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「貸しおしぼり業」というと、イノベーションという言葉からはるか遠くに位置する商売のように感じます。しかしどんなところでも新しい手法というものは生まれる、という良い例が日経MJで紹介されていました:

■ 招客招福の法則 (110) 貸しおしぼり業者の提案(日経流通新聞 2006年5月3日 第3面)

最近書籍としても出版された(『招客招福の法則―儲けの王道がみえる88の話』)、人気コーナーの記事。内容はこんな感じです。ある町で貸しおしぼり業を営む会社の2代目が、自社の位置付けを「おしぼりなど飲食店向け業務用資材を提供する会社」から、「快適で楽しいお店作りをサポートする会社」に変えた。それに伴って、顧客に「インパクトを与えるおしぼりの出し方」というA4用紙1枚の紙を配布したり、「おしぼりをより楽しくご使用していただくために」というパンフレット(おしぼりを折り紙のように使って動物を作る方法などが載っている)を作るといった活動を始めた。その結果、この貸しおしぼり業者は前年比120%という成果を達成した---というもの。

考えてみれば、おしぼりは外食において隠れた重要ポイントです。暑い日は冷たく、寒い日は温かくあって欲しいですし、何より清潔感が感じられなければなりません。食事の前に出てくるものですから、ここで「おやっ?」という印象を与えると、肝心の料理の評価にも影響を与えかねないものです。従ってその「使い方」に価値が生まれることになりますが、下図のように、貸しおしぼり業者は様々な業種の顧客からノウハウを得れる立場にあります。

20060511_1

この立場を利用すれば、貸しおしぼり業者は顧客に新たな価値を提供することができます。実際に日経MJの記事の例でも、「インパクトを与えるおしぼりの出し方」は、この業者が知る繁盛店が実際に行っているおしぼりの出し方を集めたものだそうです。

仮に従来の貸しおしぼり業者を「外食」というバリューチェーンの中に位置づけて考えてみると、単におしぼりという「業務用資材」を提供するサプライヤーでしかありません。しかし上記の例では、業者はサプライヤーというポジションを飛び越えて、チェーンの最後に位置する飲食者たちに新たな価値を与えている、と捉えることができるのではないでしょうか。そんな「バリューチェーンの先を考える」行動を取ったことが、この貸しおしぼり業者が成功した一因だと思います。

いつの号だったかは忘れてしまったのですが、最近の日経ビジネスで、「これまで白一色のトラック(後で顧客/別業者が独自の塗装を施す)を出荷していた工場が、最終品としての塗装まで出がけるようになった」という記事を読みました。それによって、社員は街を走るトラックとそのドライバーを強く意識するようになり、自社の製品についてより深くなった---ということです。どんな業界・業種にせよ、バリューチェーンの先へ先へと進んで考えてみることは、イノベーションを生み出す1つのきっかけとなるのではないでしょうか。

アキヒト

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小林啓倫

小林啓倫

株式会社日立コンサルティングの経営コンサルタント。WEBサービスの企画・運営、新規事業の立案などに携わる。個人でPOLAR BEAR BLOGも執筆中。

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