平成27年版情報通信白書(2):コネクテッドカーと自動走行車
総務省は2015年7月28日、「平成27年版情報通信白書」を公表しました。
今回は、コネクテッドカーと自動走行車についてとりあげたいと思います。
コネクテッドカーとは、
ICT端末としての機能を有する自動車のことであり、車両の状態や周囲の道路状況などの様々なデータをセンサーにより取得し、ネットワークを介して集積・分析することで、新たな価値を生み出すことが期待されている。具体的には、事故時に自動的に緊急通報を行うシステムや、走行実績に応じて保険料が変動するテレマティクス保険、盗難時に車両の位置を追跡するシステム等が実用化されつつある。
としています。
コネクテッドカーへの注目の背景には、
- 無線通信の高速・大容量化により、リアルタイムかつ容量の大きなデータを送受信可能になったこと
- 車載情報通信端末の低廉化や同等アプリケーションを搭載したスマートフォン等による代替化が進んでいること
- クラウド・コンピューティングの普及により、データの迅速かつ大容量な生成・流通・蓄積・分析・活用が可能となり、ビッグデータの流通が大幅に増加してきたこと
の3つがあげられています。
コネクテッドカーの実現するサービスには、
(ア)緊急通報システム
自動車事故によって失われる人命を減らすことを目的として、自動車事故発生時に自動で警察や消防などの緊急対応機関に緊急通報を行うシステムの導入が各国で進みつつある。欧州では、緊急通報システム「eCall」システムの普及が進んでおり、2018年4月からはeCallシステムの新型車への搭載が義務化される5(図表4-1-2-2)。また、ロシアでも、eCallと類似した緊急通報システム「ERA-GLONASS」の導入が進められており、2017年1月から、ロシアで販売されるすべての新型車への搭載が義務化される。
出所:総務省「社会課題解決のための新たなICTサービス・技術への人々の意識に関する調査研究」(平成27年)イ)テレマティクス保険
欧米の保険会社は、利用者の運転中の行動(ブレーキの回数や加減速動作など)や時間帯を収集し、利用者の運転行動・振る舞い(How)に基づき運転の危険度を評価し、保険料を策定するPHYD(Pay How You Drive)を提供している。たとえば、Progressive、State Farm、National General Insuranceといった米国企業は、走行距離、速度、時間帯等を記録し、運転行動・振る舞いに応じて保険料を算定している。一方、CISやInsure the boxといった英国企業は、上記に加えてGPSを活用した位置情報等を収集することで、制限速度超過、危険の多い道路の走行割合などを含めて保険料を策定しているウ)盗難車両追跡システム
盗難車両追跡システムとは、車両の盗難が判明した場合に車両の位置を追跡することができるシステムである。GMが1996年より提供しているテレマティクスシステム「OnStar」には盗難車両の追跡機能が搭載されており、2007年には遠隔操作により緩やかに速度減速を行う機能が追加されている。また、国内ではトヨタ自動車が2002年より提供しているテレマティクスサービス「G-BOOK」に盗難車両抑止システムを搭載しており、契約者の要望に基づきトヨタスマートセンターで盗難車両の位置を追跡することができる。その他、一部の車両には通信でエンジンの始動をできなくするリモートイモビライザーを搭載する等、車両盗難抑止に力を入れている。これらの機能は、2014年夏に一新された新世代テレマティクスサービス「T-Connect」にも継承している
の3つをあげています。
自動走行車は、
車内外の環境・状況を計測するセンシングや情報通信・車体制御等の技術を組み合わせ、運転者が直接操作することなく、行き先の指示等に基づき、自動車自身が道路状況に合わせて安全に目的地へ向かうオートノマスカー(自動走行車)
と説明しています。
自動走行車が注目されている背景には、
- 車内外の走行環境をモニタリングできるセンサーデバイスの廉価化が進んでいること
- インターネット通信が可能なコネクテッドカーが普及したことにより、計測された車内外の環境・状況が自動走行の判断に必要な情報として取得・蓄積されるようになったこと
- センサーデバイスから取得した情報を処理し、クルマの進路変更や障害物の回避など知的な情報処理を行うAI(人工知能)が進展していること
の3点があげられています。
自動走行車では、トヨタ自動車、本田技研工業、日産自動車、アウディ、ダイムラー、グーグルなどの取組みが紹介されています。