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日本の将来像を「FUTURE DESIGN 2040」

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一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)は2024年12月9日、2040年の日本の将来像を描いた包括的な提言「FUTURE DESIGN 2040」を発表しました。

本提言は、日本が直面するさまざまな課題に対応し、公正で公平、かつ持続可能な社会を構築するための具体的な道筋を示しています。今回は、その全体像と主な取り組みについて取り上げたいと思います。

出典:経団連 FUTURE DESIGN 2040 2024.12

少子高齢化・人口減少という深刻な課題

2040年を見据えると、日本社会は少子高齢化と人口減少という構造的な課題に直面しています。国立社会保障・人口問題研究所の予測では、2040年の日本の総人口は約1億1,300万人と、2024年の約1億2,400万人から1,100万人減少する見込みです。人口減少は、社会保障制度や地域社会の持続可能性に深刻な影響を及ぼすことが予想されます。

「FUTURE DESIGN 2040」では、このような状況を乗り越えるために、全世代型社会保障の構築や地域経済の活性化といった施策が中心に据えられています。これらの施策は、人口減少社会においても経済の活力を維持し、持続可能な仕組みを構築することを目指しています。

科学技術とイノベーションによる課題解決

提言での大きな柱の一つが、科学技術とイノベーションの活用です。日本は「科学技術立国」として、課題解決を成長の原動力にする社会を目指しています。具体的には、デジタルトランスフォーメーション(DX)やグリーントランスフォーメーション(GX)を推進し、社会課題を解決する新たな価値創造を図る取り組みです。

例えば、GXでは再生可能エネルギーの活用やカーボンニュートラルを目指した技術開発が進められています。また、データセンターや半導体製造といった分野の需要増加に対応するための電力供給体制の強化も計画されています。こういった取り組みにより、地球規模の課題である気候変動や資源の制約への対応が求められています。

「成長と分配の好循環」の実現

「FUTURE DESIGN 2040」のもう一つの重要な柱は、「成長と分配の好循環」です。この概念は、経済成長を持続可能な形で促進しながら、すべての国民がその恩恵を享受できる社会を築くことを目指しています。

出典:経団連 FUTURE DESIGN 2040 2024.12

具体的には、以下の施策を挙げています。

  1. 公正な税制改革: 現役世代への負担を軽減するため、富裕層を含む上位層への応能負担を強化し、社会保険料の抑制に充当
  2. 労働市場の活性化: リスキリング(技能の再習得)や働き方改革を通じて、多様な人材が活躍できる環境を整備
  3. 賃金の引き上げ: 中小企業を含むすべての企業で適切な価格転嫁を進めることで、構造的な賃金引き上げを促進

これらの施策により、低・中間層の可処分所得を増加させることで、国内需要の拡大を図ります。

地域社会の多極分散型発展

人口減少が進む地方部では、地域経済の自律的・持続的な発展が不可欠です。「FUTURE DESIGN 2040」は、多極分散型の地域社会を目指し、次のような施策を掲げています。

  • デジタル技術の活用: スマートシティの推進やデジタルライフラインの整備により、地方でも高品質な行政サービスや生活環境を提供
  • 地域資源の活用: 農業、観光、エネルギーなど地域の特性を活かした産業の振興を支援
  • 広域連携の推進: 地方自治体を超えた広域的な連携を強化し、地域間競争を促進

これにより、地方創生の新たなモデルが構築されることが期待されています。

今後の展望

本提言では、改革が実現した場合の2040年の日本経済の姿も具体的に描かれています。名目GDPは現状維持ケースの735兆円に対し、改革実現ケースでは1,006兆円に達すると予測しています。また、政府債務残高の対GDP比も安定的に減少する見込みです。これにより、分厚い中間層が形成され、経済的にも社会的にも安定した国が実現することが期待されています。

「FUTURE DESIGN 2040」は、日本社会が直面する多様な課題に対応するための包括的な戦略を提示しています。その実現には、政府、企業、国民が一丸となって取り組むことが求められます。本提言が日本の未来を切り開く道しるべとなることを期待しつつ、実行に移されるプロセスを注目していきたいと思います。

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