7つも要らない、1つでいい
ITに強いビジネスライター森川滋之です。
10年来のお付き合いをいただいている、サイレントセールストレーナーの渡瀬謙さんから、またご献本いただきました。いつもありがとうございます。
実は、いただいたのは6月。書評を書かねば、書かねばと思いつつ今日になってしまいました。
仕事柄、著者や編集者からご献本いただくことが多いのですが、僕はあまり書評を書きません。
渡瀬さんの本については、友人だからということもあるのですが、とてもいいと思うことがあるので、いつも取り上げています。
そこで、あまり内容には踏み込まず、渡瀬さんの本の何がいいのかについて、今回は書きたいと思います。
● まず一貫している
今回、ご献本いただいたのは、『口ベタ、あがり症、人見知りのための 「質問」で会話を盛り上げる方法』(大和書房)です。
渡瀬さんの本の読者ターゲットは一貫して、「口ベタ、あがり症、人見知り」といった内向的な人たちです。
初期は、普通の営業本を出していたのですが、『内向型営業マンの売り方にはコツがある』(大和出版)が売れてからは、ずっとそうです。
たまに、もう少し一般的な人向けのタイトルの本も出していますが、「はじめに」を読めばやっぱり、内向的な人たち向けと分かります。
※1冊「左きき向け」という異色の本もありますが、何となくメジャー感がないところは共通しています。
このターゲットで20冊も本を出しているのですから、すごいことだと思います。
この一貫性は真似できません(実際渡瀬さんは、とても頑固です)。
なお、僕は本当は、人見知りで口ベタなのですが、それを普段は隠しているので、正直このような本を電車の中で読むのは大変つらいことです。ご献本時には、カバーもつけてほしいなといつも願っています。
●一本筋の通った内容
読者ターゲットの一貫性にも感心しますが、内容についてはもっと感心しました。
渡瀬さんの本は、年々その傾向が強くなっていますが、あまり多くのことを語りません。この本に至っては、主たるメッセージはたった1つです。
なにしろ第1章のタイトルが、「「いい質問」ができるたった1つのコツ」です。そして、あとは手を変え品を変え、このことを強化する具体例やエピソードが並ぶという書き方になっています。
※「たった1つのコツ」なので、ここでは書きません。よろしければ立ち読みでもいいので、一度ご自身で確認してください。
これを、渡瀬さんも20冊以上書いてきて、そろそろネタがなくなってきたと捉えることもできます。
しかし、僕はこれはすごいことだと思いました。
フリーライターという職業柄、インタビューの機会がとても多いのですが、このコツを知っているだけで、取材が盛り上がると断言できます。
僕は漠然とやっていましたが、本当にその通りだと感心しました。たまに盛り上がらないときには、このコツを思い出して軌道修正します。すると、たちまち盛り上がります。
●コツは7つも、ましてや100も要らない
2010年8月。今はなき誠ブログが始まって半年経たないころ、アイティメディアさんが『7つの習慣』のキャンペーンをやるのでブログに書いてくれと言われたことがあります。
真面目な僕は、11回にわたって書評を書きました。リンクの一覧を載せます。
http://blogs.itmedia.co.jp/toppakoh/2010/08/7119.html
http://blogs.itmedia.co.jp/toppakoh/2010/08/72120.html
http://blogs.itmedia.co.jp/toppakoh/2010/08/73121.html
http://blogs.itmedia.co.jp/toppakoh/2010/08/74122.html
http://blogs.itmedia.co.jp/toppakoh/2010/08/74122_1.html
http://blogs.itmedia.co.jp/toppakoh/2010/08/76124.html
http://blogs.itmedia.co.jp/toppakoh/2010/08/win-losewin-win77125.html
http://blogs.itmedia.co.jp/toppakoh/2010/08/78126.html
http://blogs.itmedia.co.jp/toppakoh/2010/08/79127.html
http://blogs.itmedia.co.jp/toppakoh/2010/08/710128.html
http://blogs.itmedia.co.jp/toppakoh/2010/08/7129.html
読んでくださいというよりも、真面目に読みましたと言いたくて載せました(行が増えてすみません)。
とにかく真剣に読んだのですが、いま覚えているのは、あの有名な「時間管理のマトリクス」(重要度と緊急度のマトリクス)だけなのです。
しかしながら、僕が今うまくいっている大きな理由は、このマトリクスを正しく実践しているからなのです。
要するに、あの分厚い本の中身を1つしか覚えていないが、それで人生うまくいっているということなのです。
ただやったことがある人なら分かると思うのですが、あれは本当に実践が難しい。僕は、5年ほど試行錯誤して、ようやくできるようになりました。
ですので、時間管理のマトリクスだけの200ページぐらいの本だったらもっと良かったのになあと、どうしても思ってしまうのです。
7つでも、本当に役に立っていることは1つだけ。読み返せば、これも実は『7つの習慣』に書いてあったのかと思い出すこともあるでしょう。しかし印象には残っていません。
世の中には、質より量ということで、50も100もコツが書いてあるビジネス本があります。それを否定するわけではありません。リファレンスとして、困ったときに開くという本も必要でしょう。特に初心者向けには。
しかし本当に値打ちがある本は、たった1つ、それさえ実践すればいろいろなことがうまくいくコツがあり、それを徹頭徹尾たたき込んでくれるような本ではないでしょうか?
そうだとすれば、渡瀬さんはとても価値のある仕事をしていると、僕は思うのです。
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