日本は携帯電話鎖国になってしまったのか?
先日、MBAで米国の大学に留学している職場の同僚から相談のメールがありました。内容は、同じクラスメイトから日本の携帯通信事情(特にマルチメディア放送とコンテンツの分野)を知りたいということでした。英語の文献を調べましたが、全くヒットせず、ありもの資料を整えて同僚に資料を送りました。
日本国内ではNTTドコモが新商品の発売を発表しました。「NTTドコモの2007年冬モデルへの本気度と潜むリスク」でも記事を書かせていただきましたが、海外の市場はあまり視野にいれず、日本国内に注力していこうとい戦略が見え隠れしています。
月刊ascii
12月号の記事を読むと、全世界の携帯電話機市場の中で日本は全メーカ合計でも10%以下でNokiaの37%やSamsungの13.7%そしてMotorolaの13.0%を下回っています。完全に携帯電話機器の世界市場から乗り遅れてしまっていることがわかります。
また、11月5日、Googleが携帯向けオープンプラットフォーム「Android」を発表し、携帯メーカやNTTドコモ、KDDI等の33社がアライアンスとして参加するとのことです(関連記事)。仮にGoogleのオープンプラットフォームが携帯電話のOSとして標準化され、どの携帯電話にも搭載されるようになり、さらに“Google Phone”も登場すれば、日本の携帯メーカは国際競争力で生き残っていくことが難しくなっていくのではないかと考えています。
長年、日本は独自の通信規格だったため、海外でほとんど利用できない状況でした。今はGSMや3G等にも多くの携帯電話が対応するようになり、現在NTTドコモ等が積極的に海外でも利用できることをPRしています。やっと通話や通信が海外対応になったのですが、日本人が知らない間に携帯電話によるマルチメディア放送においても大きく変貌しています。
7月31日、総務省が「携帯端末向けマルチメディア放送サービス等の在り方に関する懇談会」の開催を発表しました。10月29日に開催された資料の中で「諸外国における携帯端末向けマルチメディア放送サービスの動向」を読むと大変興味深い内容で、米国、英国、ドイツ、イタリアそして韓国等のマルチメディア放送事情が書かれています。日本では“ワンセグ”で配信されていますが、米国の“MediaFLO”、英国の“DAB-IP”、ドイツの“T-DMB”そしてイタリアの“DVB-H”技術方式は異なっているようです。
日本にiPhoneの上陸を望んでいる声は多いのですが、日本とは異なるGSMの通信規格のため、早くても発売までには1年以上かかると言われています。また過去、NokiaやMotorola等の世界市場ではシェアの高い携帯電話が日本市場へのトライをしていますが、日本独特の携帯電話市場に対して参入できる環境が整っていないというのも課題の一つでしょう。日本に黒船が来襲するのはGoogleのようなOSがオープンプラットフォームになり、SIMロックの解除そして端末プラットフォームの共通化が進んでからになると考えています。
トヨタやホンダ等の自動車産業や、Nintendo等のゲーム産業そしてシャープやパナソニック等の家電等は世界市場をリードする立場ですが、日本の携帯メーカは、世界市場に出て行く体力はもはや厳しい状況にきていると考えています。日本の国際競争力が毎年低下していると言われていますが、携帯電話の基地局の設置や世界から評価されているマンガやゲーム等のモバイルコンテンツ化等の端末以外の分野で世界の携帯電話市場をリードしていってほしいと考えています。