DX推進に必要な5つの役割
ガートナージャパンは2020年8月18日、「デジタル・トランスフォーメーション (DX) の推進に必要となる5つの役割」を発表しました。
DXに取り組む日本企業が増える中、DXを推進するCIOの多くが「DX人材」「デジタル人材」の確保に苦心しています。実際にGartnerが2021年7月に開催したウェビナーでは、必要とする人材や育成方法に特に課題があると多くが回答しています。
ガートナーでは、もともと日本の企業では、経営トップの掛け声とともにDXを推し進める傾向があり、見切り発車であるため、どのような人材が必要かが分からない。必要な人材が分からないため、育成しようとしてもうまくいかない、という悪循環に陥っていると指摘しています。
そのため、DXを成功させるためには、いったん立ち止まって必要な人材を明らかにし、最適な育成方法を考えていく必要性を示しています。
ガートナーでは、CIOやITリーダーがDXを推進する際に、以下の5つの役割が必要であると提言しています。
1) ビジネス系プロデューサー (ビジネス・アーキテクト):
DXによるビジネス・ゴールを定義し、新たなビジネス・モデルを考えたり、DXに関する企画を考えたりする役割を担う。経営層や社内外の意思決定者とのビジネス面でのコミュニケーションにも責任を持つ。
2) テクノロジ系プロデューサー (テクノロジ・アーキテクト):
ビジネス・ゴールの達成に向けた最適なデジタル・テクノロジの特定やテクノロジの適用によるシステム面の影響の分析、予測などを担う。経営層や社内外のエコシステムのパートナーに対する技術面のコミュニケーションにも責任を持つ。
3)テクノロジスト (エンジニア):
現場で実際にテクノロジを活用する役割を担う。自動化、データ・サイエンス、モノのインターネット (IoT)、人工知能 (AI) などの新興領域に注目しがちだが、確実にDXを推進していくためには、通信ネットワーク、IT基盤、セキュリティ、クラウドなどの既存の領域の役割も重要である。テクノロジストもまた、全従業員が対象となる。
4)デザイナー:
ソリューション、サービス、アプリケーションのユーザー・エクスペリエンス (UX) をデザインする。UX面のコミュニケーション、UXとデザインに関する知識の社内普及に向けた教育なども行う。
5)チェンジ・リーダー:
デジタル・テクノロジの導入に伴う働き方 (業務、意識など) のシフトの主導、変革の目的やゴールの整理、変革のコミュニケーション計画の作成、関係者全員を巻き込んだ意識と行動変容に向けた施策の計画/展開などを担う。
ガートナーでは、日本のDX人材の議論では、チェンジ・マネジメントの重要性が見落とされ、チェンジ・リーダーについても見過ごされがちです。チェンジ・リーダーを立てることは、社内のDXをスケールアウトするための重要なポイントです。チェンジ・リーダーは必ず社内のメンバーで担い、DXを推進する専門部署や経営企画などを中心に、社内全体に配置するのが望ましい、としています。
また、ガートナーでは、1つの役割を1人もしくは2つの役割を1人で担うところから計画を進めることが、地に足の着いたDX人材の育成につながる、としています。
また、ガートナーでは、
GartnerはDX人材に求められる知識/スキル/コンピテンシとして、
「意識 (マインドセット)」 (「協調性」「決断力」「学習志向」「リスク・テイク」「ダイバーシティ/エクイティ/インクルージョン」)
「デジタル・イノベーション」
「IT」
「ビジネス」
の4つの分野をあげています。
ガートナーでは、企業は自社のDX戦略に合わせてどのような能力がどの程度必要か、自社にとって特に重視する能力を見極めてバランスを考えることが重要であると指摘しています。育成においても、すべてに秀でている人材を育てるのは現実的ではなく、DX戦略とゴールを明確化した上で、自社の目的にあった人材を育てることをゴールに据えると、候補者を選定しやすく、効果的な人材育成を短期間で実行できるようになると、しています。
企業におけるDX推進は、どういう目的をもって、どう人材を育成していくか、というのが大きなテーマとなっていくでしょう。