて位置づけられ、ロシアのウクライナ侵略により、エネルギーセキュリティの⾯からも重みを増す中で、社会実装の加速化が求められています。

これまでの研究開発・実証により、発電や海上輸送、燃料電池などの分野で⾼い競争⼒を持っています。さらに、グリーンイノベーション基⾦を通じて、⼤型化やコストダウンの開発・実証を⼀気に進め、商⽤化フェーズへと押し上げていく計画を進めています。

経産省では、今後とも世界をリードし、国内外の脱炭素化を進めると同時に、⽴ち上がりつつある海外市場を獲得するためには、世界に先駆け、商⽤サプライチェーンを構築するとともに、⽔素の導⼊拡⼤を図る必要があるとしています。

そのためには、当⾯は既存燃料よりも割⾼である⽔素を⼤規模・安定的に導⼊していくための政策措置に加え、取扱いが難しいガスである⽔素を安全かつ円滑に導⼊していくため、スピード感をもちながら、予⾒性が⾼い形で、保安⾯の制度整備を含む⽔素保安戦略を策定していく必要があるのではないか、と方向感を示しています。

■カーボンニュートラルに必要不可⽋な⽔素

⽔素は直接的に電⼒分野の脱炭素化に貢献するだけでなく、余剰電⼒を⽔素に変換し、貯蔵・利⽤することで、再エネ等のゼロエミ電源のポテンシャルを最⼤限活⽤することも可能とするものです。

加えて、電化による脱炭素化が困難な産業部⾨(原料利⽤、熱需要)等の脱炭素化にも貢献し、化⽯燃料をクリーンな形で有効活⽤することも可能とすることで期待されています。

⽔素から製造されるアンモニアや合成燃料等も、その特性に合わせた活⽤が⾒込まれています。

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出典:経済産業省 第1回 水素保安戦略の策定に係る検討会 2022.8.5

■世界的な⽔素・アンモニアの需要・供給量の拡⼤

世界の市場環境をみてみたいと思います。

IEAのNZEシナリオ(Net Zero Emissions by 2050シナリオ)では2030年は発電部⾨が需要拡⼤を牽引。輸送部⾨は乗⽤⾞に加え、商⽤⾞(FCトラック等)でも⽔素の導⼊が拡⼤する⾒込みと予測しています。

2050年は現在の約6倍弱の5億トン/年程度の需要を⾒込んでいます。発電部⾨の導⼊量も堅調に増加しますが、⽔素還元製鉄をはじめとする産業分野での⽔素利⽤、船舶や航空機での利⽤などが⼤きく拡⼤し、利⽤先の更なる多様化が⾒込まれています。

供給側は当初はCO2未処理の化⽯燃料由来⽔素が太宗を占めていますが、化⽯燃料+CCUS、電解⽔素の供給量が拡⼤。⻑期的には再エネ由来⽔素がコスト競争⼒を有し、2050年で約6割のシェアを有する⾒込みとなっています。

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出典:経済産業省 第1回 水素保安戦略の策定に係る検討会 2022.8.5

■ウクライナ情勢を踏まえた諸外国の動き

諸外国も引き続き、⽔素に注⼒していますが、昨今のウクライナ情勢を受けて、特に欧州各国は脱ロシア依存に向け、⽔電解を軸とした国内⽔素製造基盤を拡⼤し、エネルギー安全保障を強化することを狙っており、⽔電解の重要性が⾼まっています。

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出典:経済産業省 第1回 水素保安戦略の策定に係る検討会 2022.8.5

■⽔素分野における戦略等の策定状況・各種⽬標

⽇本は世界で初めての⽔素基本戦略を2017年12⽉に策定しています。EU、ドイツ、オランダなど各国も、昨年以降、⽔素戦略策定の動きが加速化するなど、⽔素関連の取組を強化しています。

2020年10⽉の菅総理(当時)のCN宣⾔を受け、グリーン成⻑戦略でも重点分野の⼀つに位置づけており、需給⼀体での取組により、導⼊量の拡⼤と供給コストの低減を⽬指しています。

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出典:経済産業省 第1回 水素保安戦略の策定に係る検討会 2022.8.5

■水素サプライチェーンの構築に向けて

商⽤サプライチェーンが⽴ち上がる中、スピード感ある予⾒可能性の⾼い制度整備が必要となっています。

以下の図は、製造、輸送・貯蔵、利用のカテゴリで時間軸での実現イメージも掲載しています。

水素サプライチェーンの観点からは、液化水素では、、2030年までに商⽤⼤規模サプライチェーンを構築すべく、船舶や貯蔵タンクの⼤型化など
を進めています。

メチルシクロヘキサン(MCH)では、2030年商⽤⼤規模サプライチェーンの構築に向けて、より安価な供給価格を実現するため、製油所の既存設備等を活⽤した脱⽔素技術開発を進めています。

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出典:経済産業省 第1回 水素保安戦略の策定に係る検討会 2022.8.5

■⼤規模サプライチェーン構築に向けた課題と政策の⽅向性

経済産業省では、⼤規模サプライチェーン構築に向けた課題と政策の⽅向性として、

・供給者(エネルギー会社)の事業安定性確保の必要性
・需要家による⼤規模・安定調達の躊躇
・政策の⽅向性と期待される政策効果

の3つの観点から、示しています。

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出典:経済産業省 第1回 水素保安戦略の策定に係る検討会 2022.8.5

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