行政における生成AIの適切な利用に向けた技術検証の環境整備について
デジタル庁は2024年5月13日、「2023年度 デジタル庁・行政における生成AIの適切な利活用に向けた技術検証実施内容」を公表しました。
行政機関における生成AIの活用は、急速なAI技術の進歩に伴いますます重要性を増しています。本記事では、生成AIの行政での適切な利用を推進するための技術検証プロジェクトについて、その背景、目的、および実施内容を紹介します。
背景と目的
近年、AI技術は急速に進歩し、生成AIの能力も飛躍的に向上しています。これに伴い、行政においても生成AIを活用した効率化やサービス向上が求められています。しかし、生成AIの導入には、技術的な検証と安全性の確保が不可欠です。そこで、本プロジェクトでは、以下の点を目的として実施されました。
- 行政における生成AI活用のための検証環境の提供
- 検証環境の運用・保守
- 技術検証支援
プロジェクトの実施内容
検証環境の提供
プロジェクトの初期段階では、行政職員が利用できる検証環境を構築しました。この環境は、要件定義書の要件を満たすものであり、生成AIの性能評価や安全性の確認が可能です。具体的には、以下の内容が含まれています。
- 技術検証基盤を767人(13府省庁・26自治体)の職員に提供
- 共創PF Slack上で158人に技術サポートを実施
- 最新のLLM(大規模言語モデル)を活用したアップデートを30回実施
検証環境の運用・保守
検証環境の運用・保守は、環境の安定稼働と運用レポートの提供を中心に行われました。利用状況や問い合わせ対応も含まれ、以下のような取り組みが実施されました。
- 運用レポート・ダッシュボードの提供
- セキュリティポリシーとの整合性確認と必要なシステム改修
- 利用状況の報告と改善提案
技術検証支援
技術検証支援では、操作マニュアルや導入研修の提供に加え、プロンプトや学習データの改良支援を行いました。また、ユーザーからの問い合わせ対応や技術的な質問に対するサポートも実施されました。
- ヘルプデスクを78日間稼働し、64件の質問に対応
- 導入研修を12回実施し、計128人が受講
- 9個のユースケースにおける有用性を検証
出典:デジタル庁 行政における生成AIの適切な利活用に向けた技術検証の環境整備 2024.5
技術検証課題とその報告要旨
技術検証においては、以下のような課題が取り上げられ、それに対する報告がまとめられました。
-
LLMを用いた自治体業務の業務効率化
- 利用者調査では、90%の利用者が業務効率化を実感。
-
文書作成の自動化
- ユーザーフィードバックを受け、文書の質と速度の向上が確認された。
-
生成AIの精度と安全性の確保
- LLMの精度改善と利用ガイドラインの策定が行われた。
-
リスク管理と透明性
- LLMのパラメータを比較し、リスクを最小化するための対策が講じられた。
-
行政での生成AI活用のための運用ガイドライン
- 政府・自治体向けのガイドラインが策定され、広範な適用が推奨された。
結論
本プロジェクトを通じて、行政における生成AIの適切な利用に向けた重要なステップが踏み出されました。技術検証を通じて得られた成果は、デジタルマーケットプレイスを通じて広く共有され、他の自治体や企業にも役立つことが期待されます。