« 2011年11月1日

2011年11月3日の投稿

2011年11月6日 »

昨年9月オープンという渋谷東急本店7階のMARUZEN&ジュンク堂での手塚治虫フェアにあわせ、今日3日午後2~3時、トークショーをやってきました。いやあ、楽しい1時間でした。しかし、最近渋谷に行ってなかったので、東急本店にこんな大きな書店ができていたのを知らなかったなあ。

20人くらいでしょうか、お客さんが集まってくれて、ごく気軽にアドリブでお話ししました。手塚さんの『勇者ダン』を子どもの頃長男が読んで泣いたと、のちに聞いて、その本を譲った話から、『ジャングル大帝』光文社版を手に「漫画少年」連載版と学童社単行本、及びのちのアニメ化前後の描き直し版の話、大学卒業直後に僕が出した自費出版のマンガを各方面に送り、本につけたハガキに手塚さんからお返事をいただいた話や、その数年後に初めてお会いしたらそのことを憶えていらした話、中国で81年に出版された『鉄腕アトム』「ホットドッグ兵団」の豆本(当時の連環画の形式)の話など、現物を持って行って、30分ほど。

それから質問をいただき、色々とお話ししました。「手塚さんは犬より猫を描かれる方が多いようですが、犬派でしょうか猫派でしょうか」とか、「デジタル書籍化について手塚さんはどう思われたでしょう」とか、イタコになって手塚さんに下りてきていただかないと答えられないような質問もありましたが、そこはそれ、話を広げて楽しくお話ししました。みなさん手塚さんがお好きな方々のようで、最後は「一番好きな手塚作品」をこちらからお聞きしたり。やっぱり『ブラックジャック』が多いようなので、好きな回をお聞きしたりしました。みなさんが「お~」と声をあげたり、しきりに頷かれたり、何か手塚仲間みたいになってました。こういうの、いいですね。

中に、手塚マンガのファンの会をなさっている方もいらして、最近どうしても年齢層が高くなるので、若い人にもっと読んでほしいとおっしゃる人もいました。でも、僕はマンガの世界では、亡くなってからもこれだけ読まれている作家はあまりいないので、むしろ読まれていると思っています。たまたま、高校生の女性がいらして、聞くとアニメを見てハマって、今は『火の鳥』を読んでいるそうです。これからも同じように読み継がれるだろうと感じました。僕のゼミにも、そういう若い学生がいますしね。

1時間はあっという間に過ぎ、わざわざ静岡からいらした知り合いの女性もいらしたのですが(すみません、後で捜したらすでに帰られてたみたいで)、とりあえず会場を後にして、書店の店長さんなどとお話しし、そのあとマンガ売り場で例によって買い込んでしまいました。

会場を後にした直後、僕より年上だと思われる方が声をかけてくださいました。その方は、40年前にいた職場が組合闘争などで荒れていたとき、ふと思い立って、手塚さんなどのマンガを集めて棚を作ったのだそうです。すると、みんなそれを読み、職場がなごやかになったのだと話してくれました。コミュニケーション・ツールになったんですね。いい話です。

控室に戻ってからご挨拶したさい、ジュンク堂の方にこんな話も伺いました。ジュンク堂の創設者の方だと思いますが、手塚マンガのファンで、ある時売り場を見ていて、手塚全集が揃っていないのを見つけ、担当者に怒ったとか。この話、MARUZEN&ジュンクのサイトにのっているとお聞きしたんですが、確認できませんでした。ジュンク堂って、ブックローンという通販会社で成功して、書店を作ったんだそうです。丸善の文具部門とジュンク堂書店で数店舗をMARUZEN&ジュンクとして出店し、MARUZENが文具を、ジュンクが本を売っているのだとか。そうだったのかあ。

