全国からオープンデータ関係者が集結した「オープンデータ・フォーラム 2013 in Gifu」 #odgifu
2013年11月29日、全国から、政府や自治体、団体、大学、民間企業、ベンチャー企業などオープンデータにかかわる総勢約80名が集結した「オープンデータ・フォーラム 2013 in Gifu」が岐阜県大垣市のソフトピアジャパンセンターで開催されました。
テーマは、『オープンデータで紡ぎだす社会・産業の新しい姿とは?』です。
基調講演は、内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室 内閣参事官 鈴木 一広 氏が、「公共データの民間開放(オープンデータ)の推進~政府における取組状況を中心に~」というテーマでお話をされました。
「世界最先端IT国家創造宣言」や、新たな成長戦略「日本再興戦略」におけるオープンデータの推進、「電子行政推進オープンデータ推進のためのロードマップ」、日本の「オープンデータ憲章アクションプラン」など、政府のオープンデータにかかわる取り組みが紹介されました。
政府では、2013年12月中をめどに、複数の機関に所在するデータの案内や横断的な検索機能を備えたポータルサイトの「データカタログサイト」を開設予定です。これにより、データ提供機関を横断して、一元的に必要なデータを取得することができるようになります。
次に、自治体、ビジネス、地域活性化の3つのテーマでセッション(分科会)が開催されました。
- セッションⅠ「自治体発イノベーションを探る〜オープンデータで道は切り拓けるか?〜」
- セッションⅡ「ビジネス創造へ向けたオープンデータ活用」
- セッションⅢ「オープンデータが牽引する地域活性化」
セッションⅠ「自治体発イノベーションを探る」
セッションⅠでは、モデレーターが株式会社CCL の原亮氏、パネリストは、鯖江市政策経営部情報統括監の牧田泰一氏、静岡県情報政策課の杉本直也氏、そして、岐阜県総合企画部次長で情報化推進担当の田中義孝氏が登壇されました。
自治体の行政内部の理解をどう高めていくのかがテーマとなり、うまく進んでいるところとそうでない自治体には差があり、自治体内部の視点でどのように進めてきたのかというのが議論となりました。
鯖江市では、「データシティ鯖江」として、全国的にもオープンデータに関して先進的な取り組みをしており全国からも注目を集めています。鯖江氏の牧田氏からは、住民主役条例が紹介され、市長のリーダシップと市民が地域の意思決定に関与するという市政にもとづき、オープンデータの活用も重要な取り組みの一つになっています。
静岡県では、「ふじのくにオープンデータカタログ」という日本の県庁では初めてオープンデータポータルサイトを開設しています。特にセミプロの職員が写真を撮られている「富士山ビューポイント」は、おすすめです。富士山のデータ活用は観光誘致など大きなテーマとなるでしょう。
ふじのくにオープンデータカタログ
http://open-data.pref.shizuoka.jp/
岐阜県では、これからオープンデータを推進していくための検討を進めていますが、オープンデータを推進していく上で、GISの活用が一つの鍵になりそうです。
セッションⅠのディスカッションでは、公共の情報資産を積極的に活用する時代に突入したとし、「データは公共財。情報公開度ランキングが出ているが、これからは、活用度ランキングが注目されていくのではないか」という意見もありました。公開されるデータが充実していけば、データ活用の視点が重要となってきます。
セッションⅡ「ビジネス創造へ向けたオープンデータ活用」
セッションⅡでは、モデレーターが会津大学の藤井靖史氏、パネリストは日本気象株式会社の佐藤拓也氏、大阪市都市計画局で大阪イノベーションハブを担当している角勝氏が登壇され、私も国際大学GLOCOMの立場で参加をさせていただきました。
オープンデータをビジネスにどう応用していくか、いくつかの事例や市場規模、各プレイヤー立ち位置など、整理しつつ、議論が行われました。
角氏からは、スタートアップを支援する大阪イノベーションハブの取り組みが紹介されました。大阪イノベーションハブではハッカソンなどスタートアップを支援する取り組みが毎週のように開催されており、非常に盛り上がっているという印象です。
大阪イノベーションハブ
https://www.innovation-osaka.jp/ja/
