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ロボット白書2014(4)ロボットミドルウェアとロボットOS、ロボットシミュレーションの進展

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ロボット白書2014の「1. ロボットについて」のシステム化技術の内容を元に、ロボットミドルウェアとロボットOS、ロボットシミュレーションについてまとめてみたいと思います。

ロボットは、「移動技術」、「環境知能化技術」、「認識処理技術」、「センシング技術」、「制御技術」、「人工知能」、「リアルタイム技術」など、さまざまな技術要素があり、これらの技術要素を統合し、ユーザニーズや目的に応じたロボットシステムを構築してくいくことが求められています。

従来のロボット開発は、スクラップアンドビルドにより開発されていたため、必ずしも効率がよくなく高コスト構造となっていましたが、ロボットのシステム化を進めるための手法に、モジュール化とシミュレータを用いたオフライン開発が進んでおり、それらを支援するOpenRTM-aist(open source robotic technology middleware)に代表される再利用性の高いロボットミドルウェアが登場しています。

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http://www.openrtm.org/

ロボットコンポーネントのオブジェクトモデル仕様には、OMG(Object Management Group)が標準仕様となっており、ロボットに関する多くのコンポーネントが開発されています。

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http://www.omg.org/

OpenRTC-aistに公開されているパッケージには、平成17年度から平成22年度まで実施された「次世代ロボット知能化技術開発プロジェクト」の成果であるロボット知能化モジュール群(NEDO-RTCs)の中から、ロボットの基本機能ごとに「作業知能モジュール群」、「移動知能モジュール群」、「コミュニケーション知能モジュール群」として知能化モジュールを機能毎に整理してパッケージ化し、これらのコンポーネントを活用することで素早くシステムを開発できます。これらのコンポーネントの多くはオープンソースとしてソースコードも公開されており、カスタマイズにより機能も拡張することができます。

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http://openrtc.org/

ロボットコンポーネントの他に、海外ではシリコンバレーに本社を置く米Willow Garage社が開発し、ORSF「オープンソース・ロボット開発財団(Open Source Robotics Foundation) 」が維持管理する無償提供ソフトのROS(ロボット・オペレーティング・システム)が普及しつつあります。

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http://osrfoundation.org/

多くのロボット分野のソフトウェアがROS上で開発され、世界各地で開発コミュニティが立ち上がるなどのソフトウェア開発ブームが起こっています。ロボット上で動く様々なソフトウェアやアプリが提供さるようになり、ROSを中心としたロボット・エコシステムも形成されつつあります。

日本でもROSの取り組みが始まっています。ソフトバンクが発表した19万8000円という手頃な価格体系で2015年2月から一般販売の開始予定の世界初の感情を持つパーソナルロボット「Pepper」の発表は、大きな話題を呼んでいます。

「Pepper」の大きな特徴は、人間の感情や声などから感情を数値化し自律的に学習する「感情エンジン」の搭載と、インターネットで接続された「クラウドAI」の機能を持っている点です。「クラウドAI」を通じて、学習結果をデータベース化しフィードバックすることで、成長・進化させていくことが可能となります。

「Pepper」の進展に欠かせないのがROSの存在です。ソフトバンクの100%子会社のアスラテックは2014年6月11日、ロボット全体の動きを制御・管理するソフトウェア「V-Sido OS」とV-Sido OSの一部機能を1枚の基板に実装したマイコンボード「V-Sido CONNECT」を主軸とした事業戦略を発表しました。基本的なコンセプトは「人とロボットをつなぐOS」です。

「V-Sido OS」を通じて制御機能やAIとの動作させるようになり、ロボットのハードウェアと連携させることで、ロボットの大きさや構造が異なるさまざまなタイプのロボットへも展開が可能となります。

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出所:アステック新規ロボット事業発表会資料 2014.6.11

また、RTM-ROS 相互運用プロジェクトである「rtm-ros-robotics」に代表されるようにロボットミドルウェアとROSの相互接続も可能になり、ロボットの開発環境も向上しています。

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https://code.google.com/p/rtm-ros-robotics/

そのほか、ロボットの開発を支援するツールには、シュミレーターが欠かせません。

ロボットのソフトウェア開発・シミュレーションのための 統合ソフトウェアプラットフォームOpenHRP3 (Open-architecture Human-centered Robotics Platform version 3)は、独自のロボットモデルと制御プログラムを動力学シミュレーションで検証でき、ロボットのソ フトウェア開発に活用可能な各種のソフトウェアコンポーネントと計算ライブラリも利用できます。


出所:OpenHRP3実行画面

Webotもロボット開発のためのシュミレータです。


出所:http://www.cyberbotics.com/overview

Gazeboもシュミレーションソフトです。

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http://gazebosim.org/

日本でも今年の6月に「第1回ROS勉強会発表資料 ROS+Gazeboではじめるロボットシミュレーション」というGazeboの勉強会が開催されています。

 
ロボットOSをベースにミドルウェアとシュミレータと連携することで、さまざまなロボットのソフトウェア開発や応用などが期待されるところです。

 

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