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スマート・マシーン(6)「スマート・マシーン」が及ぼす経済や社会への影響について

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コモディティ化した機器がインテリジェンス機能を持ち、スマート・マシーンとして、商品の付加価値を高めていくことができると考えられます。利益率の高い新しい商品が開発され、事業者の業績の好転にも寄与することで、経済的なインパクトも期待されます。

利用者は、スマート・マシーンにより、日々ルーチン・ワークからの開放され、よりインテリジェントな活動やビジネスに活動を振り向けられるようになるでしょう。

スマート・マシーンが及ぼす経済や社会の影響について、少し考えていきたいと思います。

自動運転者の普及のメリットと課題

たとえば、自動運転者の普及した場合、交通事故の低減や渋滞の緩和などが期待されています。

アメリカのシンクタンクのレポートでは、自動運転車が10%まで普及すると、事故と負傷者を50%減らすことができ、90%まで普及すると、交通事故や路上での死傷者が90%削減し、アメリカ経済に毎年4500億ドル(約43兆円)もの経済的コスト削減が実現できるというリポートを出しています。

自動運転により、飲酒運転や疲労などによる居眠り運転、人的ミス、スピード違反などの減少も期待されます。また、高齢者の方々や免許の無い方などにとっても、自動車運転者をタクシーのように使えることができるといったメリットもあるでしょう。

自動運転により、交通の流れがスムーズになり、渋滞も緩和されると考えられます。国土交通省は、自動車メーカーと共同で、渋滞防止を狙ったシステムの試験走行を行なっています。燃費の改善や排出ガスの削減につながるなど環境配慮型の社会が期待されます。

一方で、検討すべき課題も山積しています。現在、公道で運転者がハンドルから完全に手を離す行為を認められていません。あくまでも運転を支援する機能として位置づけられています。

主要国による自動運転関連の法整備が未整備で、現時点では、商品化することができません。日本では国土交通省が、高速道路に限り自動運転を段階的に認める方向で検討中していますが、一般公道で普及のはまだまだ時間がかかるでしょう。

同じ車線内で自動と手動の車両が共存する状況を想定した法整備を含めた環境整備をする必要が想定されます。

また、安全性の問題も指摘されており、自動運転によって事故が発生した場合の責任分界や保険制度などの整備も必要となってくるでしょう。

雇用形態の変化

自動運転車が普及すれば、トラックやタクシー、電車などを運転する方の雇用機会が減少する可能性が考えられます。また、高度な知識が要求される医師や弁護士などの雇用にも影響するかもしれません。

金融分野ではトレーダー、IT分野では現在注目が集まっているビッグデータを活用して高度な分析を行うデータサイエンティストなどの雇用にも変化が生じる可能性があります。

スマート・マシーンの登場によって、人間の本来の業務が置き換えられ、失業率が高まってしまうという可能性も否定できません。

自分自身で判断して行動できない人が増える?

スマート・マシーンへの依存度が高まり、スマート・マシーンのアシスタントや、行動支援、移動支援などがなければ、重要な場面で、自らの判断で行動できない人が増えていく可能性も否定できません。また、自動運転に頼りすぎて、運動不足が深刻化するかもしれません。

犯罪増加の懸念

犯罪を助長するようなスマートマシーンの登場が予想され、治安が悪化するといった可能性も否定できません。

今後、「スマート・マシーン」がもたらす未来の社会像とは?

スマート・マシーンの普及の契機は、2020年で東京五輪がひとつの節目になると考えています。2020年までに、自動運転車や観光地を案内するロボットなどが登場し、生活などで便利さを感じその恩恵を受けることができるようになり、ビジネスや生活の中に次第に浸透していきはじめるのではないかと考えています。

もう一つの節目が、2045年前後と考えています。ムーアの法則では「半導体チップの集積度は、約18ヵ月で2倍になる」と指摘していますが、これを元に計算すると、2045年にはコンピューターの性能は現在の約264万倍の性能になり、コンピューターの能力が全人類の知能を上回るという可能性があります。

スマート・マシーン自身が、自分自身でプログラムを改良し、意識を持ったスマート・マシーンの登場が予想され、人類の歴史にとっても大きな転換期になる可能性があります。

その世界があと32年後に来る可能性があります。非常に難しいテーマですが、スマート・マシーンにはできないことを、人間としてどういうことができるのか、していくべきなのか、今から考え行動していくことが大切かもしれません。

 

スマート・マシーン(1)スマート・マシーンとは? 2013.11.5

スマート・マシーン(2)実用化を進める自動運転車「Movers(移動する)」 2013.11.6

スマート・マシーン(3)政府が進める自動運転の未来像と検討課題 2013.11.7

スマート・マシーン(4)アシスタントやアドバイザー機能を持つ「Sages(賢者)」 2013.11.8

スマート・マシーン(5)人の動きを観察して行動を先読みし支援するロボット「Doers(行動する)」 2013.11.12

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