「クラウドエコノミクス」と「クラウドエコシステム」
クラウドコンピューティングというキーワードが注目されはじめてから、すでに3年以上の年月が経ち、クラウドの経済的な視点やエコシステムに関しても関心が高まっています。
クラウドエコノミクスの重要性
3年前は、クラウドコンピューティングは「マーケティング用語である」というコメントをされる方も多く、ユーザへのソリューションやサービスを売り込むためのマーケティング用語として、事業者も多用するケースが見られました。
3年目が経ち、クラウドを提供する事業者は、特に収益を意識する傾向になりつつあります。クラウドの場合は、ユーザ側は、従量制で最新の高機能なサービスが利用できるというメリットがありますが、提供する事業者側は、データセンターへの投資から、サーバーの構成などから、コスト評価やROI(投資収益率)を見ていく必要があります。
通常のシステム構築などのソリューションビジネスは短期で投資の回収が見込めますが、クラウドビジネスの場合は、大規模な投資の中で、中長期的な視点で黒字化など収益の回収を見ていくことが重要となってきます。そのため、経営陣にとっては、クラウドビジネスへの参入は、大きなかけにもなると考えられます。途中で経営陣が変わり、クラウドビジネスに対して大きく方針変更を余儀なくされる可能性も否定できません。
クラウドは、技術動向やサービス動向だけでなく、規模の経済や範囲の経済など、クラウドエコノミクスという経済分析も重要となるでしょう。
クラウドエコシステムの形成
クラウドコンピューティングは大きく分けて、SaaS、PaaS、IaaSと分かれますが、IaaSの分野においては、価格競争が進み、機能面において差別化することが難しい状況となっています。
モバイルOSの分野でiOS、Android、Windows Phoneなどに集約されてきているように、IaaSの分野でも同様に、グローバルな規模でのデファクトスタンダード化やオープンソース化が進んでいく可能性が十分に考えられます。
クラウドの競争優位性は、IaaSの分野から管理レイヤーやPaaSレイヤ、そしてSaaSのサービスそのものが大きな差別化要因となると考えられます。
マイクロソフトやセールスフォース・ドットコムがクラウド事業においてトヨタ自動車と提携したように、業種・業界を超えたクラウド事業のエコシステムを形成していくことが重要となってくるでしょう。
10月12日から14日に開催されたITpro EXPO 2011 では、IIJ、Amazon(AWS)、Nifty、Microsoftなど、クラウドに注力する事業者は、パートナー企業の出展スペースを拡げ、クラウドエコシステムを訴求している点が印象的でした。
クラウドビジネスにおいては、自らのクラウドサービスを提案・宣伝するよりもむしろ、クラウドを利用するサービス事業者や開発者の後押しをし、エコシステムを形成することが今後の大きな差別化要因になると考えられます。
クラウドエコノミクスとクラウドエコシステム、この二つのキーワードが、今後のクラウドビジネスの潮流を大きく左右していくのではないかと感じているところです。
※担当キュレーター「わんとぴ」
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