【EUデータ法】対応しなければいけない日本の5つの業種と具体的な対応のチェックリスト
EUデータ法が動き始めました。
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2023年12月:EU官報で公布
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2024年1月11日:正式に発効(法律として存在する状態に)
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2025年9月12日:主要条文が適用開始(企業が実務的に守らなければならない日)
企業への義務が始まった日=施行日(適用開始日)は先週の2025年9月12日 となります。
過去2年の間、国際弁護士事務所や外資コンサル会社などによるセミナーが多数開催されましたが、未だに何なのかよくわからないという方々も多いと思います。EUの規制は「森」みたいなものですから、EU規制はそもそも何なのかをある程度知っている人でないと、迷子になってしまいます。
僭越ながら小職は海外調査の会社にいた時代に、EUの通信関連の規制の調査と報告書執筆をみっちりやらせていただいた経験があります。具体的には以下の部分でした。
◉EUの電子通信法典(EECC: European Electronic Communications Code, Directive (EU) 2018/1972) のモバイル通信市場規律(周波数割当・事業参入条件、競争促進)2022-2023年頃、特にドイツ国内法の対応が遅れていました。
◉EECC の 固定通信/ブロードバンド普及・高速ネットワーク整備に関する部分。イギリスのブロードバンド推進政策を細かく調査しました。
あの時の「勉強」ではずいぶん苦労しました。来る日も来る日も英語資料を読み続けました。ある程度資料の量を読み込むと、展望ができるようになります。そのようにして「森」全体を把握し、クライアントが求める細部の樹木叢に分け入っていくのです。
前置きはこれぐらいにして、【EUデータ法】の投稿の1本目として、ざっくばらんに、日本企業で対応が必要になるのはどういう企業なのか?現時点で最高の知性と知識を持っているChatGPT 5に分析させました。(後々、ChatGPT 5を活用して、自社で、EUデータ法に関連した詳細報告書を得る手法なども共有したいと思います)
EUデータ法に対応が必要な日本企業の5業種
1. 自動車メーカー・サプライヤー
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コネクテッドカーやADAS関連サービスから大量の走行データが出る。
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ユーザー(車の所有者)が「自分の車の利用データを第三者サービスに渡したい」と要求したら応じる義務。
2. 産業機械・精密機器メーカー
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IoT対応の工作機械、医療機器、建機など。
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稼働データやセンサーデータをユーザーに開示可能にする「設計対応(アクセス・バイ・デザイン)」が必要。
3. 家電メーカー(白物・スマート家電)
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スマート冷蔵庫、エアコン、ウェアラブル機器などから発生する利用データが対象。
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EU市場に販売している場合、ユーザーへのデータアクセス権を組み込む必要あり。
4. クラウド・データ処理サービスをEUに提供する企業
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日本発でも、EU顧客を持つクラウド事業者・SaaSベンダーは**「スイッチング義務」**(契約や技術的障壁なく乗り換え可能にする)に従う必要がある。
5. 部品・素材メーカー(間接的義務)
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IoT製品を完成品メーカーに納入している場合、顧客から「データアクセス可能な設計にしてほしい」と求められる可能性が高い。
対応不要な企業(基本線)
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EUに製品・サービスを提供していない企業。
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EU市場でデータを発生させる仕組みを持たない企業。
⇨つまり、「EUに輸出するIoT製品/コネクテッド製品」「EU顧客向けクラウドサービス」を持つ日本企業は要対応です。
分野別チェックリスト
自動車メーカー・サプライヤー
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コネクテッドカーからのデータ特定
走行データ、位置情報、センサー情報、運転挙動ログなど、EUで発生するデータを把握しているか。 -
ユーザーアクセス権への対応
オーナーやフリート事業者が「第三者にデータ提供を」と求めたときに、技術的に対応可能か。 -
アフターマーケットとの関係
修理・保険会社など第三者がアクセスする際の契約・ポリシーを整備しているか。 -
営業秘密との切り分け
車両制御アルゴリズムなど秘匿部分と、開示すべき利用データを区別できているか。 -
契約・利用規約の更新
ディーラー・リース契約にデータアクセス・共有に関する条項を組み込んでいるか。
産業機械・精密機器メーカー
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稼働データの棚卸し
工場・建機・医療機器などから取得する利用データをリスト化しているか。 -
アクセス・バイ・デザイン
顧客(工場ユーザーなど)が自分の機器データを機械可読形式で取得できる設計になっているか。 -
B2B契約の見直し
サービス契約に「データ提供の範囲と条件」をFRAND原則(公正・合理的・差別的でない条件)で定義しているか。 -
機密・安全性の確保
設備の制御情報やノウハウが流出しないための契約・技術措置を講じているか。 -
公共機関からの要請対応
非常時にEU当局がデータ提供を求める可能性を想定しているか。
家電メーカー(スマート家電・ウェアラブル)
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対象製品の洗い出し
スマート冷蔵庫、エアコン、スマートウォッチなど、EU販売製品の中でデータを発生させるものを特定。 -
ユーザー通知と同意
消費者が「どんなデータを取得・利用できるのか」を分かりやすく確認できる仕組みを用意しているか。 -
アプリ/クラウド連携の整合性
アプリ経由で収集するデータも含め、EUデータ法のアクセス義務を満たしているか。 -
サービス切替時の設計
消費者が他のアプリ・サービスにデータを移行できる仕様になっているか。 -
カスタマーサポート体制
消費者からデータ提供要請があったときに、窓口とプロセスを整えているか。
クラウド・データ処理サービス(SaaS含む)
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EU顧客の有無確認
EU居住の法人・個人がサービスを利用しているかを確認。 -
切替義務対応
ユーザーが他クラウドに移行したいとき、契約・技術的に阻害要因がないか。 -
エグレス費(データ転送料)
2027年から全面禁止になるので、それまでの料金体系をどう見直すか計画があるか。 -
相互運用性の準備
標準API・共通形式でデータをエクスポートできる仕組みを整備しているか。 -
契約条項の透明性
データポータビリティや利用条件が明確に記載されているか。
✔︎まとめると:
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自動車・機械→「データアクセス・バイ・デザイン」設計義務
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家電→消費者の「利用データ取得・移行」への対応
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クラウド→「切替の自由」とエグレス費禁止対応
この関連、様々な角度から投稿を作成して共有したいと思います。