健康寿命延伸産業分野における新事業活動のガイドラインと健康管理に関わるデータ分析
経済産業省は2014年3月31日、「産業競争力の強化に関する実行計画」(平成26年1月24日閣議決定)に基づき、産業競争力強化法(1月20日施行)の「グレーゾーン解消制度」の運用に関し、健康寿命延伸産業分野における新事業活動について、事業者ニーズが高い事業を類型化した「ガイドライン」の策定を公表しました(報道発表資料)。
ガイドラインの概要については、以下のとおり整理しています。
産業競争力強化法第9条において、新事業活動を実施しようとする者は、主務大臣に対して、事業活動に関する規制法の解釈及びに事業活動に対する当該規制法の適用の有無について確認することができると規定しています。(グレーゾーン解消制度)
特に医療・介護分野と関係の深い「健康寿命延伸産業」においては、事業者が関連の事業を適切に実施できるよう、参考となる基本的な法令解釈や留意事項を、事業者のニーズが高い事業について類型化し、ガイドラインとしてまとめました。
今後、新事業活動を行う際に、本ガイドラインを参考にしていただき、加えて、それぞれに内容が異なる個別事業の適法性の確認については、上記グレーゾーン解消制度も併せて活用されることになります。
なお、本ガイドラインは、今後のグレーゾーン解消制度への申請状況等を鑑みて、必要に応じて随時改訂することとします。
本ガイドラインに記載されている5類型として、以下の5つをあげています。
1.医師が出す運動又は栄養に関する指導・助言に基づき、民間事業者が運動指導又は栄養指導を行うケース
2.医療法人が、配食等を通じた病院食の提供を行うケース
3.簡易な検査(測定)を行うケース
4.被用者保険の保険者やその委託を受けた分析会社が、レセプトデータの分析等を通じて健康保険加入者の健康状態を分析し、被保険者の健康増進等に関する取組を実施するケース
5.民間事業者、医療機関、社会福祉法人、自治体等が連携して複合的な生活支援サービスを提供するケース
5つの類型の中で、ITに関わる部分の「4.健康管理等に資するレセプトデータ等の分析」に焦点をあててみたいと思います。
主な取り組み内容として
保険者等が、あらかじめ、被保険者等の同意を得て、レセプト・健診データを分析し、その結果に基づく「要受診」や「要保健指導」等の情報を、被保険者が所属する企業にも共有し、企業と保険者等が共同して、被保険者の健康増進等に関する取組を実施すること
としています。
医療分野においては、病院になってから治療するのではなく、医療費用の負担軽減に向けて、病気にならないように予防するという取り組みに大きく転換していく必要があり、これらの予防医療に向けた取り組みの一つにデータ活用も重要となっているでしょう。
確認事項(保険者又は民間事業者)として
・共有される情報の内容、共有先、利用目的等について、あらかじめ、被保険者等の同意を得ていること(個人情報保護法第23条に規定される情報の第三者への提供制限に抵触しないこと)
・提供される情報が、保健事業に必要な最低限の情報(医療機関への受診の有無など)に限定されていること
をあげています。
利用イメージは以下のとおりとなっています。
出所:健康寿命延伸産業分野におけるガイドライン(概要) 経済産業省 2014.3.31
厚生労働省が発表した「国民医療費の概況」によると、2010年度の国民医療費は37兆4202億円となっており、前年度の36兆67億円に比べ1兆4135億円から3.9%の増加となっています。人口一人当たりの国民医療費は29万2200円で、前年度の28万2400円に比べ3.5%増加しています。
国民医療費の国内総生産(GDP)に対する比率は7.81%(前年度7.60%)、国民所得(NI)に対する比率は10.71%(前年度10.51%)となっているように、高齢化がさらに進めば、さらに医療費は増えていくことになるでしょう。医療費が伸び続けることになれば、社会保障財政にさらなる大きな打撃となり、医療費抑制のための対応をしていくことが大きな課題となります。
こういったガイドラインに基づき、民間事業者においても、地域に応じた医療サービスや介護サービスを提供し、健康寿命延伸とともに、医療や介護サービスの向上と医療費抑制、さらには健康寿命延伸産業分野のビジネスの成長へとつながっていくことが期待されるところです。