オープンデータのビジネス展開の今後
経済産業省は2014年3月6日、「第2回 IT融合フォーラム 公共データワーキンググループ」を開催しました。経済産業省からは「オープンデータのビジネス展開に向けて」というテーマで資料を公開しています。
政府や自治体などが公開するオープンデータも進みつつあり、今後は、オープンデータを活用しいかにビジネスにつなげていくかが一つの大きなテーマとなっており、経済産業省が示すオープンデータのビジネス展開について少しまとめてみたいと思います。
オープンデータを公開する出だし側と、それらを利用する受け手側の双方の機会が高まっているのにかかわらず、国内においてはオープンデータを活用してビジネス化まで至った事例は極めて少ないとしています。
その理由として、これまでの取り組みの多くは、アイデアソンやハッカソンなどの社会課題の分析からソリューションの提供やアプリケーション開発で終わってしまい、ビジネス展開に必要な要素が適切に組み合わされていない点を指摘しています。
出所:第2回 IT融合フォーラム 公共データワーキンググループ 20143.6
一方、産業分野からは、付加価値のあるビッグデータや公共データなどを取り込む形でのビジネス展開のニーズが出てきており、まだあまり公開されていない価値の高いデータをオープン化していくことを有償化も含めて議論していく必要性を示しています。
出所:第2回 IT融合フォーラム 公共データワーキンググループ 20143.6
ビジネスに必要な要素を整理する手法として、Business Model Generationが、「ビジネス・モデル・キャンバス」を提唱しており、
①顧客セグメント
②価値提案
③チャンネル
④顧客との関係
⑤収益の流れ
⑥リソース
⑦主要活動
⑧パートナー
⑨コスト構造
の9つの構成要素に分けて整理しています。
オープンデータのビジネス展開に足りていないものとして、
課題①:パートナー
解決策を必要とする主体(自治体等)にリーチできず、 ビジネス化のクリティカルマスに到達しない点を指摘し、解決の方向性として、アプリなどを活用してサービスを行う主体との連携や情報提供主体との提携などをあげています。
課題②:コスト・収益モデル(経営人材)
技術のノウハウは揃っているものの、経営のノウハウが不足し、ハッカソンから昇華できない点や資金提供を受ける上でのビジネスプラン作成、マッチングの機会がない点を指摘しています。そのため、解決の方向性としては、経営人材・ファンドとのマッチング、成功事例のビジネスモデルの共有をあげています。
経済産業省では、今後のオープンデータのビジネス展開に向けたアプローチとして
①成功事例におけるビジネス化ノウハウの分析・共有
②サービスの担い手(パートナー)やファンドとのマッチング
の2つをあげています。
ビジネス化の事例では、図書館の蔵書や貸出状況をAPIで集約し、Webサービスとして提供する「カーリル」や農業分野でのデータ化を進める「アグリノート」などを紹介しています。
次に、サービスの担い手(パートナー)やファンドとのマッチングでは、英国のODI(Open Data Institute)による①選定企業への人材面、マッチング等の支援や、②公的機関や中小企業・起業者向けの包括的プログラムを実施などの事例を紹介しています。
特に、公的機関がオープンデータ化を行うための調達のための予算支援の「“Data Strategy Board Breakthrough Fund”(750万ポンド)」や、中小企業・起業者向けのオープンデータ関連イベントやコンペの実施を行う「“Open Data Immersion Programme”(85万ポンド) は、国内でも参考とすべき取り組みと考えられます。
出所:第2回 IT融合フォーラム 公共データワーキンググループ 20143.6
ODIの事業モデルは、ODIが主体となり、政府や民間ファンドからの資金援助や、起業人材に対する支援や、オープンデータ化の支援などを行い、それらを具体化するために、ハッカソンやコンペなどを開催しています。
出所:第2回 IT融合フォーラム 公共データワーキンググループ 20143.6
ODIの事業を通じて、初年度(2012年度)では、以下の4社が起業しています。
出所:第2回 IT融合フォーラム 公共データワーキンググループ 20143.6
2013年度以降は以下の5社となっています。
出所:第2回 IT融合フォーラム 公共データワーキンググループ 20143.6
経済産業省では、
・アイディアソンやハッカソンの成果が継承されず埋もれている。
・コンテスト等で受賞してもプログラマー個人の功績として残らない。
・ベンチャーキャピタルの前でプレゼンする機会や、社会起業家とつながる仕掛けがない。
・企業側もオープンデータを活用するニーズが高まっているが、プログラマーと対話できていない。
などの課題認識のもと、
オープンなナレッジ・バンクのような仕組みの必要性を提言しています。
民間が担い手となり、既存のデータベース等を連携統合し、アイディアやアプリケーションの一元検索を通じたマッチングを行うとともに、成功事例のノウハウを共有できる仕組みを作り、政府は投資家や自治体などの呼び込み、ビジネスコンペ等の働きかけを通じてマッチングを後押しできるような流れを示しています。
出所:第2回 IT融合フォーラム 公共データワーキンググループ 20143.6
2013年は国内各地でアイデアソンやハッカソンが開催され、オープンデータに対する政府や自治体、そして利用者側の機運は高まっています。今後は、オープンデータを活用した持続的なビジネスを展開していく上で、ナレッジ・バンクなどをはじめ、オープンデータビジネスを創造していくためのエコシステムを形成していくことが重要なアプローチとなっていくでしょう。