日本気象株式会社の佐藤氏からは気象データの活用についてお話がありました。ハーバード・ロースクールのローレンス・レッシング教授は、気象データの公開は「8億ドル(約750億円)を超える経済価値を生む」とコメントしているように、気象データだけをとってもオープン化における経済波及効果は高いと考えられます。
日本気象株式会社では、「お天気API」を提供しており、防災情報データ、天気予報データ、過去・現在の気象観測データを提供しています。
オープンデータを活用したビジネスは、参加者の意見の方向性としては、あるビジネスの目的や課題に対して、そのツールの一つとしてどのようにデータ活用していくのか。また、オープンデータ関連ビジネスでは様々なプレイヤーがいる中で、どのような立ち位置でビジネスを展開していくのか、というのがひとつのテーマになりました。また、データだけでなく人のマッシュアップを通じてビジネスを広げていくことの重要性も示されました。
セッションⅢ「オープンデータが牽引する地域活性化」
セッションⅢでは、モデレーターが株式会社デザイニウムの前田 諭志 氏、パネリストはインフォコム株式会社の鳥越直寿氏、横浜市政策局政策課の関口昌幸氏、Code for Kanazawa福島健一郎氏が登壇されました。
民間、行政、市民、というそれぞれの立場から、オープンデータを使い地域全体の相乗効果を出していくのかという点が議論の中心となりました。
前田氏は、福島の会津若松で地域×ITでサービスを手がけており、オープンデータを活用した古地図を使い福島県会津地方の魅力を再発見スマホ向けのアプリ「会津古今旅帳」を開発しています。
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.designium.aizuar
インフォコムは、オープンデータのインターネット上での公開支援システム「InfoLib-LOD」などオープンデータ、ビッグデータ関連の様々なソリューションを提供しています。
http://www.infocom.co.jp/das/infolib/lod/
横浜市の取り組みは、オープンデータの先進的な取り組みとして、国内外からも注目されており、横浜市だけでなく、横浜オープンデータソリューション発展委員会と、地域と一体となった街づくりの取り組みが大きな特徴といえます。
Code for Kanazawaの取り組みは、米国でのCode for Americaに代表されるように、市民による社会の課題解決につながるアプリやサービスを開発していく取り組みです。
日本でも先日、CODE for JAPANが立ち上がり、CODE for SABAEなど、全国各地で拡がりを見せようとしており、Code for Kanazawaの取り組みは、オープンデータを通じたサービスやアプリ開発による行政の見える化、地域活性化やビジネス創造を占う上でも重要な取り組みといえるでしょう。
パネルディスカッション「オープンデータが地域産業に与える影響と可能性」
最後のパネルディスカッションでは、モデレーターは株式会社CCLの原亮氏と須藤順氏、パネリストは内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室内閣参事官の鈴木一広氏、岐阜県情報産業課の森達哉氏、デザイニウムの前田氏、会津大学の藤井氏が登壇されました。
パネルディスカッションの様子
パネルディスカッションでは各分科会での総括や今後の方向性、そして、岐阜県のオープンデータの取り組みが紹介されました。
岐阜県では、「オープンデータを活用した新サービス創出・研究事業」を手がけており、オープンデータ・カフェやオープンデータ・ハッカソンの開催をはじめオープンデータの利活用調査やロールモデル構築プロジェクトなど、様々な取り組みを進めています。
フォーラムの最後に参加者全員で記念撮影をしました。
懇親会では、一次会、二次会と参加させていただきました。懇親会では、全国からオープンデータ関係者が集まっていたこともあり、お互いのいいところをそれぞれ吸収し、地元に戻ってからその内容を活かして取り組んでいこうという議論が多く見られました。
懇親会(一次会)の模様
リアルな場を通じてデータだけでなく、人のマッシュアップも通じて、地域課題の解決や地域活性化、ビジネス創出につなげていくことの大切さを感じた一日でした。こういった取り組みが全国的な拡がりを見せていくことが期待され、ます。
全国からオープンデータ関係者が一同に集まり、非常に中身の濃い一日となりました。関係者の皆様、お疲れ様でした。お世話になりました。ありがとうございました。