地域のモビリティを支える「モビリティ・ロードマップ2024」
日本の交通サービスは、急速な人口減少や高齢化に伴い、さまざまな課題に直面しています。
デジタル庁のデジタル社会推進会議 モビリティワーキンググループは2024年6月21日、自動運転、ドローン、サービスロボットなど地域のモビリティを支える技術の同時かつ一体的な事業化に向けて「モビリティ・ロードマップ2024」を公表しました。
本記事では、このロードマップの背景、基本的な考え方、具体的な施策について解説します。
ロードマップ策定の背景
地域交通サービスの現状と課題
日本の人口は、2050年には全国の居住地域の約半数が現在の半分以下になると予測されています。これに伴い、店舗の減少、病院・学校の統廃合・移転などが進むとともに、バス、タクシー、鉄道などの公共交通サービスの維持も困難になる恐れがあります。
また、長期的な利用者の減少やコロナ禍による急激な需要の落ち込みにより、交通事業者の経営環境は悪化しており、多くの事業者が赤字経営を強いられています。
新たなモビリティサービスの出現と課題
国外では、自動運転やオンデマンド交通、ドローンなど、デジタル技術を活用した新たなモビリティサービスが急速に発展しています。
例えば、米国ではWaymoやCruise、中国ではBaiduやPony.aiが自動運転技術の実証を進めています。一方、日本では技術の導入が進んでいるものの、事業化には至っていないケースが多く、社会的受容性やデータの連携・共有の不足が課題とされています。
ロードマップ策定の基本的な考え方
需要と供給の両面からのアプローチ
本ロードマップは、需要と供給の両面からアプローチを行うことを基本としています。需要側では、地域の移動需要の可視化や効率化、移動需要の創出を図り、供給側では、自動運転技術の事業化を推進してドライバー不足に対応することが求められています。
段階的・集中的な施策の投入
施策は、総括的事業実証ステージ(2024年度)、先行的事業化ステージ(2025~2026年度)、本格的事業化ステージ(2027年度以降)の3つのステージに分けて段階的に投入されます。それぞれのステージで重点を置く取り組みを明確にし、施策間の相乗効果を最大限に引き出すことを目指しています。
ロードマップの概要
短期的な取組(2024年度)
短期的には、自動運転技術の習熟化・高度化、審査手続の透明性・公平性の確保、技術を活用した事業に対する社会的受容性の向上などが重点施策。具体的には、地域の移動需要を可視化し、効率的な経路選択や公共交通サービスの維持を支援するためのシステムの導入など。
中期的な取組(2025~2026年度)
中期的には、自動運転技術の導入コストの低減、データの収集・共有の加速、モビリティサービスを支える人材の育成などが重要。複数地域での自動運転車両の活用や路車協調システムの実践が期待。
長期的な取組(2027年度以降)
長期的には、新たなモビリティサービス市場の確立、事業改善サイクルの確立、他形態への展開などが目標。特に、技術の活用範囲の拡大と社会的受容性の向上を。
施策の評価とモニタリング
本ロードマップでは、各ステージの進捗度と達成度を評価するための視点として、新たなデジタル技術がビジネスモデルとして成立しているか、技術の習熟度が確立されているか、制度・ルールが整備されているかの3点を挙げています。各施策が相互にどのような相乗効果を発揮しているかをモニタリングし、適切な改善を図ることが重要となっています。
まとめ
モビリティ・ロードマップ2024は、日本の交通サービスが直面する課題に対応するための重要な指針を示しており、需要と供給の両面からアプローチを行い、段階的・集中的に施策を投入することで、持続可能なモビリティサービスの実現を目指しています。
今後、人口減少や高齢化がさらに進む中、自動運転技術やデジタル技術を活用した新たなモビリティサービスの導入および普及は重要な位置づけとなっていくでしょう。そのためには、地方における交通サービスの維持に向けて、需要の効率化と供給側の生産性向上による持続的な社会モデルを構築していくことが求められています。
官民協力によるデータの共有と、社会的受容性を高めていくことも必要となるでしょう。これらの取り組みを通じて、地域社会の持続可能な発展と生活の質向上を実現することが期待されます。