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学校裏サイトの現状と対策の取り組み

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社会問題となっている「学校裏サイト」。昨年末から「学校裏サイト」に国の対応と取り巻く環境があわただしくなってきました。

 
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月6日の毎日jpの「学校裏サイト:文科省が実態調査 対策案策定も検討」によると、文部科学省は、「学校裏サイト」の実態調査をはじめ、3月までに調査結果をまとめ、その後の対策も検討していくようです。

 
また、1月4日の日経ネット「有害サイト削除、民主が独自法案・プロバイダーに義務化」では、民主党は「学校裏サイト」等のインターネット上の違法・有害情報の削除をプロバイダなどに義務付ける法案を国会提出に向けて党内調整を始めているようです。

 
昨年末、「学校裏サイト・ネットいじめ対策を考える」や「コンテンツビジネスと有害サイト対策」等でもご紹介しましたが、「学校裏サイト」情報や対策等のこれまでの経緯を少しまとめてみたいと思います。

 

学校裏サイトに関わる様々な調査結果

学校裏サイト等には様々なアンケートや調査が実施されてきました。いくつかその調査結果をとりあげてみましょう。


・平成18年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査
2007
1115日に文部科学省は、「平成18年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」を発表しました。「学校裏サイト」に該当する項目では、「「パソコンや携帯電話等で、誹謗中傷や嫌なことをされる」は4,883件(3.9パーセント)である。」と予想よりかなり低い数値が出ています。

 
・10代女性の「学校裏サイト」に関する調査レポート

20071017日、ふみコミュニケーションズは、「「学校裏サイト」に関する調査レポート」を発表しました。「学校裏サイト」の悪いところとして、「悪口・中傷・根拠のない噂」は1,704件(40.4パーセント)と群を抜いています。

 
・女子中高生に聞く学校裏サイト・プロフ他有害サイト意識調査第二段

20071030日、メディアシークは、「女子中高生に聞く学校裏サイト・プロフ他有害サイト意識調査第二段」を発表しました。「学校裏サイトを見たことがある」と答えたのは、26パーセントで、「サイトからトラブルや事件を知っている」と答えたのは、46パーセントにも上っています。

 
・学校裏サイトに関する調査~高校生実態調査~

20071221日、ネットエイジアは、「学校裏サイトに関する調査~高校生実態調査~」を発表しました。「学校裏サイトが存在する」と答えたのは25.7パーセント、「イジメの書き込みを見たことがある」と答えたのは44パーセントにも上っています。そして、「悪口、中傷、嫌な書き込みをされたことがある」と答えたのは、16.5パーセントとなっており、特に女子高校生に関しては、21.5パーセントと高い数値になっています。

 
・有害情報に関する特別世論調査

1025日、内閣府は「有害情報に関する特別世論調査」を発表し、90.9%の人が「規制すべき」だと答えています。多くの人は現状有害情報の氾濫に不満を持ち、規制強化を求めていることがわかります。

 
・(番外編)2007年の学校裏サイトの検索ランキングが時事トップ

Livedoor検索は、20071212日、「2007年の検索キーワードランキング」を発表しました。時事ランキングでは、驚くことに「学校裏サイト」が1位となっており、学校裏サイトへの関心の高さが伺えます。

 

「学校裏サイト」等の有害サイト対策への政府などのこれまでの取り組み

「学校裏サイト」をはじめとした有害サイトの取り組みですが、昨年末から特に大きな動きが見られるのでここで再度整理したいと思います。

 
・インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会

1126日、総務省は「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」の開催することを発表し、インターネット上の違法・有害情報に対する総合的な対応について検討することとしています。

 
・通信・放送の総合的な法体系に関する研究会

126日、総務省は「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」が最終報告を発表しました。いわゆる情報通信法(仮称)の最終とりまとめになります。この中で、ブログやSNS等が対象になると思われる「公然通信」に対して研究会は、“ネット上でのコンテンツが守るべき最低限の配慮事項を、刑罰を伴わない形で整備”することを提言しています。

 
・青少年が使用する携帯電話・PHSにおける有害サイトアクセス制限サービスの導入促進

そして1210日、総務省は、「青少年が使用する携帯電話・PHSにおける有害サイトアクセス制限サービス(フィルタリングサービス)の導入促進に関する携帯電話事業者等への要請」を発表し、青少年が使用する携帯電話・PHSにおける有害サイトアクセス制限サービス(フィルタリングサービス)の導入促進を図るため、携帯電話・PHS事業者等に対して取り組みを強化するよう要請しました。総務省からの要請を受け、各携帯電話・PHS事業者4社は、「有害サイト」のアクセスを制限するフィルタリングサービスについて、未成年者は原則加入とする方針を発表しました(ITmedia 関連記事)。

