ビッグデータ(1)デジタルデータの成長とビッグデータの定量的価値
「情報通信白書2012」からの引用を中心に、ビッグデータの動向についてまとめてみたいと思います。
ユビキタスネットワーク社会の完成
- LTE に代表されるワイヤレス・ブロードバンドの発展・普及
- Wi-Fi の広範な端末機器への導入・家庭内外におけるアクセスポイントの整備による有線網・無線網の統合利用
- 放送のデジタル化による通信との融合・連携型サービスの拡大など、特に無線通信技術の革新
などを背景に、これまでバラバラに運用されていた個々のネットワークを統合的に利用することが可能となった点が指摘されています。
また、これまで個々の企業等に分散して設置されてきたサーバーなどコンピュータ資源についても、クラウドを通じて利用者向けサービスとして提供されるようになり、統合の方向に進みつつある点も指摘しています。
また、「ソーシャル」化が特に若年層を中心に進展し、人と人との絆の強化を通じて国民の幅広い層の社会的包摂に貢献する可能性が示されています。
さらに、スマートフォンやタブレット端末の世界的な普及は、このように進化したネットワーク・サービス環境に、誰もが、どこでも接続し、インターネット上に展開する多種多様なサービスの利用を可能にしつつある点をあげています。
これによって、スマートフォン、タブレット端末の登場により、利用者は、電子書籍など、複数のスクリーンを用途により使い分けや連携させるマルチスクリーン型のサービス利用がいつでも、どこでも可能となったとしています。
M2Mの進展
インターネットの世界では、人と人との結びつきにとどまらず、モノとモノとの間でも、人間を介在せずに相互に情報交換し、様々な機器に埋め込まれたセンサーネットワークにより自動的に最適な制御が行われるシステム(M2M)が進展しています。M2Mとクラウドとの連携、そして、次に述べるビッグデータの活用により、社会インフラの効率的制御や業務改善に役立てる動きが顕在化しています。
本白書では、インターネット・携帯電話の社会基盤化、ワイヤレス・クラウド・ソーシャルを背景とするネットワーク・サービス環境の進化に加え、スマートフォン等の登場により、ユビキタスネットワーク環境が具体的な全体像を顕したということができると指摘しています。
これらの流れは、単なるコミュニケーションツールを超え、民主主義の基礎となる表現・言論の自由を確保し人と人との絆を強化する基盤としての役割、様々な財・サービスがデジタル情報となって国境を越えて流通する基盤としての役割を担うに至っていると指摘しています。
デジタル情報の爆発的な普及とビッグデータ
これらのインターネットやクラウドの社会基盤化によって、ネットワーク上に流通・蓄積されるデジタル情報の爆発的な増大をもたらしつつあります。利用企業等は、ビッグデータの生成・収集・蓄積が可能・容易になり、これらのデータの分析・活用による異変の察知や近未来の予測等を通じ、利用者個々のニーズに即したサービスの提供、業務運営の効率化などが可能となっています。さらに、ビッグデータの活用による新産業の創出も期待されています。
ビッグデータの定量的な価値は、
- 50億台の携帯電話が使用(2010年)
- 300億のコンテンツが毎月Facebook上で共有
- IT費用の5%増加で、年間40%増のデータ創出
- 米国のヘルスケアでは年間3000億ドルの価値創出が期待(スペインの年間ヘルスケアコストの2倍)
- EUの公共セクターでは年間2500億ユーロの価
値創出が期待(ギリシアのGDPを超える) - 個人の位置情報データを活用することで年間6000億ドルの消費者価値創出が期待
- 小売の営業利益に60%改善の見込み
と、その効果が示されています。
ビッグデータの分析活用例では、
- 製品開発:どのような製品を開発することが消費者に対して訴求するかがわかる。
- 販売促進:誰に、何を、いつ売ればよいのかがわかる。
- 保守・メンテナンス・サポート:いつ、どのようなメンテナンスを行えばよいかがわかる。
- コンプライアンス:不正の予兆や、特に注視するべき事象が何であるかがわかる。
- 業務基盤・社会インフラの運用:全般的な性能向上・コスト削減が実現される。
ビッグデータ活用は、アマゾンのECサイトなど、既に各種オンラインショッピングサイトにおける利用者の購買履歴に応じたレコメンド表示など具体化する動きも広まっています。
スマートグリッドにおいても各家庭に蓄積されているスマートメーターのデータは、社会インフラ運用におけるビッグデータ活用の一例と言えます。今後、スマートグリッド、さらにはスマートコミュニティ、スマートシティなど、社会インフラ構築の動きは加速することが予想され、クラウドやビッグデータの位置づけは大きくなっていくことでしょう。
情報通信白書2012では、ユビキタスネットワーク環境とビッグデータの活用などによる「スマート化」の融合を「スマート革命」と定義しています。
多種多量の情報の流通・蓄積とその分析・活用がクラウド上で進むことで、新たな付加価値が創造される知識創造基盤への進展が期待されます。
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※担当キュレーター「わんとぴ」
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