日本企業も1年以内にヒューマノイドを商品化できる。中国各社の部品を組み合わせれば【紙版調査報告書告知】
ここ2ヶ月ぐらいヒューマノイド(AIを搭載して自律的に動く人型ロボット)の周辺を調査して来ました。ビックピクチャがやっと見えてきました。3つにエッセンスをまとめます。
米国、欧州、中国のヒューマノイド最大手企業の実用化の動きまとめ
- テスラ(Tesla)やFigure AIやボストンダイナミクス(Boston Dynamics)のような商用化が間近いヒューマノイド企業のほぼ全ては、中国に30数社あるヒューマノイド・エコシステム企業から部品を調達している。センサー、アクチュエーター、減速機など。従って理論的には、日本企業も中国のヒューマノイド・エコシステム企業から部品を調達して日本で組み立てればヒューマノイドを商品化できる。(「脳」については以下参照)
- ヒューマノイドの商品化のためには、部品を組み合わせて構成した人型のロボットをどのようにトレーニングするかがカギになる。言い換えれば「脳」をどう鍛えるかがカギ。大別すると、1)テスラのように独自のコンピュータ(FSD)を用いて独自開発したトレーニング手法によるものと、2)NVIDIA Omniverseで活用できるロボット技術スタック(特にIsaac Lab)を用いて仮想空間で強化学習を行うものとがある。後者の方が開発速度は速まる。仮想空間で大量の強化学習がスムーズにできるため。(中国のヒューマノイド大手はほとんどが前時代的な人間の模倣学習/モーションキャプチャに留まる。これにより「脳」の精度が劣る)
- ボストンダイナミクスのAtlasはすでに現代自動車の米国工場で採用が決まり、実用化フェーズに入った。これに続いて、Figure AI、1X TechnologiesなどNVIDIA Isaac Labを用いてトレーニングを行ってきたヒューマノイド企業が続々と実用化フェーズに入っていく兆しがある。これに対して非NVIDIA技術を用いてトレーニングしているテスラ、中国の大手ヒューマノイド企業は劣後する可能性が高い。つまり実用化には時間がかかる。(中国大手ヒューマノイド企業のうちどの企業がNVIDIAを用いており、どの企業がそうでないかは調査中。いずれにしてもNVIDIA AI半導体が禁輸されている中国であるため、欧米のヒューマノイド企業と比較すると劣後する可能性は高い)
この3つのポイントを押さえてヒューマノイドに関わる全ての企業を見ていくと、視界がはっきりとしてきます。今で言う「解像度の高い市場動向」が見えてきます。
米国のTeslaやFigure AIのヒューマノイド製品は中国の部品で作られている
TeslaのヒューマノイドOptimusや今話題の米国のFigure AIのヒューマノイドに部品を提供している非常に興味深い中国企業があります。中国の精密製造企業である深圳市長盈精密技術股份有限公司(Changying Precision)です。英語名でEWPT(Everwin Precision Technology)と呼ばれることもあります。おそらくTeslaもFigure AI も"Everwin Precision Technology"ないし"EWPT"と呼んでいると思います。リンク先は彼らのウェブサイトですので、英語表示にして詳細を確かめて下さい。
長盈精密技術が提供する優れたヒューマノイド部品
同社は2001年創業。広東省深圳市に本社があります。2010年深セン証券取引所中小板に上場(300115.SZ)しています。
主な製品は、スマートフォン用金属筐体や精密電子部品。その延長で、ヒューマノイドロボット向けに関節用高精度歯車部品、軸受、トルクセンサー部品などを開発しています。関節モジュールは評判が良いそうで、95%の量品率であることが中国語メディアで報じられています。2025年には10万ユニット以上の受注を見込んでいるとのことで、これが米国のTesla Optimus向け、及びFigre AI向けだと思われます。
自社のスマホ筐体加工技術で培ったダイカスト・CNC加工を活かし、軽量で強靭なロボット関節フレームや歯車ボックスを量産しています。
その他、長盈精密は、ヒューマノイドロボットの「小脳」(運動制御ユニット)と「身体」(機械構造、センサー、アクチュエーターなど)を提供しており、これらは顧客の「大脳」(大規模言語モデルや視覚言語モデル)と統合され、完全なヒューマノイド知能システムを形成することが可能だそうです。
同社のヒューマノイド関連製品は、中国のヒューマノイド大手である宇樹科技(Unitree Robotics)、優必選(UBTECH)、智元机器人(AgiBot)などにも提供されています。
日本企業も中国の部品を組み合わせればヒューマノイド製品が作れる
日本の産業ロボットメーカーや自動車メーカー、その他の製造業の企業などがヒューマノイドロボットを新規事業として始める場合には、長盈精密技術のようなすでに実績があり、上海や深圳の株式市場に上場している企業が多数ありますので、その中から適した企業を選んで、部品調達をするなり、完成体となったヒューマノイドを調達するなりすればよい訳です。
