人生100年時代、70歳までのどのように就業機会を確保していくのか
政府は2019年5月15日、「未来投資会議(第27回)」を開催し、高齢者雇用促進及び中途採用・経験者採用の促進について、議論検討を行っています。
この中から、「70歳までの就業機会確保」についてとりあげたいと思います。
第198回国会安倍内閣総理大臣施政方針演説では、
人生百年時代の到来は、大きなチャンスです。元気で意欲ある高齢者の方々に、その経験や知恵を社会で発揮していただくことができれば、日本はまだまだ成長できる。生涯現役の社会に向かって、六十五歳まで継続雇用することとしている現行制度を見直し、七十歳まで就労機会を確保できるよう、この夏までに計画を策定し、実行に移します。
と述べられています。
人生100年時代を迎え、働く意欲がある高齢者がその能力を十分に発揮できるよう、高齢者の活躍の場を整備することが必要であるとし、高齢者の雇用・就業機会を確保していくには70歳までの就業機会の確保を図りつつ、65歳までと異なり、それぞれの高齢者の特性に応じた活躍のため、とりうる選択肢を広げる必要があるとしています。
このため、65歳から70歳までの就業機会確保については、多様な選択肢を法制度上許容し、当該企業としてはそのうちどのような選択肢を用意するか労使で話し合う仕組み、また、当該個人にどの選択肢を適用するか、企業が当該個人と相談し、選択ができるような仕組みを検討する必要性を示しています。
法制度上許容する選択肢のイメージは、
① 定年廃止
② 70歳までの定年延長
③ 継続雇用制度導入(現行65歳までの制度と同様、子会社・関連会社での継続雇用を含む)
④ 他の企業(子会社・関連会社以外の企業)への再就職の実現
⑤ 個人とのフリーランス契約への資金提供
⑥ 個人の起業支援
⑦ 個人の社会貢献活動参加への資金提供
が想定しうるとし、 企業は①から⑦の中から当該企業で採用するものを労使で話し合うとしています。
出所:未来投資会議(第27回) 2019.5
70歳までの就業機会の確保を円滑に進めるためには、法制についても、二段階に分けて、まず、第一段階の法制の整備を図ることが適切であるとしています。
第一段階の法制については、
① 法制度上、上記の①~⑦といった選択肢を明示した上で、70歳までの雇用確保の努力規定とする。
② 必要があると認める場合は、厚生労働大臣が、事業主に対して、個社労使で計画を策定するよう求め、計画策定については履行確保を求める。
の2点をあげ、その上で、第一段階の雇用確保の実態の進捗を踏まえて、第二段階として、多様な選択肢のいずれかについて、現行法のような企業名公表による担保(いわゆる義務化)のための法改正を検討するとしています。
70歳までの就業機会の確保に伴い、年金支給開始年齢の引上げは行わない一方で、年金受給開始年齢を自分で選択できる範囲(現在は70歳まで選択可)は拡大するとしています。
手続き的には、今夏の工程表付きの実行計画に上記方針を盛り込む。さらに、労働政策審議会における審議を経て、2020年の通常国会において、第一段階の法案提出を目指しています。
高齢者の活躍を促進する環境整備では、企業への支援、労働市場の整備、労働者本人への支援、地域の取り組みへの支援をあげています。
未来投資会議(第27回)