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決して最先端ではない、けれど日常生活で人びとの役に立っているIT技術を探していきます。

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ヒット商品を生み出すのは大変な作業です。開発した商品がヒットするかどうかは「実は宝くじに当たるようなもの」と仰る人もいますが、筋道立てて「ヒット商品を生み出す方法」を考えてみることは有益でしょう。

その手っ取り早い方法の1つは、実際にヒットした商品の開発過程を探ることです。最近『なぜ、伊右衛門は売れたのか。』などいう本が出版されていますが、この種の本が業種・業界の枠を超えて人気を集めるのも、成功事例から学べることが多いからに違いありません。今日の日経流通新聞にも、こんな参考にできそうなヒット商品の話が掲載されていました:

■ 着眼着想 -- 電子暗記カード「メモリボ」(日経流通新聞 2006年4月28日 第3面)

単語帳をデジタル端末化した「メモリボ」という商品について。恥ずかしながら僕は初耳だったのですが、この「メモリボ」、発売2ヶ月で5万台を超える注文が殺到するほどのヒット商品とのこと。事実、公式サイトには「現在、この商品はご好評につき品薄状態が続いております」とのメッセージが掲載されています(4月28日現在)。ちなみに記事中の商品解説を引用すると:

暗記カード2000枚分の質問と解答を自由に記録できる。ボタンを押すと画面が切り替わり、入力した項目を順に確かめられる。ページを自動的に送る機能やランダムに表示する機能なども付けた。専用ウェブサイトから英単語集などのコンテンツもダウンロードして使える。

とのこと。ちなみにITmediaでも紹介記事があったので、リンクしておきます:

単語カードもUSB接続の時代(ITmedia)

シンプルで、感覚的に「売れそう」という気にさせる製品ですが、なぜヒットしたのかをちょっと考えてみたいと思います。(以下、本当にそれが理由だったかどうかは保証しかねますので、「仮説」としておきます。)

仮説1.適切なマーケットをターゲットにしたこと

一時期よりはブームが衰えてきたそうですが、人々の資格習得熱・向学熱というものはまだまだ盛んです。メモリボが成功した一因は、この「学習市場」とでも言うべき、広大な市場をターゲットにしたことではないでしょうか。事実、この分野には様々な新商品/新サービスが登場しています。ポッドキャスティングを使った語学講座配信などはその好例ですし、先日は語学講座と物販を組み合わせるなどというアイデアもありました(参照記事「教育×物販」)。それを考えると、学習市場は新しいアイデアでまだまだ拡大が可能なマーケットなのかもしれません。

仮説2.機能をシンプルにしたこと

「メモリボ」の機能はただ1つ、暗記カードです(ダウンロード機能などもありますが、暗記カードという使い方をサポートするだけであり、それ自体が独立したものではありません)。PCに接続して入力する仕組みなので、キーボードなどの文字入力用インターフェースもありません。記事の中で「音楽再生機能なども盛り込むべきだ」という圧力があったものの、最終的に暗記カード機能だけに絞ったことが紹介されています。

機能を絞り込んだことで、メモリボは「電子版暗記カードだ」という説明が可能になりました。それによって、消費者はまず頭の中で「暗記カードとしての使い方」を思い浮かべることができ、「確かに使えそうだ、手に取ってみるか」という思いにつながったのではないでしょうか。仮にメモリボが音楽再生機能付きで、「音楽が聴ける携帯用記録端末!」などという売り出し方がされていたら、消費者が「メモリボ」という製品をどう生活の中に位置付けるかで混乱してしまったことでしょう。最終的に理解されたかもしれませんが、発売2ヶ月で5万台というスタートダッシュは不可能だったと思います。

仮説3.シンプルにした機能を強化したこと

「メモリボ」はデジタルの特性を最大限に活かし、暗記カード機能を強化しています。前述の引用にあった通り、ページ送り機能やランダム機能、ダウンロード機能など、紙媒体では不可能なことが実現されているわけです。これにより、シンプルな製品でありながら「売れる」ポイントを得ることになりました。それが「便利そうだということが分かりやすい」というメモリボ最大の利点につながっているのではないでしょうか。

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パッと思いついたことを上げてみました。他にもネーミングが良かったから、操作性が良かったからなど、様々な可能性が考えられるでしょう。しかし日経とITmediaの記事を読む限りでは、やはり「シンプルで分かりやすい」という点が最もヒットに貢献しているように思います。

「人気が出るように、できるだけ様々な機能を盛り込もう」---確かにその心境は理解できます。特にWEBアプリケーション/サービスの分野では、機能追加が簡単に行えますから、この考え方に陥りがちなのではないでしょうか(「最近タグが流行しているから、ウチのサービスにもタグ機能を付けよう!」といった具合に)。しかしメモリボの成功は、むしろシンプルな方こそ、ヒットが生まれやすくなる場合があることを示していると思います。

アキヒト

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小林啓倫

小林啓倫

株式会社日立コンサルティングの経営コンサルタント。WEBサービスの企画・運営、新規事業の立案などに携わる。個人でPOLAR BEAR BLOGも執筆中。

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