この関連を2ヶ月ぐらい調査していて、何度も何度もChatGPT + ディープリサーチの詳細な調査報告書を作って確認してきた結果、日本企業が中国のヒューマノイド関連企業の部品なり完成体なりを活用すれば、Tesla社が2025年中に数千体を市場に出荷、翌年には数万体を市場に出荷するとイーロン・マスク氏が公言している、そのスピードと、ほとんど遜色がないスピードでヒューマノイド事業を立ち上げられます。(今泉注:ここの所を書いた数日後にボストンダイナミクスのAtlasが現代自動車で採用されることに関する日経報道があった。現代自が米工場でヒト型ロボ、組み立て4割自動に 関税にらみ効率化。元記事はロイター Boston Dynamics' humanoid robot to hit Hyundai U.S. factory in 2025 テスラよりもボストンダイナミクス及びそれに続くNVIDIA活用派の方がスピードは速いということがだんだんと判明してきた。)
少し前に書いたこちらもご参照下さい。
中国語で調査:中国本土・香港におけるヒューマノイド部品企業エコシステム【概要】
中国ヒューマノイド関連企業30数社の紙版・調査報告書を作成中
私の法人である株式会社インフラコモンズでは、中国のヒューマノイド・エコシステムを形成する主な企業30数社について、以下の項目を記述する調査報告書を作成しています。
・企業名(日本語/英語/中国語)
・本社所在地/設立年
・主な製品(ヒューマノイド向け)と特徴
・顧客・パートナー企業
・技術的優位性(特許、性能指標など)
・資金調達や上場状況
・日本企業との協業可能性・示唆
長盈精密の見本は以下です。
长盈精密(Changying Precision / 深圳市长盈精密技术股份有限公司)
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本社所在地・設立:広東省深圳市。2001年創業、2010年深セン証券取引所中小板に上場(300115.SZ)。
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主な製品と特徴:スマートフォン用金属筐体や精密電子部品が主力ですが、人形ロボット向け精密構造部品を新規事業としています。例えば関節用高精度歯車部品、軸受、トルクセンサー部品などを開発sohu.com。同社は2023年、Teslaおよび米国のスタートアップFigure AIの人形ロボットサプライチェーンに組み込まれたと報じられましたsohu.com。特に長盈の関節モジュールは生産良率95%に達し、2025年には10万セット以上の受注を見込むとのことですsohu.com。自社のスマホ筐体加工技術で培ったダイカスト・CNC加工を活かし、軽量で強靭なロボット関節フレームや歯車ボックスを量産可能。
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顧客・パートナー:Tesla、Figure AIが主要顧客と見られますsohu.com。またDJIなどロボット系企業へも試作品を供給。Apple・Huawei向け電子部品で実績があり、両社のロボット開発(もし進行すれば)にも絡む可能性があります。さらに2024年、蔚来汽車のロボットプロジェクトに参画との噂も。
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技術的優位性:高精度量産加工で右に出る者がいない点です。年間数億個のスマホ金属部品を納入する生産管理能力を、ロボット部品にも適用。わずかな試作から短期間で良率95%を達成する品質管理力は特筆されますsohu.com。またマルチマテリアル成形(金属+プラスチック複合など)も可能で、関節部の複雑形状一体化に強み。さらに大型射出成形機・精密プレス機を多数所有しており、大量需要にも迅速に対応できます。
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資金調達・上場:スマホ向け需要減退を背景に、新分野としてロボット部品に積極投資。2023年業績は売上169.17億元、純利益7.69億元(前年比+797%)と大幅改善し、ロボット関連の将来性も評価されています。研究開発費は売上比5%以上を維持し、先行開発を継続。
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日本企業との協業可能性:長盈精密の超量産ノウハウは、日本のロボット産業にも有益です。同社と日本のロボットメーカーが協力し、次世代ロボットの試作→量産をシームレスに行うことで、開発期間短縮とコスト低減が可能になるでしょう。また、長盈の微細加工技術を日本の精密センサー企業が利用し、共同で小型高性能の関節センサーを作るといった協業の形も考えられます。
このような比較的しっかりとした記述が30数社分、1冊の紙版の調査報告書に収まっています。価格は未定です。
30数社を理解しやすいようにカテゴライズしている最中ですので、しばらくお待ちください。
ご注文のステップは以下のようになります。(現在準備中)
- 弊社ウェブサイトからオーダーをして下さい。御社ウェブサイトのドメインとオーダーをいただいた方のメールアドレスのドメインが一致する法人様限定です。
- オーダーをいただき次第、すぐに電子版報告書を請求書とともに送信します。
- 銀行振込にて弊社銀行口座へお振り込み下さい。
- お振込をいただいた後、1週間から10日程度で宅配便にてお届けします。
何卒、よろしくお願い申し上げます。