「オープン型の電子レシート」とは?
経済産業省は2018年5月11日、「「購買履歴データの管理・利活用の在り方に関する検討会」報告書を取りまとめ」を公表しました。
購買履歴データは、誰が、いつ、どこで、何を買ったのかを示す、非常に有用な情報です。他方、多くの場合、購買履歴データは事業者ごとに分断して管理されているため、各事業者のデータを統合し、特定の個人が様々な店舗で買い回りをしたことを示す購買履歴データを生成することは困難となっています。
本事業では「電子レシート」に注目し、各店舗から発行される買物レシートを標準仕様で電子化し、個人に蓄積することで、当該個人が起点となって、様々な店舗から発行される電子レシートを統合管理することが可能となり、電子レシートの可能性と標準化の意義についての方向性を示しています。
購買履歴データ活用に関する3類型では、
・単独活用 (自社商品の販売)
・プラットフォームを用いたデータ集約と活用 (小売事業者との連携)
・個人が起点となるデータ集約と活用 (ユーザー向けサービスによる購買履歴データの蓄積)
があり、それぞれの事例を紹介しています(本ブログでは割愛します)
また、購買履歴データの集約・活用の3類型に収まりきらない、アリババグループなどに代表される「デジタルジャイアント」と呼ばれる事業者が出現しており、EC等から構築したプラットフォームでPOSデータや注文履歴を集約するだけでなく、リアル店舗、スマート決済、クラウドサービスなどを通じて生活者との様々なインターフェースを設けるとともに、数々のユーザーサービスの提供を通じて、自社プラットフォームへの参加者とその頻度を増やすことによって、より多くのビッグデータが集まる仕組みを創っています。
これにより、ビッグデータの活用によりサービスが拡充され、サービスの拡充によりプラットフォームへの参加者とその頻度が増え、データのトランザクションが増えることでビッグデータの活用範囲と精度があがり、経済圏がより強固になるという循環が形成されている動きを紹介しています。
本検討会では、
1. 多くの場合、各社で個別にデータを囲い込んでいるため、限定された購買情報から生活者を想定することが必要。結果、正確な生活者理解は困難。
2. プラットフォーム等を通じて部分的に購買履歴データが流通するが、データフォーマットや商品分類などがバラバラで、データクレンジングに時間及び費用を要する。
3. 個人を起点にして流通する購買履歴データもあるが、紙のレシートを読み取る工程が必要であり、普及が難しい。
4. 諸外国では膨大な購買履歴データを一社で保有している企業が存在する一方、現時点では、日本には「デジタルジャイアント」は存在しない。さらに、欧州のようにデータポータビリティー権を整備するまでの意識が社会的に醸成されていない。
という背景から、
日本において目指すべき購買履歴データの活用モデル検討の必要性を示しています。
日本における購買履歴データ流通の在り方の一つに、複数の企業がアライアンスを組み、その中で購買履歴データを流通させて顧客サービス等に活用する「アライアンス型」のデータ流通モデルの必要性も示しています。
もう一つは、生活者の判断で好きなアプリと連携可能な生活者の判断で自由に購買履歴データ等が流通し、当該データを用いて新しいサービスが次々と創出されるエコシステムが構築される「オープン型の電子レシート」のモデルです。
出所:「購買履歴データの管理・利活用の在り方に関する検討会」報告書 2018.5
本モデルのメリットは、企業にとっては、個人から許諾を得られれば、当該個人の詳細な買い回りデータを取得することができ、より詳細な生活者理解が可能であり、個人起点で様々な購買履歴データが流通することで、アプリベンダーやマーケティング会社が自発的にデータ解析を行い、新たなビジネスモデルを提案されやすい環境ができるといった点をあげています。
ユーザにとっては、正確な生活者理解に基づくサービスが受けられ。自身の判断で自身の購買履歴を提供することができ、その対価としてサービスを受けることができるといったメリットも紹介しています。
その一方で短所としては、個人を起点に様々な購買履歴データが流通するため、データ利活用に適合した事業運営を行うことが求められる点をあげています。