新IT戦略(2)~政府CIOの設置
新IT戦略の中で、重要な位置づけの一つになるのが、政府CIOの設置です。
新IT戦略(新たな情報通信技術戦略(案))の中では、政府CIOの考え方について以下のとおり書かれています。
電子行政推進の実質的な権能を有する司令塔として政府CIOを設置し、行政刷新と連携して行政の効率化を推進する。その前提として、これまでの政府による情報通信技術投資の費用対効果を総括し、教訓を整理する。その教訓にもとづき、上記施策を含め、電子行政の推進に際しては、費用対効果が高い領域について集中的に業務の見直し(行政刷新)を行った上で、共通の情報通信技術基盤の整備を行う。クラウドコンピューティング等の活用や企業コードの連携等についても、その一環として行う。
政府CIOについては、米国政府が先行しています。米国のオバマ大統領は、昨年の2009年、3月5日ワシントンDCのCTO(最高技術責任者)のビベク・クンドラ(Vivek Kundra)を初代CIOに任命しました。政府全体のIT部分の調整役を担い、米国政府の業務の効率化を推進し、オープンガバメントやクラウド関連の施策を積極的に展開しています。
日本でもこの時期に政府CIOの設置について、検討が進められていました。自民党時代には、2009年3月2日に提示した「デジタル新時代に向けた新たな戦略~三ヵ年緊急プラン~」を公表しています。その中で電子行政として、個別最適でなく全体最適を追求し成果を挙げるために、トップダウンの推進体制として「電子行政推進本部(仮称)」の組織化と「政府CIO(仮称)」の設置を行うとしています。「政府CIO(仮称)」は電子行政推進に関する組織と権限を持ち、各省CIOと連携しこれを統括するとしています。
本戦略の中には、効率的な柔軟なシステム構築、運用コストの削減、業務の共通化を推進するため「霞が関クラウド」の構築を推進していくとしていますが、省庁を横断で強力に推進をすすめていくためには、「政府CIO(仮称)」の存在が非常に重要になると指摘しています。
また、自民党時代に、IT戦略本部は、2009年6月30日に「i-Japan戦略2015」を公表しました。本戦略の中では、政府CIOの考え方について以下のとおり書かれています。
電子政府の推進を専担とする司令塔を明確にするため、政府CIO を設置し、その強力な調整権限の下に、例えば業務プロセスやデータの標準化等府省共通の課題について、各府省CIO を統括すること。さらに、政府CIO を補佐するため、情報システムと業務の専門家を配置するなどスタッフを充実するとともに、新たな電子政府推進組織の在り方を検討し、推進体制の一層の充実強化を図ること。政府CIO は、国、地方の連携を強化するため、地方公共団体のCIO 等との十分な意思疎通を行うこと。
政府CIOについては、民主党になってからもその重要性は引き継がれています。
政府CIOの役割は、電子行政推進の実質的な機能を有する司令塔です。新IT戦略の中で「電子行政の実現」で取り上げられているのは、
- 行政サービスのオンライン利用に関する計画の策定
- 行政ポータルの抜本的改革と行政サービスへのアクセス向上
- 国民ID制度の導入と国民による行政監視の仕組みの整備
- 政府の情報システムの統合・集約化
- 全国共通の電子行政サービスの実現
- オープンガバメント等の確立
等があげられています。
気になるのは、政府CIOに誰が任命されるか、ということです。民主党情報通信議員連盟のマニフェスト(案)「情報通信八策」では、政府CIOは、内閣官房副長官を充てるとしています。過去の予算のしがらみを断ち切り、IT投資の効率化を推進するためには、司令塔の存在が極めて重要となります。「八策」の中では、さらに踏み込み、情報通信関連予算の一括管理を含む権限を大幅に強化することで、重複行政を排除するため、「情報通信文化省」設置などの情報通信行政組織の抜本的な見直しを検討する方針を示しています(関連記事)。
米国CIOのクンドラ氏は、30代という年齢の若さと、かつワシントンDCのCTO時代にクラウドやオープンガバメントを積極的に採用した実績を買われています。政府CIOに就任してからも積極的にクラウドやオープンガバメントを積極的に採用しています。
果たして、政府CIOがどのような実績をもち、司令塔として、どのような方針を示しすのか、そして、政府CIOを補佐する組織がどのようになり、どのような推進体制となるのか、今後の政府CIO設置の動きは、今後のIT戦略の方向性を左右するだけに、注目されるところです。