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20年以上断続的にこのブログを書き継いできたインフラコモンズ代表の今泉大輔です。NVIDIAのフィジカルAIの世界が日本の上場企業多数に時価総額増大の事業機会を1つだけではなく複数与えることを確信してこの名前にしました。ネタは無限にあります。何卒よろしくお願い申し上げます。

UBTECH Roboticsは日本企業の投資対象たりうるか?テンセントが出資、中国EVメーカーが導入【中国ヒューマノイド】

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UBTECHは大阪関西万博の中国館に出展中。


中国・深圳に本社を置くヒューマノイドロボット企業「UBTECH Robotics(優必選科技)」が、今、日本企業と投資家にとって極めて注視すべき存在となっています。製造業における深刻な人手不足とスマートファクトリーへの移行が加速するなか、UBTECHは単なる"ロボットベンチャー"の枠を超えた、「製造業の次世代インフラ構築企業」になろうとしています。

以下に、UBTECHへの投資可能性や協業機会について、押さえておくべきポイントを整理します。


1. UBTECHとは何者か?──テンセントも出資、香港上場済みの注目株

  • 設立:2012年(本社:深圳)

  • 創業者:周剣(James Zhou)氏

  • 上場:2023年12月、香港証券取引所(HKEX: 9880)

  • 出資陣:Tencent(6.5%)、深圳政府系ファンド、Qiming Ventureなど

  • 従業員数:約2,000人(うち多数が研究者)

  • 特許数:1,500件以上(アクチュエータ、AI、制御技術など)

UBTECHは「人型ロボットの量産を実現し、工場やサービス現場で実装しつつある」稀有な企業です。


2. 技術力の中核は「BrainNet」と「DeepSeek-R1」

UBTECHの最大の特徴は、ヒューマノイド単体の性能ではなく「群知能」と「クラウドAI」による協調ロボットネットワーク

  • BrainNet:複数ロボットの協調動作を支える中枢AIネットワーク

  • DeepSeek-R1:マルチモーダルAI推論エンジン(RAG活用)

この2つにより、工場ラインに複数のロボットを連携配置し、動的なスケジューリングや不具合対応が可能になります。AIロボットが"学習した内容"をチーム全体にリアルタイムで共有する設計は、もはや「製造現場のOS」とも言える存在です。


3. すでに導入実績あり:BYD・NIO・Audi FAWで実働

◎BYD 長沙工場:

ヒューマノイド + 無人搬送車(AGV)による完全無人物流を世界初実現。倉庫作業の人件費65%削減

◎NIO 合肥工場:

人型ロボットが車体へのエンブレム貼付、ドアロック確認など人協調作業を実証中。

◎Audi FAW 長春工場:

冷媒漏れ検査をヒューマノイドが代替。人間の健康リスクを回避しつつ作業精度を向上。

→ つまり、UBTECHは「PoC段階」から「実稼働段階」へ移行しつつある数少ないヒューマノイド企業です。


4. 財務状況:赤字だが、売上成長率は急伸

  • 2023年売上:10.6億元(約210億円)/赤字:-12.7億元

  • 2024年上半期売上:+86.6%成長(前年同期比)

  • 産業ロボットの売上成長率:+309.5%

  • 主要収益源:教育用(33%)、産業用ヒューマノイドは急拡大中

現在は収益よりも技術蓄積とシェア獲得に資金を集中しており、いわゆる「成長投資ステージ」にあるといえます。


5. 日本企業にとっての戦略的意義

→ 投資メリット

  • 株式上場済み(香港証券取引所)でアクセス可能

  • 日本メーカーのロボティクス戦略とシナジーあり

  • 資本提携により、製品開発への要望を反映可能

→ 協業メリット

  • 自社工場での実証導入(PoC)による現場適応性の評価

  • UBTECHのヒューマノイドと日本のFA技術(例:トヨタ式生産)との連携

  • 危険作業・熟練作業の一部代替による労働力補完


BYD・NIO・Audi FAWといった先進プレイヤーが導入済みという事実は重く、UBTECHは「有望すぎるベンチャー」ではなく、「すでに動き出している次世代製造装置企業」と見るべきです。


技術面の解説は以下の投稿をご覧下さい。

【技術解剖】UBTECH Roboticsにみるヒューマノイドの産業実装技術

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