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IoT 化・デジタル化のデータ流通量増大における電気通信分野における変化の現状

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総務省は2019年1月21日、「プラットフォームサービスに関する研究会(第5回)」を開催し、プラットフォームサービスに関する研究会 主要論点(案)などについて、議論・検討を行っています。

本論点(案)から、「第2節 IoT 化・デジタル化の進展に伴う電気通信分野における変化の現状」を中心にピックアップしたいと思います。

第2節 IoT 化・デジタル化の進展に伴う電気通信分野における変化の現状

1.利用者情報を始めとするデータの流通量の飛躍的増大

○ 近年の AI や IoT 化、デジタル化の進展によるサイバー空間とフィジカル空間の融合の加速化に伴い、様々な事象のデータ化により大量かつ多様なデータが生成・集積され、データ流通がグローバル規模で飛躍的に増大している。スマートフォン、タブレット端末の急速な普及と利活用の拡大、HD(高精細)映像などの高品質・リッチコンテンツの流通がデータ流通量の増大に寄与し、さらに今後の超高速・広帯域の 5G の実現などブロードバンドネットワークの拡大により利用できるサービスが多様化することから、その利用者の更なる拡大が見込まれる。

○ 様々なヒト・モノ・組織がネットワークに繋がるようになれば、多くの分野や業種においてモノとモノとの間のデータのやりとり(いわゆるM2M(Machine-to-Machine)通信)が飛躍的に増加するのみならず、利用者情報の流通も増大することが想定される。

○ なお、特にプラットフォームサービスにおいては膨大な利用者情報が集積されるが、昨今、国外に拠点を置いてグローバルにプラットフォームサービスを提供する事業者による利用者情報の大量流出事案が相次いでいる。また、そうした状況において、我が国の利用者の利用者情報の取扱いや被害状況の詳細が必ずしも明らかにされない等により、ユーザの懸念が高まっている。また、サイバー攻撃に伴う利用者情報の漏えいリスクへの懸念も高まっている。

2.産業・ビジネスのレイヤ構造化を始めとする市場構造の変化

(1)レイヤ構造化によるプラットフォームのプレゼンスの増大

○ 近時、デジタル化の急速な進展に伴ってもたらされる、モジュール化、ソフトウェア化、ネットワーク化により、企画・調達・製造・販売といった各業務・工程が連鎖的に繋がり、最終的な価値を生み出す既存のバリューチェーン構造からバリューチェーンを構成する各要素の分離が進み、業種の垣根を越えた連携や統合の進展等によるレイヤ構造化を始め市場構造が変化している。

○ こうした状況の下、業種横断的なプラットフォーム領域を形成し、アプリケーション等の様々なサービスを提供するサプライヤー及びそれらのサービスを享受するユーザの双方が利用する基盤を提供するプラットフォーム事業者が市場プレゼンスを増大させるようになっている 。

○ プラットフォームサービス・ビジネスの例としては、オンライン上におけるシェアリングエコノミー型のサービス、検索サービス、SNS、動画配信、ショッピングモール、アプリストア、オークションやフリーマーケットなどの消費者参加型の e コマース(電子商取引)等が挙げられる。

○ プラットフォームを通じたこれらのサービスの提供形態は、提供するサービスの内容等に応じて、水平統合、垂直統合若しくは垂直分離又はそれらの混合形態など、多様な形態が窺えるものとなっており、一律にプラットフォームサービスの提供形態を論じることはできないが、今後も ICT の進化によってレイヤ構造化が進展すると考えられることから、プラットフォームサービスはイノベーションを促進する存在として、また、社会基盤として、今後さらに重要な役割を果たしていくと予想される。

(2)電気通信サービス・機能とプラットフォームサービス・機能の一体的な提供形態の普及・拡大

○ プラットフォーム事業者の提供するサービスを見ると、ヒトやモノの間のコミュニケーションを可能とする機能を提供するものが多くあり(電気通信事業法に根拠を持つ、従来からの電気通信役務と整理できるサービスの場合や、電気通信事業として整理ができないものの、外形的には電気通信役務に類似したサービス又はそれらの混合形態の場合などがあり、複雑な態様となっていることが多い。)、こうした電気通信サービス・機能とプラットフォームサービス・機能を一体的に提供する形態のビジネス・サービスは今後とも拡大・普及が進んでいくものと考えられる。

○ また今後、電気通信分野において提供される通信サービス自体も、デジタル化の進展と相俟って AI や IoT などの最新技術を駆使したものに変遷・進化していくと考えられるとともに、通信ネットワークにおける仮想化技術の進展により、その提供形態についても、電気通信設備(ハード)と機能(ソフト)を分離した形でのビジネスモデルへと変化していくことが想定される。そして、それに伴い新たなスタイルを有するプレイヤが登場することも考えられる。すなわち、通信サービスの提供主体の質・量がともに変貌し、既存のスタイルに囚われない電気通信事業者の登場や電気通信事業者とプラットフォーム事業者との協業や連携・融合が進み、市場環境が一変することも想定される。

3.グローバルなプラットフォーム事業者の台頭に伴う、利用者情報のグローバルな流通の進展

○ プラットフォームは、ネットワークとコンテンツやアプリケーションとの間を繋ぐ共通的な機能を有することから、垂直統合する場合と比較してコンテンツやアプリケーションを機動的に提供できる。このため、ネットワーク効果(利用者が増加すればするほどサービスの価値が高まる経済原理)が働き、コンテンツやアプリケーションが多様となることに伴い利用者数が増加し、その結果、サービス価値がより増加するとのシナジーが生まれることとなる。

