企業が注目するクラウドの世界。日本IT企業の対応は?
ワールドビジネスサテライトの4月22日の特集に「企業が注目"雲の世界"」というテーマで企業のクラウドコンピューティングの特集が紹介されていました。テレビ東京のページでも放送された動画が掲載されていますので、見逃した方は是非ご覧ください。放送の中では、クラウドコンピューティングの概要紹介のほか、Saleforceのサービスを利用した事例やIBMのプライベートクラウドなどのコンセプトが紹介されています。
これまで、テレビでは、昨年10月15日に「NHKクローズアップ現代「新情報革命“クラウド”の衝撃」が放送されました。このときもSalesforceの事例が中心となっています。
クラウドコンピューティングでサービス戦略を強化しているのは、これまで紹介したSalesforceやGoogle、Amazon、そしてIBMやMicrosoft等があげられますが、日本のIT企業の動向が見えにくい状況となっています。そこで日本のIT企業の取り組みの一例を少し整理してみたいと思います。
クラウド環境のソリューションを提供するNEC
ITmediaエンタープライズの記事によると、NECは、4月23日、プライベートクラウド関連のサービスを7月に提供すると発表しています。サービスの名称は、「クラウド指向サービスプラットフォームソリューション」です。サービス提供形態は、(1)「SaaS型」、(2)「共同センター型」、(3)「個別対応型」の3つであることが紹介されており、ユーザ側の要望に応じてクラウド型の技術を応用しながら、サービスやソリューションを提供していくというスタンスになっています。これらの戦略はIBMがプライベートクラウドで先行していますが、NECはサービスの対象範囲や、コンサルティングやデータセンターもあわせて提供する等で総合力を高めていこうという戦略が伺えます。
NECは今回の、「クラウド指向サービスプラットフォームソリューション」の提供に伴い、販売目標を1,000億円とし、大幅な組織再編や人材育成に踏む込むとしています。
日立のビジネスクラウド
日立の場合は、「ビジネスクラウド」というコンセプトを掲げ、SaaS型やPaaS型だけでなく、「クラウド活用型SI」というように、クラウド技術を使い、お客様への個別ニーズに対応していく展開もしています。
NECや日立は「クラウド」を軸に、お客様の要望に応じてハイブリッドなクラウド環境を提供していくというスタンスに立っていると考えられます。
日本ユニシスのクラウド
注目されるのは、日本ユニシスの動向です。日本ユニシスは4月6日に「クラウド型データセンターの基盤構築」を公表しています。日本ユニシスではクラウド基盤となる「SaaSビジネスパーク」を展開し他社のSaaS型のアプリケーションをクラウド基盤に誘致することを展開しています。日本ユニシスは社長自らがクラウドビジネスを展開していくためのイニシアティブをとっている印象をもっています。
富士通のプライベートSaaS
富士通は4月23日、SaaS事業を強化していくことを発表しています。富士通は関連事業で3,000億円の売り上げを目指しています。
富士通の場合は、全方位というよりは、SaaS型のアプリケーション提供に注力する戦略を強化してきているという印象です。富士通は、「富士通SaaSポータル」を開設し、開発要員1,000人育成する等SaaS事業への強化をはかっています。富士通の場合は、クラウドという言葉を使わず、大企業向けに独自に構築する「プライベートSaaS」と呼んでいます。
NTTグループのSaaS over NGN ビジョン
NTTグループも独自のSaaS型のアプリケーションの提供のほか、SalesforceやMicrosoft等との協業を通じてSaaSビジネスを本格的展開しています。4月8日には、Microsoftの協業の第一弾を発表しています。NTTグループのSaaS over NGNは、パートナーと協業・連携して、NGNを中心としたICT基盤上に新たなSaaS市場を創造するNTTグループのビジョンです。
日本のIT企業のクラウド戦略
外資系IT企業の場合はCEO等が自らクラウドコンピューティングの戦略を発言し、展開していくケースが多いのですが、日本のIT企業の場合は必ずしもそうではない印象を持っています。また企業によっては、クラウドというキーワードをあまり使わないケースも見られます。クラウドコンピューティングは、外資系のほうが先行していると言われていますが、日本のIT企業も戦略を掲げ、売り上げの目標値も明らかにしています。どの程度巻き返しがはかられるのか要注目です。