ほんとは時間があれば、そのままみなさんと喫茶店にでも移動して、もっとお話ししたい雰囲気だったんですが(終わらないでしょうけどね)、何せ本屋好きで売り場を回らないと気がすまず(美術関係の棚も充実してました)、後の時間もあって、心を残してトークを終了しました。こんなトークショーだったら、いくらでもできますね、僕は(笑)。

マンガ売り場の担当の方は、東急本店という性格もあって、今売れているマンガより『ゴルゴ13』が売れたりと、やや苦戦しているとおっしゃってました。お近くの方は、一度行ってみられたらどうでしょう。けっこう充実してると思います。東急本店という場所柄、もっと大人向けで、少し高い商品でも、テーマを設けて一般書籍などと一緒に並べたり棚を工夫したら、かなり面白い本屋さんになるんじゃないかと思いまいました。

natsume

« 2011年11月1日

2011年11月3日の投稿

2011年11月6日 »

» このブログのTOP

» オルタナティブ・ブログTOP



プロフィール

夏目 房之介

夏目 房之介

72年マンガ家デビュー。現在マンガ・コラムニストとしてマンガ、イラスト、エッセイ、講演、TV番組などで活躍中。

詳しいプロフィール

Special

- PR -
最近のコメント
最近のトラックバック
カレンダー
2013年5月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
natsume
Special オルタナトーク

仕事が嫌になった時、どう立ち直ったのですか?

カテゴリー
エンタープライズ・ピックアップ

news094.gif 顧客に“ワォ!”という体験を提供――ザッポスに学ぶ企業文化の確立
単に商品を届けるだけでなく、サービスを通じて“ワォ!”という驚きの体験を届けることを目指している。ザッポスのWebサイトには、顧客からの感謝と賞賛があふれており、きわめて高い顧客満足を実現している。(12/17)

news094.gif ちょっとした対話が成長を助ける――上司と部下が話すとき互いに学び合う
上司や先輩の背中を見て、仕事を学べ――。このように言う人がいるが、実際どのようにして学べばいいのだろうか。よく分からない人に、3つの事例を紹介しよう。(12/11)

news094.gif 悩んだときの、自己啓発書の触れ方
「自己啓発書は説教臭いから嫌い」という人もいるだろう。でも読めば元気になる本もあるので、一方的に否定するのはもったいない。今回は、悩んだときの自己啓発書の読み方を紹介しよう。(12/5)

news094.gif 考えるべきは得意なものは何かではなく、お客さまが高く評価するものは何か
自社製品と競合製品を比べた場合、自社製品が選ばれるのは価格や機能が主ではない。いかに顧客の価値を向上させることができるかが重要なポイントになる。(11/21)

news094.gif なんて素敵にフェイスブック
夏から秋にかけて行った「誠 ビジネスショートショート大賞」。吉岡編集長賞を受賞した作品が、山口陽平(応募時ペンネーム:修治)さんの「なんて素敵にフェイスブック」です。平安時代、塀に文章を書くことで交流していた貴族。「塀(へい)に嘯(うそぶ)く」ところから、それを「フェイスブック」と呼んだとか。(11/16)

news094.gif 部下を叱る2つのポイント
叱るのは難しい。上司だって人間だ、言いづらいことを言うのには勇気がいるもの。役割だと割り切り、叱ってはみたものの、部下がむっとしたら自分も嫌な気分になる。そんな時に気をつけたいポイントが2つある。(11/14)

news094.gif 第6回 幸せの創造こそ、ビジネスの使命
会社は何のために存在するのでしょうか。私の考えはシンプルです。人間のすべての営みは、幸せになるためのものです――。2012年11月発売予定の斉藤徹氏の新著「BE ソーシャル!」から、「はじめに」および、第1章「そして世界は透明になった」を6回に分けてお送りする。(11/8)

オルタナティブ・ブログは、専門スタッフにより、企画・構成されています。入力頂いた内容は、アイティメディアの他、オルタナティブ・ブログ、及び本記事執筆会社に提供されます。


サイトマップ | 利用規約 | プライバシーポリシー | 広告案内 | お問い合わせ