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プロ野球に興味の無い方には恐縮ですが、実は昨日、パリーグでこんな騒動が持ち上がっていました:

日本ハム新庄「襟付き」出場で波紋(日刊スポーツ)

日本ハムの新庄外野手が、襟付きのシャツで試合に出場して物議を醸しているというもの。とはいえ新庄選手も事前に審判団に確認を取った上での行動で、ルール的には問題ありません。文句を言っているのは対戦相手だったソフトバンクホークスで、「少年たちに悪影響を与える」から問題視しているとのこと。

ホークス側が本気でそんなことを思っているとは思いたくないのですが、理性的に考えれば、野球選手が襟付きのシャツを着たぐらいで非行が増えるわけもないでしょう。ネット上の反応も、概ね「バカげている」「ホークスの選手だって少年に悪影響を与えるような行動をしている」という風に新庄選手に好意的なようです。

しかしなぜ、「野球選手がユニフォームを着崩すのは良くない」といった議論が出てくるのでしょうか?それを考えるヒントを与えてくれる記事がありました:

ヤクルトスワローズ・古田敦也の”年俸交渉人”が教える(ITmedia Jobs)

タイトルにある通り、ヤクルトの古田敦也選手兼監督の代理人として有名なプロスポーツ選手エージェント・辻口信良弁護士が年俸交渉術についてコメントした記事。この中で、このような指摘が出てきます:

 ベースボールやサッカーなどのスポーツが、明治時代に欧米から入ってきた時に、スポーツの語源通りに「遊び」の方向に行けばよかったんですが、日本の場 合、富国強兵策の手段として、「体育」という学校教育の中に組み入れてしまったのです。知育・徳育・体育という教育の一環に組み入れた結果、スポーツが体 育化したといえます。
 スポーツを教育の問題にしてしまったことで、それにお金の話を絡ませるのははばかれるようになった。そこで、スポーツとお金の親和性が弱くなってしまったんだと僕は思っています。

辻口氏が指摘しているのは給与交渉時の問題ですが、今回の新庄選手のケースにも当てはまる問題ではないでしょうか。つまり「スポーツ=教育」という概念がどこかで残っているために、「ユニフォームを着崩す=教育に反する、従って悪」という発想になるように思います。長髪やアクセサリーの着用が時々問題になるのも、同じ背景からでしょう。

誤解を解くために言っておくと、別に「スポーツ=教育」という発想が良くないというわけではありません。スポーツを通じた教育というものは確かに効果があると思いますし、スポーツ選手が少年・少女の模範となる(古い言い方ですが)こともあるでしょう。問題なのは、「スポーツ=教育」という概念に無意識のうちにとらわれ、「襟付き=青少年に悪影響」という発想が脊髄反射的に出てくることです。

新庄選手の行動は、野球をエンターテイメント・ビジネスとして解釈した場合、非常に合理的なものです。当日の新庄選手はヒット無しだったそうですが、ユニフォームによって観客の注目を集めました。もちろん「プレーに集中しろ!」という批判はあると思いますが、観客を楽しませることが「エンターテイナー」たる選手の役目ならば、様々な部分で注目を集める新庄選手は選手の鑑と言うべきではないでしょうか。

「プロスポーツ=エンターテイメント」という発想から出てくるアイデアには、当然、良いものも悪いものもあります。しかしアイデアの優劣はその都度論じれば済む話であり、最悪なのは「スポーツ=教育」という発想で思考停止してしまっていることです。新庄選手の襟付き出場問題が示しているのは、この「思考停止状態」がいかに日本のプロ野球に蔓延しているかということではないでしょうか。WBCで一時的に盛り返したとはいえ、日本のプロ野球が(ビジネスとして)衰退を続けているのは、こんなところにも理由があると思います。

考えてみれば、無意識のうちに思考停止してしまっているのは、プロ野球界だけではないでしょう。私たちの身の回りにも、思考停止状態は潜んでいます。襟付き問題のように、ある行動を「良くない」「不可能だ」と判断するのであれば、「なぜ良くないのか」「なぜ不可能なのか」という理由の前提をよく考えてみることが必要でしょう。もしかしたら、「良くない」とされる行動を取ることこそ、大きなブレークスルーを生むきっかけとなるかもしれません。

アキヒト

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小林啓倫

小林啓倫

株式会社日立コンサルティングの経営コンサルタント。WEBサービスの企画・運営、新規事業の立案などに携わる。個人でPOLAR BEAR BLOGも執筆中。

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