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デヴィッド・ハジュー『有害コミック撲滅! アメリカを変えた50年代「悪書」狩り』(小野耕世、中山ゆかり訳 岩波書店)読了。素晴らしい本です。460p2段組の分厚い本なのに、次が知りたいのでページを繰るうちに読み終えてしまった。
地道な取材、インタビュー、当時の記事などを積み重ね、具体的に何が起き、誰が何を思い、話したかが、きちんと書かれているので、今まで漠然としていた50年代にアメコミをほぼ壊滅させてしまった(そのため、少なくともその直後にはスーパー・ヒーローのみが残った)バッシングの経緯がイメージできる。
取材の中心はコミックブックを制作した側、経営者、編集者、アーティストたちだが、バッシングした側(心理学者、政治家、ジャーナリスト、母親など)、その当時はほとんど発言の機会のなかった読者たち、あるいは読者ですらなかったが、焚書運動に参加した者たちの言説まで紹介し、その事態を多角的に描写している。
また、バッシングによる壊滅的状況と「MAD」誌の関係もクリアに理解できた。のちにアンダーグラウンド・コミックスを始めるロバート・クラムも、当時のコミックスを読んだ「遅れてきた青年」だったこともわかった。ようやく、米国のコミックスの歴史を具体的にイメージできる格好の参考書が翻訳された、といえるだろう。
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