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決して最先端ではない、けれど日常生活で人びとの役に立っているIT技術を探していきます。

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またまたウチの変な奥さんの話ですが、彼女は体温計を脇の下にはさむのが苦手なんだそうです。「脇の下にスキマが空いているから」と変なことを言っているのですが、真偽はともかくとして、ほとんどの場合は舌下で測っています。しかし僕や子供が脇の下ではさんでいるものを、(ちゃんと洗っているとはいえ)口にいれるのも抵抗があるんじゃないかなぁ、とふと感じたりしてます。

考えてみれば、体温計というのも使いづらい道具です。脇の正しい位置に当てないといけないし、どのくらいの間はさんでいれば良いか分からないし(電子体温計は音で完了をお知らせしてくれますが)、測っている間は計測結果を見ることができないし、表示が小さいので目をこらさないといけないし。また子供は「体温計」というものが分かっていないので、体温を測ろうとすると大泣きしてしまい、脇にはさんで押さえつけていなければなりません。「耳で測る体温計」を使えばいいだろうって話なのですが、なぜかウチで買ったやつは3回に1回の割合で異常値を出してしまうので(使い方が悪いのでしょうが)、もっぱら旧式の電子体温計に頼っています。

ところが最近は、進化した棒状電子体温計が登場しているようです。先週の日経流通新聞にこんな記事がありました:

■ 丸みある医療器 気持ちも丸く -- オムロンヘルスケア、外部人材活用(日経流通新聞 2006年5月3日 第14面)

2004年11月にオムロンヘルスケアから発売された「けんおんくん MC-670」について。価格は従来製品の2倍程度ながら、体温計では珍しいヒット商品となっているそうです。秘密はその形状。公式サイトの写真だとちょっと分かりにくいかもしれませんが、日経の記事を引用すると、「センサー部分は従来製品の3倍近い大きく平らな形状で、液晶画面も広くして検温結果の数字をわかりやすくしている」とのこと。センサー部分が平らなため、子供が脇にはさんでもずれにくく、また30秒で測定可能なので子供を持つ親からの支持を受けているそうです。これならうちの奥さんでも脇の下で測れるかも。

なぜこのようなイノベーションがもっと早く登場しなかったのでしょうか?日経の記事を読むと、「従来の電子体温計は棒状だった水銀体温計の名残もあり、他社メーカーを含めて先端のセンサー部分が細長くとんがった形状が一般的だった」との解説があります。客観的なデータはありませんが、「体温計は細長くとがったもの」という水銀時代のイメージが残っていたこと---いわば「惰性」が革新を妨げる一因となっていたのでしょう。

惰性は必ずしも悪ではありません。細長くてとがった形状は、水銀を使用する場合にはベストなものなのでしょう。従って「水銀を使用して温度を測る」という前提が続く限りにおいては、惰性を続け、形状以外の分野で改善を進めることの方が理に適っています。しかし「デジタル技術でも温度が測れる」という前提が登場した現在では、惰性はデザインの可能性を狭めるものでしかありません。その惰性に気付き、打破することができたのがオムロンのMC-670だったのではないでしょうか。

「惰性」は無意識のうちに続けてしまうという点で、かなり性質が悪いものです。私たちの身の回りにも、知らず知らずのうちに続けてしまっている惰性があるのでしょう。それを見直すことはかなりの労力を要するかもしれませんが、新たなイノベーションを生むきっかけとなると思います。

アキヒト

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小林啓倫

小林啓倫

株式会社日立コンサルティングの経営コンサルタント。WEBサービスの企画・運営、新規事業の立案などに携わる。個人でPOLAR BEAR BLOGも執筆中。

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