« 2007年11月18日

2007年11月19日の投稿

2007年11月21日 »

学習院講演のあと、演劇専攻の佐伯教授が少し話された中で、僕のTV『のだめ』についての話を引き取り「竹中のあからさまなガイジンの演技は、今まで誰もやらなかったことで、彼の仕事としてもいちばいイイ」と語られた。
演劇論としてどうかは僕にはわからないが、同じように感じていた人はいたんだなと思った。この点については、たしか他でも少し書いたが、あらためて補足しておきたい。
高い鼻まで作ってヅラかぶって「○○デェスカー?」などとワザとらしくやりきる竹中のシュトレーゼマンが出てきたとき、僕は大笑いしながら、これでこのドラマは「何でもOK」になったなと思った。あそこまでやってしまうと、ドラマの中のリアリティの水準、演技や架空性のチューニング・レベルは、もう目一杯敷居が下がってしまう。あとは何やっても「範囲内」な感じになるのだ。
その上で、マンガ原作のギャグそのままを映像化するような無茶ブリな演出を強行し、それと同時に、意外なほどしっかりとクラシック演奏の場面を徹底した。最後のブラームス1番なんて曲を、もともとコメディで逃げてもいいところを、あそこまでしつこくキチンと再現して聴かせたのは、マンガもクラシックもバカにしていないスタッフの愛情を感じる場面だった。そこまでやったからこそクラシックCDの売れ行きが、このドラマによって上がったのだろう。昔なら信じられない事態=マンガやTVを「バカにしない」態度の共有が、アニメ・マンガがこの国で基礎教養的な存在になっていることを意味しているだろうと思う。
そういう意味で、今やクラシック界からマンガ原作のコメディTVドラマに積極的に協力してもらえる時代になり、音大生までファンをもったのは、あきらかにこの国のクラシック=ハイアートと、マンガ、TV=マスカルチャーの互いの敷居が下がり、「開いて」しまったことを意味する。本当は、そのことに「誰も驚いていない」ように見えることにこそ、驚くべきだろうというのが僕の観点なのだった。
これは、この国の文化状況のジャンル間流動性みたいなものを示しているんじゃないだろうか、というようなことを示唆したかったのだった。

つまり、マンガ・アニメを含む大衆文化をとらえ評価する知的な枠組の問題なんだっていいたかったんだね。

natsume

« 2007年11月18日

2007年11月19日の投稿

2007年11月21日 »

» このブログのTOP

» オルタナティブ・ブログTOP



プロフィール

夏目 房之介

夏目 房之介

72年マンガ家デビュー。現在マンガ・コラムニストとしてマンガ、イラスト、エッセイ、講演、TV番組などで活躍中。

詳しいプロフィール

Special

- PR -
最近のコメント
最近のトラックバック
カレンダー
2013年5月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
natsume
Special オルタナトーク

仕事が嫌になった時、どう立ち直ったのですか?

カテゴリー
エンタープライズ・ピックアップ

news094.gif 顧客に“ワォ!”という体験を提供――ザッポスに学ぶ企業文化の確立
単に商品を届けるだけでなく、サービスを通じて“ワォ!”という驚きの体験を届けることを目指している。ザッポスのWebサイトには、顧客からの感謝と賞賛があふれており、きわめて高い顧客満足を実現している。(12/17)

news094.gif ちょっとした対話が成長を助ける――上司と部下が話すとき互いに学び合う
上司や先輩の背中を見て、仕事を学べ――。このように言う人がいるが、実際どのようにして学べばいいのだろうか。よく分からない人に、3つの事例を紹介しよう。(12/11)

news094.gif 悩んだときの、自己啓発書の触れ方
「自己啓発書は説教臭いから嫌い」という人もいるだろう。でも読めば元気になる本もあるので、一方的に否定するのはもったいない。今回は、悩んだときの自己啓発書の読み方を紹介しよう。(12/5)

news094.gif 考えるべきは得意なものは何かではなく、お客さまが高く評価するものは何か
自社製品と競合製品を比べた場合、自社製品が選ばれるのは価格や機能が主ではない。いかに顧客の価値を向上させることができるかが重要なポイントになる。(11/21)

news094.gif なんて素敵にフェイスブック
夏から秋にかけて行った「誠 ビジネスショートショート大賞」。吉岡編集長賞を受賞した作品が、山口陽平(応募時ペンネーム:修治)さんの「なんて素敵にフェイスブック」です。平安時代、塀に文章を書くことで交流していた貴族。「塀(へい)に嘯(うそぶ)く」ところから、それを「フェイスブック」と呼んだとか。(11/16)

news094.gif 部下を叱る2つのポイント
叱るのは難しい。上司だって人間だ、言いづらいことを言うのには勇気がいるもの。役割だと割り切り、叱ってはみたものの、部下がむっとしたら自分も嫌な気分になる。そんな時に気をつけたいポイントが2つある。(11/14)

news094.gif 第6回 幸せの創造こそ、ビジネスの使命
会社は何のために存在するのでしょうか。私の考えはシンプルです。人間のすべての営みは、幸せになるためのものです――。2012年11月発売予定の斉藤徹氏の新著「BE ソーシャル!」から、「はじめに」および、第1章「そして世界は透明になった」を6回に分けてお送りする。(11/8)

オルタナティブ・ブログは、専門スタッフにより、企画・構成されています。入力頂いた内容は、アイティメディアの他、オルタナティブ・ブログ、及び本記事執筆会社に提供されます。


サイトマップ | 利用規約 | プライバシーポリシー | 広告案内 | お問い合わせ