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原口ビジョンⅡ(2)~具体的施策の位置づけ(案)について

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昨日は、原口ビジョンⅡの全体ビジョンを整理してきました。

原口ビジョンの基本コンセプトは、「ICT維新ビジョン2.0の推進」、「緑の分権改革の推進」、「埋もれている資産の活用」の3つが柱となっており、ICTに関連するのは主に「ICT維新ビジョン2.0の推進」です。

内閣府の国家戦略室で、28日に総務省のヒアリングをしていますが、その際に提示した具体的施策の位置づけ(案)の資料を参考にしながら、整理をしてみたいと思います。

2-(1)グリーン・イノベーションによる環境・エネルギー大国戦略        
◆「ICTグリーンプロジェクト」の推進

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スマートグリッドに関しては、経済産業省や環境省など、政府全体として取り組んでいますが、総務省では主に通信ネットワークやプロトコルに関連する技術仕様などが中心となっています。総務省が技術的な検証はするとして、どの程度、実証事業などに取り組んでいくのか気になるところです。スマートグリッドのほか、ICT産業のグリーン化である「Green of ICT」と「Green by ICT」も推進し、2020年までに、ICTパワーによりCO2排出量10%以上の削減の実現を目指しています。

2-(2)ライフ・イノベーションによる健康大国戦略        
◆健康・医療・介護分野等におけるICT利活用の推進

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注目されるのは日本版EHRです。本施策は、総務省だけでなく省庁横断施策となります。総務省が2月に公表した「スマート・クラウド戦略」の中間報告では、「医療クラウド」という表現をしていたのですが、新たに健康というキーワードが入り「健康医療クラウド」の整備推進としています。脳情報によるコミュニケーション施策も注目です。総務省は、情報通信審議会 情報通信技術分科会(第73回)で、「脳情報通信融合技術の動向」の資料を公表しています。これらの施策により、1兆円以上の医療費削減達成を目指しています。電子カルテやレセプトなど、日本の健康医療分野のICT化は、韓国など他国と比べると、著しく遅れをとっているため、今後の巻き返しが期待されます。

2-(3)アジア経済戦略        
◆日本発ICT(J-ICT)の国際展開の推進

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地上デジタル放送では、これまでにブラジルやアルゼンチンなどが日本方式を採用しています。一方で、「ヨーロッパ方式」などもあり、今後どの程度、「日本方式」が広がりを見せるのか注目されます。またクラウドの標準化では、「グローバルクラウド基盤連携技術フォーラム(GICTF)」でも議論を進めています。2015年までに、日本の先進的なICTを30億人規模の海外市場に展開するとしており、特にアジアや南米などが大きなターゲットとなるでしょう。

2-(5)科学・技術立国戦略           
◆「光の道」100%の実現

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ソフトバンクの孫社長などが積極的に本施策を支持しており、注目されています。「光の道」構想は、グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォースの「過去の競争政策のレビュー部会」で中心に議論されています。4月27日の第10回の会合では、「光の道」の論点整理(案)が公開されています。「光の道」に関心のある方は、是非目を通しておくと良いでしょう。

◆電子行政の強力な推進による無駄削減・オープンガバメントの推進

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注目されるのは、「番号に関する原口5原則」である国民IDです。原口5原則は、2月23日の政務三役会議で公開されています。国民総背番号制に対して賛否両論がありますが、国民IDは電子行政を推進していく上で、非常に重要な位置づけとなっていくでしょう。

そして、米国で先行している「オープンガバメント」です。日本での代表的な取り組みは、経済産業省の「アイデアボックス」や文部科学省の政策創造エンジン「熟議カケアイ」です。総務省のオープンガバメントの施策はこれからという印象ですが、政府横断的な施策が展開されることが期待されます。

そして、新たに盛り込まれたのが、「政府共通プラットフォーム」の運用と「自治体クラウド」の推進です。「政府共通プラットフォーム」は、「政府情報システムの整備の在り方に関する研究会」にて3月30日に最終報告書(案)を公表しています。本施策は、「スマート・クラウド戦略」の中間報告書にも明記されていますが、「霞が関クラウド」に該当します。「自治体クラウド」では、現在、一部の自治体で共通基盤連携基盤などの開発実証が進められています。「自治体クラウド」の概要については「自治体クラウドポータルサイト」で確認することができます。

◆ICTによる協働型教育改革の実現

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昨年12月に公表されたフューチャースクールの推進では、「デジタル教科書を全ての小中学校全生徒に配備(2015年)」という内容が盛り込まれていましたが、今回はデジタル教科書の具体的な目標設定については、掲載されていません。デジタル教科書については、「「デジタル教科書」に関する取組みについて」でまとめていますので、是非一読ください。

◆新たな電波の有効利用の促進

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2011年年7月24日でアナログ放送が終了するため、電波の帯域が大幅に空く、つまりホワイトスペースが生まれます。このホワイトスペースをどのように有効活用していくかが、焦点となります。

◆「スマートクラウド戦略」の推進による新サービスの創出

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「スマート・クラウド基盤」の構築・活用については、総務省が2月に公表した「スマート・クラウド戦略」の中間報告のクラウドサービスを通じたICT利活用の徹底に該当します。報告書では「コミュニティ(地域)クラウド」という表現をしていますが、今回は「NPOクラウド」という記載をしています。 

また、データセンタの国内立地の促進に関しては、「クラウド特区(仮称)」の展開とし、先日の日経新聞の一面でも掲載されたように、大変大きな注目を集めています。特区については、3月に公表されたクラウドコンピューティング時代のデータセンター活性化策に関する検討会報告書(案) 」に考え方について書かれています。

◆「オープン型電子書籍ビジネス環境」の創出

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そして、電子書籍の環境整備です。アマゾンのキンドルやアップルのiPadに代表されるように、電子書籍市場は、米国などがリードしています。総務省、文部科学省、経済産業省は3月、「デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会」を立ち上げ、技術に関するワーキングチームと出版物の利活用の在り方に関するワーキングチームにて、技術課題や国立図書館などのデジタルアーカイブの在り方などについて検討を進めています。

その他にも、「◆デジタルコンテンツ創富力の強化」や「◆ICT人材戦略の推進」や「◆地域におけるICT利活用の促進」、そして、「◆革新的なICT基盤技術の研究開発の推進」などについても目標設定をしています。

以上、具体的施策の位置づけ(案)のポイントについて、自分なりにまとめてみました。次回以降、5月6日に公表された原口ビジョンⅡの詳細版について、もう少し踏み込んで整理してみたいと思います。


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