 
・「健全な携帯電話向けサイト」を認定する第三者機関の設立に向けた準備委員会

一方、1226日、携帯電話メーカーやコンテンツプロバイダらが参加するMCF(モバイル・コンテンツ・フォーラム)が、「健全な携帯電話向けサイト」を認定する第三者機関の設立に向けた準備委員会を発足しました(報道発表資料PDF)。サイトの健全性を第三者機関で認定し、有用なサイトをしゃ断しないフィルタリングサービスの構築につなげるとともに、業界の自助努力もアピールする狙いです(ITmedia 関連記事)

 

「学校裏サイト」の対策支援は?

では、社会問題化する「学校裏サイト」へのこれまでの対策はどうだったのでしょうか?最近の民間企業や団体の取り組みを紹介しましょう。

 
・学校裏サイト・ネットいじめ対策コンサルティングサービス

117日、ガイアックスは、「学校裏サイト」や「ネットいじめ」への対策をサポートするコンサルティングサービス、「スクールガーディアン」の提供を開始すると発表しました。このコンサルティングサービスのポイントは、学校裏サイトを独自の検索手法で発見し、サイト内のコンテンツを分析レポートし、その対策を提案し、そして継続的に監視するというものです。

 
・小学校高学年から中学生を対象としたコンテンツ「JUNIOR net」の開設

20071226日、KDDIは、「小学校高学年から中学生を対象としたコンテンツ「JUNIOR net」の開設」を発表しました。インターネットや携帯電話の間違った使い方によって子どもたちがトラブルなどに巻き込まれることを防ぐために活用してもらうことを目指しています。

 
・ネット安全教室

20071227日、NECソフトは、特定非営利活動法人日本ガーディアン・エンジェルスおよびNECとの共催により「NECソフト・ネット安全教室」を開催することを発表しました。インターネットのマナーやルールを身につけ、ネット犯罪に巻き込まれないようにするための教育プログラムを展開するとしています。

 
・eネットキャラバン

保護者・教職員等を対象として、判断力等の不十分な子どもを、インターネットのトラブルから守ることを目的にした「e-ネット安心講座」の講師派遣をしています。講師は主に通信業界の関係者が対応しており、私も数回ほどお手伝いをしたことがあります。(e-ネットキャラバン公式サイト)。

 

そして「学校裏サイト」に対する親の意識

これまで、調査結果や政府の対策そして民間企業の支援策等をとりあげてみましたが、親の意識はどうなっているのでしょうか?

 
20071023日、NTTレゾナントと三菱総合研究所は、小学生向けポータルサイト「キッズgoo」上において、小学生の子どもを持つ保護者を対象に、「小学生のインターネット利用に関するアンケート」を実施しました。総括の一部を引用してみます。

インターネットの利用ルールや情報モラル教育については、7割以上の親が「おもに家庭で親が教えるのが適当」と考えており、実際に5割以上の親が子 どもに対し教育を行っていました。フィルタリング機能(サービス)については、7割以上の親が認知しているものの、実際の利用は2割弱にとどまるなど、導入までのハードルがやや高いということがわかりました。しかし、フィルタリング機能を導入していない理由は「不適切なページにアクセスしないと思っているので必要ない」という回答が約5割あり、家庭での教育が適当と認識しながらも、親の危機意識自体はあまり高くない実態が浮き彫りになる結果となりました。

この総括を読むと、情報モラル教育に関して高い意識をもっているが、自分の子どもに限ってアクセスしていないだろうと思っている親が多いというのが現状のようです。

 

最後に

「学校裏サイト」に関して、様々な視点で整理をしてきました。かなり問題は深く、「インターネットは怖くなってきている」でもご紹介したように、「学校裏サイト」だけでなく多くの脅威が子どもたちを襲うケースが増えてくると予想されます。2008年は「学校裏サイト」が拡大してしまうのか、それとも縮小していくことができるのか、正念場をむかえていると言えるでしょう。政府、教育機関、民間企業、そして保護者が議論を重ね、最善の方向に向かっていけばと小学生の子を持つ親としても思うところです。

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