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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

江島健太郎氏「ニッポンIT業界絶望論」を読んで

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少し遅かったですが、佐藤比呂志・隠れた財産「日本のIT業界の生産性」経由で江島健太郎・Kenn's Clairvoyance「ニッポンIT業界絶望論」を読みました。

日本のIT産業に痛切な愛のメガパンチ。

読めば読むほど洞察力の深さ、視野の広さ、関係する人たちへの強いシンパシーが感じ取られて、ITの実務系の投稿としては歴代第一位と言っても過言ではないと思います。

4年程度、米国の大手IT企業でリサーチの仕事を続けてきて、あちらに日本の状況を報告するということを何度もやってきました。彼らにわかってもらうためには、あちらの状況とこちらの状況を客観的に比較するということを行うのですが、その都度、彼らと我らの違いについて考えさせられる場面が多々ありました。
日本のIT産業の世界競争力がテーマになっていた時期もあり、その頃には次のような投稿も書きました。

日本企業のユーザー部門はわがままと断定したい(IT投資問題-その3) 

こうした視点を持って米国の状況を見ると、構造的な違いは非常に明確に理解されます。
その根幹にあるのが、顧客企業側の枝葉末節へのこだわりであり、企業価値という明確な基準(NPVに落とし込めるもの)を考えるならば、そして国際競争力を考えるならば、大を取って小を捨てなければならない場面においてもなおこだわるその頑迷なわけです。そしてまたそれに応えるべく顧客対応の文化を育んできた役務提供企業側…。そういうなかでは、どれだけ予算を使ってみても、数値化可能な生産性向上効果は得られません。また、納品されたものは、残念ながら世界的な企業価値競争の文脈ではポジティブな数字を生み出さないものになってしまいます。

-Quote-
今までのユーザ企業は実質どうでもいいところまで細かくオーダーメイドで作り込むことを要求しすぎていた。そのくせ、結局ユーザには不評で使われないシステムが量産されていたのだから笑い事ではない。人間の価値観は努力や根性では変わらないから、それが無駄だと気付かせるには外的要因しかない。
-Unquote-

同感です。この根が深い問題を解決するには、江島氏の見立てにあるように、市場メカニズムを正しく機能させるしかないのだと思います。(言うまでもなく、現在、市場メカニズムの最先端で起こっているのは世界規模の人材の獲得競争です。そこで市場メカニズムが働くとは、企業価値を高めることのできる人材が、企業価値を高めることのできない企業から、それを高めることができる企業へと集まっていくということを指します。)

-Quote-
とても残念なことだけど、そこには未来は絶対にないよ、とハッキリと言っておくのが、ぼくにとっての精一杯の誠意だ。
-Unquote-

日本のブログカルチャーが生んだ最良のフレーズの1つ、のように思えます。

けれども、江島氏の投稿から読み取らなければならないもっとも重要なメッセージは、その悲観トーンではなく、「何かを自分たちで作って世界に出せ」ということです。2人でも5人でもそれが始められるという時代にあるわけですからね。

実はわれわれレベルでも、こんど世に出す[pepoz]をGoogleのAndroidに移植してはどうかということをインドの開発者の人たちと話したりしています。

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