記録的な大雪などの災害時におけるオープンデータなどの活用について
2014年2月14日から15日にかけて、関東甲信、観測史上1位の記録的な大雪を記録しました。様々な情報が錯綜し、改めてデータの公開とデータを活用したサービスのあり方について、検討をしていく必要性が出ています。
今回は、災害時におけるオープンデータの活用に焦点をあて、整理してみたいと思います。
公共交通分野のオープンデータ活用について
大雪に伴い、東京都および関東周辺における公共交通分野の情報が混乱を極めました。これまでの政府や公共機関におけるオープンデータの公開に関する取り組みを進めています。
「情報流通連携基盤の公共交通分野における実証実験」は、2013年3月1日から3月29日まで行われた。鉄道やバスなどの運行情報や、駅・停留所などの複数の公共交通施設の標準API規格や共通のデータフォーマットによるオープンなプラットフォームとなる情報流通連携基盤システム上で相互に利用し、情報流通基盤の適用性の検証や、都市における公共交通の状況の可視化につなげることを目的として実証が行われました。
本実証では、横須賀テレコムリサーチパークが実証主体となり、JR東日本、東京都交通局、東京都地下鉄などが実験に協力しました。
本実証で実施した一つの「公共交通運行情報サービス(ドコシル)」は、東京23区内の都営バスや鉄道のリアルタイムな運行情報を情報流通連携基盤のAPIを利用して取得し表示することで、電車やバスの位置、遅延などの運行情報を地図上で可視化できます。
総務省の今回の実証事業をもとに、2013年8月19日、小田急電鉄㈱、京王電鉄㈱、京成電鉄㈱、京浜急行電鉄㈱、首都圏新都市鉄道㈱、西武鉄道㈱、東京急行電鉄㈱、東京地下鉄㈱、東京都交通局、東京臨海高速鉄道㈱、東武鉄道㈱、東日本旅客鉄道㈱、㈱ゆりかもめの13の公共交通事業者と日本空港ビルデング㈱、YRP ユビキタス・ネットワーキング研究所、東京大学の参加による「公共交通オープンデータ研究会」の発足を発表しました。総務省、国土交通省、東京都はオブザーバーとして参加し、2013年9月より本格稼働を開始しています。
研究会では、公共交通情報のオープンデータの実用化に向けて、データフォーマットやAPIなの提供により開発者が情報サービスを容易に提供できる環境を整備し、効率的かつ効果的な公共交通情報サービスモデルやビジネスモデルの実現に向けて検討をすすめ、現実の運行状況に即したリアルタイム型の運行情報の試行サービス実験の実施しています(ニュースリリース)。
本実証では、オープンデータ・アプリコンテスト用に、ドコシル2.0をGoogle PlayとApple Storeにアプリを公開しています。
https://play.google.com/store/apps/details?id=org.odpt.dokosil
データの取得にあたっては、API経由で公共交通機関の列車時刻表や在線情報、駅時刻表、運行情報などがRDFやXML、JSON-LDなどのデータ形式で取得することができます(公開サイト)。
これらの利用が実用レベルで提供されるようになれば、災害時における公共交通分野の情報の混乱も低減されることが期待されます。
その他の交通分野や施設情報などのオープンデータ化も
米国では、オープンデータカタログサイトの「Data.gov」では、主要航空会社の国内便の定時到着データのアクセスツールが多く利用されています。主要各社の運行情報などが、スマホアプリなどが一覧で可視化できるようになれば、より的確な行動ができるようになるかもしれません。
鯖江市では、コミュニティバスの「つつじバス」で「つつじバスロケーションWEB API」を公開しており、リアルタイムで運行情報を確認することができます。
その他、会津市などで公開している消火栓のデータや、鯖江市のトイレマップといったように、施設情報を一元的に公開し、災害時に備えるといったことも必要となるでしょう。
大雪被害により不通区間の残る甲信地方の豪雪災害エリア内における道路通行実績情報が確認できる「Google災害情報マップ」も公開されています。Hondaも同様に甲信地方の豪雪災害エリアの道路通行実績情報を公開しています。
リアルタイム気象庁防災情報オープンデータの活用
先端IT活用推進コンソーシアム(AITC)は2014年2月17日、気象警報や地震・津波情報などの「気象庁防災情報XML」を活用するためのAPIを作成し公開しています(ニュースリリース)
公開APIを使うことで、さまざまなクラウドサービスやクライアントアプリケーションから、防災情報を取得することが可能です。
地域防災におけるオープンデータ活用(流山市)
オープンデータを活用した防災の取り組みの検討も始まっています。流山市役所と独立行政法人防災科学技術研究所は2013年5月21日、2013年4月1日に締結した共同研究の取り組みの一環として、市内の自治会などを対象としたオープンデータを活用した災害に強い地域づくり事業の開始を発表しました(報道発表記事)。
流山市では、大雨や洪水などの際の浸水予想地域などのハザードマップや、大地震の際に予想される地域ごとの揺れの大きさなどを示す防災情報をオープンデータとして公開しています。
このオープンデータを防災科学技術研究所が開発するインターネットを活用した防災マップを作成できる「eコミュニティ・プラットフォーム」を活用し、地図データのAPIとしてデータを連携させることで、住民自身が調べた地元の危険な場所などのデータと組み合わせてeコミマップ上に可視化できるようになります。
これらの情報を活用し、災害時の避難ルートや避難場所などを反映させた地域ごとの防災計画を策定する計画もすすめています。
政府の防災、減災に向けた情報発信とIT活用の取り組み
IT総合戦略本部は2014年2月5日、「第3回 新戦略推進専門調査会分科会 防災・減災分科会」を開催しています。
本分科会では、マルチステークホルダーによる 防災・減災情報の連携の仕組みづくりの検討を進めています。
政府では、災害に強い社会の実現に向けて、世界最先端IT国家創造宣言の中で防災・減災に向けた工程表も作成しています。
総務省の防災・減災関連予算施策について、データ活用に関する取り組みでは、「災害に強いG空間シティの構築・街づくり実証事業」で24億円の予算を計上しています。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/senmon_bunka/bousai/dai3/sankou2.pdf