○ こうしたプラットフォーム機能の特徴から、プラットフォーム事業者は国境を越えてグローバルにビジネスを展開し、より多くのユーザを対象とすることで、より多くの成功を収めることが可能となっており、我が国においても、こうした国外のグローバルプラットフォーム事業者のプレゼンスが大きくなっている。

○ グローバルなプラットフォーム事業者は、グローバルな規模で利用者情報を始めとする大量のデータを取得・利用することが可能となることから、こうした国境を越えたデータ流通の拡大を背景にして、諸外国においても、利用者情報の適切な取扱いに係るルールの整備や議論が行われている。

4.利用者情報の取得・活用に対する、サービス提供者のニーズの高まり

(1)利用者情報の取得・活用のインセンティブ

○ ICT の進展と市場環境の変化により、斬新で革新的なサービスを利用者が享受できるようになる一方で、プラットフォーム事業者を含む電気通信分野におけるサービス提供者は、より付加価値の高いサービスを利用者に提供するために、利用者情報をより積極的に取得し、かつ、活用しようとするインセンティブが働くことが考えられる。

○ 例えば、検索連動型広告に見られるように、プラットフォーム上では、利用者は無料でサービスを利用できる一方、企業は広告料を支払うことにより利用者に対し自社の商品を PR するといった両面市場(Two sided market)のモデルが適用されることにより、サービス提供者が利用者情報を取得し、かつ、活用するインセンティブが働きやすい。

(2)利用者情報の取得・活用に係る利用者保護の必要性

○ このような利用者情報の取得・活用が新たなサービスを生み出し、利用者に最適なサービスを提供するとのスパイラルの中で、利用者はサービスに魅力を感じ、サービス規約に同意し、併せてプラットフォーム事業者による利用者情報の取得・活用にも同意することとなるが、前述のとおりサービス提供者にはできるだけ利用者情報の取得・活用の同意を得ようとするインセンティブが働くことが考えられることから、利用者の保護の観点から、同意取得に当たっては、サービス提供者から利用者に対して、取得する利用者情報の種類や利用方法等についてわかりやすい説明が行われるよう確保することがより一層重要となる。

○ また、利用者情報を活用したビジネス・サービスの提供に当たっては、データの寡占化によるロックイン(囲い込み)により、利用者の選択肢が狭められる可能性も考えられる。すなわち、近時のブロードバンド化やスマートフォンの急速な普及等を背景に、クラウド上のサービスが進展し、クラウド上にデータが集約されやすい構造となり、また、AI の更なる進展により質の高いデータセットの確保が競争優位性を左右する状況が生じており、プラットフォーム機能と不可分となっている。さらに、サイバー空間とフィジカル空間が融合する中で、リアルの世界でも利用者情報等のデータを集約する能力を持つプラットフォーム事業者がサービス面でも優位になる市場構造が形成されつつある。

○ こうしたデータ寡占によるロックイン効果の結果、電気通信分野において適切な競争が行われない、利用者にとって質の高いサービスが中長期的に提供されない、又は質の高いサービスの選択肢が与えられないなどの懸念が生じ得る。その場合、適切なデータ流通・利活用によるイノベーションの促進が阻害されるおそれがあるほか、更なるデータの集中・データの支配などのデータ寡占が進展すれば、電気通信分野における市場環境にも影響が及ぶこととなる。

5.パーソナルデータ提供等に係る利用者意識の変化

(1)パーソナルデータ提供に関する利用者の不安感の高まり

○ 総務省の「安全・安心なデータ流通・利活用に関する調査研究」(平成 29 年)によれば、パーソナルデータの提供について「不安を感じる」という回答の割合は、日本、中国及び韓国のアジア3か国で7割超となっているのに対し、米国、英国及び独国の欧米3ヶ国は6割程度で明確な差があり、我が国の利用者は「とても不安を感じる」割合が他国と比べて高い。

○ また、6か国共通で提供に強い不安感があるデータは、「口座情報」、「公的な個人識別番号」、「生体情報」、「位置情報、行動履歴」となっている。特に、アジア3か国では、基本情報である「氏名、住所」、「連絡先」及び「生年月日」が欧米3か国に比べて警戒心が強く、我が国では、「Web サイトへのアクセス履歴」の提供に対する不安感が6か国の中で最も高い 。

(2)プラットフォーム事業者の情報管理態勢に対するユーザの懸念

○ 利用者はプラットフォームを介して多様なサービスを享受することができる反面、プラットフォーム事業者は膨大な利用者情報を取得・利用しており、特に昨今、国外に拠点を置いてグローバルにプラットフォームサービスを提供する事業者による利用者情報の大量流出事案が相次いでいるが、そうした状況において、我が国の利用者の利用者情報の取扱いや被害状況の詳細が必ずしも明らかにされない等により、ユーザの懸念が高まっている。

○ こうした「ブラックボックス化している」とも言われる利用者情報の利用メカニズムや大量流出事案が相次いでいる現状に鑑みれば、プラットフォーム事業者の情報管理態勢への不信感は払拭されているとは言い難い。

(3)いわゆる「同意疲れ」

○ 一方、利用者情報の取得が増えるにつれて、累次の同意が繰り返される結果、利用者情報取得の同意に対する利用者の抵抗感が希薄となっていく局面も想定される。通信の秘密に係る利用者情報の取扱いについて有効な同意と言えるためには、従来原則として「個別具体的かつ明確な同意」が必要とされているが、あまりに多くの同意取得手続きが繰り返されることで、かえって利用者が十分に理解しないままに同意をしてしまう、いわゆる「同意疲れ」の問題が今後大きくなっていくことが予想される。

○ なお、これに関連して、例えば、現下の市場では利用者情報が集積される場合には、その都度それを示すアイコンを表示する機能をデバイスに具備させることにより、利用者に明示的に注意喚起を行うプライバシー・バイ・デザインを志向する動きもある。

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